シリア革命反体制勢力国民連立が総合委員会における「賛成多数」でジュネーブ2会議への参加を承認、米仏独はこの動きを歓迎(2014年1月18日)

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反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立の総合委員会は17日からのマラソン協議での採決の結果、賛成多数でジュネーブ2会議への参加を承認した。

Kull-na Shuraka', January 18, 2014

Kull-na Shuraka’, January 18, 2014

しかし、クッルナー・シュラカー(1月18日付)によると、代表メンバー121人(定数は122人)のうち出席したのは73人(44人が脱会、4人が欠席)のみで、うち賛成は58人、反対は14人、白票は1人だった。

これに関して、ロイター通信(1月17日付)は、アナス・アブダ氏の話として、総合委員会での採決には定数の3分の2以上の賛成を必要とするが、会合では、出席への賛成票が反対票を僅差で上回り、出席が承認されただけだった、と報じていた。

アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長はシリア革命反体制勢力国民連立のジュネーブ2会議参加決定に関して「ジュネーブ2会議は、最低限の(路線の)修正をも行うことなく、シリア大統領の退陣とその処罰をはじめとする革命家たちの要求を完全に実行するために向かう進路である」と自賛した。

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シリア革命反体制勢力国民連立総合委員会でのジュネーブ2会議参加決定に関して、法務委員会が会合を開き、その採決の有効性を審査した。

クッルナー・シュラカー(1月18日付)などによると、審査では、ジュネーブ2会議参加決定と設立合意(2012年11月11日)第5条の「連立は体制とのいかなる対話、交渉をも行わない旨遵守する」との文言との齟齬の有無に議論が集中した。

6人の委員のうち、ヒシャーム・ムルーワ氏、マルワーン・ハッジュー氏、フサイン・サイイド氏(電話で参加)、ジャマール・ワルド氏(電話で参加)が設立合意の改正の必要を主張する一方、ハイサム・マーリフ委員長とムナー・ムスタファー氏は、ジュネーブ2会議参加の準備を行うとした2013年11月10日付の総合委員会決定に沿った動きであるため、設立合意の改正は不要との立場をとった。

委員会は最終的な判断を下さず、設立合意修正をめぐって意見が割れたことを総合委員会に報告することを決定し、閉会した。

Kull-na Shuraka', January 18m 2014

Kull-na Shuraka’, January 18m 2014

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シリア革命民主的変革諸勢力に残留する人民自由潮流のハーリド・ナースィル代表は声明を出し、シリア国民評議会の決定に同調し、ジュネーブ2会議への参加に反対すると表明した。

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自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長はユーチューブを通じてビデオ声明を出し、「シリア革命は平和的に始まり、武装を余儀なくされた。我々は今日、政権の政治的移行を保障し、勇敢なシリア国民の革命の目的を実現するあらゆる解決策を支持する」と表明した。

また「ジュネーブに行く同胞たちに、犯罪者バッシャールとその取り巻きの退陣をはじめとする…革命の諸目的を誇示するよう求める…。シリアの将来において彼には何の役割はない…。またシリア人殺戮と国の破壊に関与した軍治安機関幹部の退陣、軍、治安機関を含むあらゆる権限を持った移行期統治機関の設置(を求める)…。逮捕者、とりわけ女性と子供の釈放…、包囲されているダーライヤー、ムウダミーヤト・シャーム、ヒムス、ヤルムークなどの地域への人道支援を保障するための人道回廊の即時開設…を求める」と強調した。

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しかし、自由シリア軍参謀委員会のイヤード・ジュムア氏は声明を出し、パリでのシリアの友連絡グループ外相会議がアサド大統領の退陣を明言しなかったとして、ジュネーブ2会議への参加を拒否すると述べた。

シリア革命総合委員会が伝えた。

シリア政府の動き

アサド大統領はダマスカスで、米国、スウェーデン、スイス、レバノン、シリアのキリスト教福音教会(米長老派教会中東支部長のアムジャド・ビブラーウィー氏が団長)の使節団と会談した。

SANA, January 18, 2014

SANA, January 18, 2014

会談でアサド大統領は、「数世紀にわたり統合、慈愛、友愛によって特徴づけられてきたシリア社会は、決してワッハーブ・タクフィール主義思想を受け入れることはない…。この危険思想は、シリアだけでなく、地域全体を脅かしている」と述べた。

また「我々の地域への米国や西側諸国の対応が抱える根本的な問題の一つは、その指導者のほとんどが地域の実態や本質、諸国民の利益への真の理解からほど遠く、自分たちの狭量な利益に従って行動していることだ」と批判した。

SANA(1月18日付)が伝えた。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市、サーフール地区、バーブ街道地区、カルム・ジャバル地区を軍が爆撃し、子供を含む10人が死亡した。

