2011年8月24日のシリア情勢

反体制運動をめぐる動き

シリア治安部隊は各地での反体制デモに対して発砲、少なくとも8人が殺害された。大規模な捜索活動を行い、数十人を逮捕した。

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ダマスカス郊外県では、23日から体制打倒を求める大規模デモが続くハラスターで、治安部隊は大規模な捜索活動約40人を逮捕した。シリア人権監視団によると、ハラスター以外でも、一昨日晩から体制打倒を求める大規模デモがドゥーマー市、ダーライヤー市、ザバダーニー市、カナーキル村、キスワ市、マダーヤー町で続いている。

ダイル・ザウル県では、複数の活動家によると、イラク国境近くの部族が居住する地域で、軍が大規模な捜索活動を行い、数十人を逮捕した。またイラク国境のマヤーディーン市、ブルハーマ村に、シリア軍の戦車や軍用車輌20~30輛が進入した。

ヒムス県では、地元調整委員会によると、ヒムス市で4人、タルビーサ市で2人が殺害された。またタルビーサ市では、3人が負傷し、うち1人が重体となる一方、軍・治安部隊は市内での犠牲者の葬儀とデモを禁じるために集中的に展開し、市民を逮捕しているという。シリア人権監視団もタルビーサでの激しい弾圧が行われたと報じた。一方、同監視団によると、ヒムス市のバーブ・スィバーア地区で6台の軍装甲車が目撃され、同地区の出入りを禁止するための検問所が設置された。さらにタドムル市では、15歳の青年の葬儀が大規模デモに発展し、数万人が参加した。しかし軍消息筋は、ヒムス県で武装集団の襲撃により、士官1人を含む兵士8人が殺害されたと発表した。

イドリブ県では、地元調整委員会によると、ハーン・シャイフーンで1人が死亡した。シリア人権監視団によると、18歳の青年が約1週間前にハーン・シャイフーンに突入した治安機関に逮捕され、拷問の末、死亡した、という。

ハマー県では、ハマー市ジャラージマ地区、バシール・ヒンディー氏が誘拐され、殺害された。

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シリア国民民主変革諸勢力国民調整委員会総合調整役でシリア国民民主連合スポークスマンのハサン・アブドゥルアズィーム弁護士は『ラアユ』(24日付)に声明を発表し、イスタンブールで開催された国民評議会発足のための反体制勢力の会合に同委員会が参加しなかったことを明らかにした。アブドゥルアズィーム弁護士は、「国民調整委員会は適切な環境が作り出され、また対話が有効な結果をもたらすことが保障されることなく、いかなる対話にも参加しない」と述べ、アサド政権が呼びかけた国民対話委員会をボイコットしたのと同様の理由で国外の会合には参加しないとの姿勢を示した。また会合に参加しているとされた委員会メンバーの一人ハーズィム・ナハール氏もイスタンブールではなくUAEに滞在している、という。

Kull-nā Shurakā', August 24, 2011

Kull-nā Shurakā’, August 24, 2011

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シリア人権監視団は、サウジのアブドゥッラー国王が複数のシリア人活動家を釈放したことを歓迎。釈放された活動家に関して、監視団は「サウジアラビアで就労しているシリア人164人が、アブドゥッラー国王が駐ダマスカス大使の召還を宣言した直後の8月12日にリヤードでデモを行い、シリアにおける危機解決のため、暴力停止を求めていた」と明らかにした。

アサド政権の動き

ワリード・ムアッリム外務大臣は、ロバート・フォード米大使のジャースィム訪問を受けるかたちで、米仏両国大使に正式な許可なくダマスカスを出ないよう改めて警告する。

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アッタール・グループ(ホテル業、銀行業、保険業などを経営)のアブドゥルガニー・アッタール副代表は、「抗議行動の最初の3ヶ月間はすべてがストップし、消費者は麻痺状態に陥ったが、経済活動は前年比で40%停滞しつつも、6月以来回復している」と述べる。また「国内生産の70%を占める民間セクターは依然として持ちこたえているが、状況が来年初めまでに改善しなければ、経済は実施的な打撃を被り、従業員の解雇を行わざるを得なくなるだろう」と警鐘を鳴らした。

