ロシアのラヴロフ外務大臣「イドリブでの緊張緩和地帯設置は容易でなく、情勢はより複雑だ」(2017年8月6日)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はASEAN外相会議に出席するために訪問中のフィリピンの首都マニラで、米国のレックス・ティラーソン国務長官と会談した。

『ハヤート』(8月7日付)などによると、会談では、米国によるロシアへの追加制裁、ウクライナ情勢などとともに、シリア情勢への対応について意見が交わされた。

会談後にロシア外務省が発表した声明によると、シリア情勢をめぐって両国外相は、シリア南西部での戦闘停止と緊張緩和地帯設置にかかる合意履行の重要性などについて議論が集中したという。

また、ラブロフ外務大臣は会談後に記者団に対して、「ロシア、イラン、トルコ、さらには米国が主導する有志連合は、いかなる合意にもそもそも参加しようとしないテロリストを除くすべての反体制派に対して影響力を行使できる。我々はこうした影響力を行使することが必要だとの理解に基づき、停戦を維持、緊張緩和地帯における停戦状態を強化し、政治プロセス開始にふさわしい雰囲気を醸成したい」と述べた。

しかし、ラブロフ外務大臣は、シャーム解放機構やシャーム自由人イスラーム運動などの対立が続くイドリブ県に関して、「イドリブで(シリア南西部、ダマスカス郊外県東グータ地方、ヒムス県北部と)同様の(停戦と緊張緩和地帯設置にかかる)合意にいたることは容易ではない…。この地域の状況はより複雑だ」と述べた。

ラッカ県では、ARA News(8月6日付)によると、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍がダーイシュ(イスラーム国)が籠城を続けるラッカ市内のフィルドゥース・モスク一帯、ラシード公園、マンスール通り、マサーキン地区、ワーディー通り、タッル・アブヤド通り、ムルール地区、バドウ地区、ナイーム交差点、スィッハ住宅地区、ジュマイリー地区、国立博物館一帯に対して砲撃を行い、軍主導の有志連合も同地一帯に対する空爆を行った。

シリア民主軍はまた、ラウダ地区、旧市街でダーイシュと交戦した。

AFP, August 6, 2017、AP, August 6, 2017、ARA News, August 6, 2017、Champress, August 6, 2017、al-Hayat, August 7, 2017、Kull-na Shuraka’, August 6, 2017、al-Mada Press, August 6, 2017、Naharnet, August 6, 2017、NNA, August 6, 2017、Reuters, August 6, 2017、SANA, August 6, 2017、UPI, August 6, 2017などをもとに作成。

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