またバーブ市では、軍が「樽爆弾」を投下し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員5人と男性1人が死亡した。

このほか、軍はジュマイマ村、バルダ村にも「樽爆弾」を投下した。

一方、ラトヤーン村、マンビジュ市では、反体制武装集団がダーイシュとの交戦の末、同村を制圧した。

しかし、シリア革命総合委員会によると、ラトヤーン村では、ダーイシュが撤退したもの、軍が「樽爆弾」などで爆撃したという。

またアアザーズ市郊外のジャースィル村では、ダーイシュが爆弾を積んだ車でイスラーム戦線タウヒード旅団の検問所に自爆攻撃を行い、旅団戦闘員9人が死亡した。

他方、SANA(1月18日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、アレッポ市では、シャイフ・ナッジャール地区、旧市街、サイイド・アリー地区、サーリヒーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、マルジュ村一帯、ダーライヤー市を軍が爆撃・砲撃、またダーライヤー市では軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(1月18日付)によると、アドラー市旧市街、同ウンマーリーヤ地区、マディーラー市、ハムーリーヤ市、アイン・タルマー村、アーリヤ農場、ダーライヤー市、ザバダーニー市、ジャイルード市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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シリア人権監視団によると、アレッポ県、ダマスカス郊外県以外でも、ラタキア県、ダルアー県、ハマー県で、軍が爆撃を行った。

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ダマスカス県では、リハーブ・ニュース(1月18日付)によると、ヤルムーク区に国連の人道物資が搬入された。

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ヒムス県では、SANA(1月18日付)によると、レバノン領内からクサイル市南部郊外に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

またアイン・フサイン村、ハーリディーヤ村、サラーム・シャルキー村、ラッフーム村、ウンム・サフリージュ村、サアン村、ダール・カビーラ村、南マシュジャル村、シャーイル山(ハマー県)西部、アブー・アラーヤー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(1月18日付)によると、ヨルダンから潜入を試みた反体制武装集団を軍が撃退した。

またアーイブ村、ダルアー市各所、インヒル市、アトマーン村・ヤードゥーダ村間の街道で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(1月18日付)によると、バドリーヤ村、ムナイズィル村、フサイニーヤ村、サラーキブ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(1月18日付)によると、タッル・ハミース市および同市周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ナハールネット(1月18日付)によると、ベカーア県バアルベック郡のアルサール村、ラアス・バアルベック村に、シリア領から発射されたロケット弾多数が着弾し、3人が負傷した。

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NNA(1月18日付)によると、北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で、武装集団が交戦し、2人が狙撃され、負傷した。

イラクの動き

イラキー・ニュース(1月18日付)は、治安筋の話として、治安部隊がアンバール県アーミリーヤ・ファッルージャとバービル県ジュルフ・シャーキルで、指名手配中の「テロリスト」7人を逮捕、またアンバール県での軍の爆撃を逃れ、ジュルフ・シャーキルに潜伏していたイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の隠れ家を発見したと報じた。

また、アンバール県北部でも、ダーイシュの戦闘員3人を逮捕した。

さらに、イラク軍・治安部隊合同作戦司令部によると、県西部のカーイム地方で、軍・治安部隊はダーイシュのシリア人戦闘員1人を逮捕し、ダーイシュのボート3隻を破壊した。

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イラク軍対テロ部隊のファーディル・バルワーリー司令官はフェイスブック(1月18日付)で、一部の住民がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の非イラク人をかくまっている、と批判した。

諸外国の動き

ジョン・ケリー米国務長官は、シリア革命反体制勢力国民連立のジュネーブ2会議参加決定を「勇敢な採決」と評価、「交渉を通じて政治的移行プロセスにいたる最善の道を選んだシリアの反体制勢力を支持し続けるだろう」と述べた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、シリア革命反体制勢力国民連立のジュネーブ2会議参加決定を「勇敢な選択」と評価した。

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ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイアー外務大臣は、シリア革命反体制勢力国民連立のジュネーブ2会議参加決定を「シリアの人々にとってかすかな望みがつながれた」と評価した。

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駐国連ノルウェー代表部はニューヨークで、シリアのダマスカス郊外県での化学兵器攻撃を逃れたというシリア人3人との懇談会を主催した。

懇談会に出席したシリア人は、アサド政権の民兵による犯罪を非難、国際社会、とりわけ米国に介入を求めた。

AFP, January 18, 2014、AP, January 18, 2014、Champress, January 18, 2014、al-Hayat, January 19, 2014、Iraqinews.com, January 18, 2014、Kull-na Shuraka’, January 18, 2014、Naharnet, January 18, 2014、NNA, January 18, 2014、Reuters, January 18, 2014、Rihab News, January 18, 2014、SANA, January 18, 2014、UPI, January 18, 2014などをもとに作成。

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