諸外国の動き

EUが官報(24日付)で、制裁リストに追記するアサド政権高官ら氏名を公表した。追加制裁の対象には、ハーイル・アサド准将(第4師団軍警察長)、アリー・サーリム(国防省軍保険局長)、ニザール・アスアド(リード社社長)、ラフィーク・シハーダ准将(軍事情報局第293課長)、ジャーミア・ジャーミア、ムハンマド・ナースィーフ、ムハンマド・サイード・バヒーターン、ムハンマド・ザマリーニー(軍事情報局ヒムス支部長)、ムニール・アドヌーフ中将(副参謀長)、ガッサーン・ハリール(総合情報部情報課長)、ムハンマド・ジャービル(ビジネスマン、シャッビーハへの支援、マーヒル・アサドに近い)、サミール・ハサン(マーヒル・アサドに近い)、アリー・ドゥーバー、ヌーファル・フサイン准将(軍事情報局イドリブ支部長、サラミーヤ出身の意須磨ーイーリー派)、フサーム・スーカール(治安問題担当大統領顧問、チェルケス人)のほか、イラン・イスラーム革命防衛隊のクドス軍団も含まれている。

また西側外交筋は、EU諸国による石油産品に対する制裁は来週末に発動されるだろうと述べる。

こうした動きと関連して、英国の石油会社ガルフサンズ石油は、米国やEUによる制裁を遵守するとの立場を明示した。またラーミー・マフルーフ氏がマシュリク投資会社を通じて株式の5.75%を保有していることに関して、2000年にシリア国内での事業を開始した当初からマフルーフ氏との「建設的通商関係」を結んでいたとしたうえで、「こうした関係は純粋に商業的な観点から結ばれており、適切に処理され、法律に基づいていた」と弁明した。そのうえで英石油会社ガルフザンズは、ラーミー・マフルーフ氏への株式配当と議決権を停止したと発表。

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ニコラ・サルコジ仏大統領は、記者団の前で「シリア国民にも民主主義を求める権利がある。彼らは体制の弾圧によって支配されるべきでない…。フランスは国連決議なしには介入しない。これが原則だ」と述べ、軍事介入の可能性を否定した。

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レバノン軍諜報当局はシリア国内で反体制活動を行うイスラーム主義者ズハイル・ナッジャール氏をトリポリ市内のシリア反体制イスラーム主義組織事務所で逮捕、同日晩に釈放した。ズハイル・アバーズィード氏(「シリア・ウラマー・シャリーア学生」のスポークスマン)はナッジャール氏が武装した何者かに誘拐されていたと発表していた。シリアでの弾圧を逃れてトリポリ市に滞在している彼らは、毎週金曜日にトリポリ市内でアサド政権打倒をめざしてデモを行っているという。

『ムスタクバル』(24日付)によると、ヒズブッラーが運営するテレビ局マナールはシリア政府高官からアサド大統領のインタビューについて詳細に報じなかったことへの不快感を伝えられる。

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ロシアのヴィタリー・イワノヴィッチ・チュルキン国連代表は、「一部の国がシリアへの制裁を科すべくとっている路線は危険な戦略だ」としたうえで、「安保理はシリア人どうしの対話と政治的解決を奨励するとともに、宣言された改革を奨励し、そのために時間を与えるべき」と述べた。また「警察署、国家機関を狙う武装集団に目を向けるべき」と訴えた。

AFP, August 24, 2011、Akhbār al-Sharq, Agusut 24, 2011, August 25, 2011, August 26, 2011、2011、al-Ḥayāt, August 25, 2011, August 26, 2011、Kull-nā Shurakā‘, August 24, 2011, August 26, 2011、al-Mustaqbal, August 24, 2011、al-Ra’y, August 24、Reuters, August 24, 2011、SANA, August 25, 2011、UPI, August
24, 2011などをもとに作成。

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