反体制活動家らがハマーなどでの弾圧を非難、在ダマスカス米大使館報道官「シリアにはシリア政府という名の武装集団のみが存在する」(2011年8月1日)

7月31日に引き続き、8月1日(月曜日)も軍・治安部隊がハマー市、ダマスカス郊外県各都市、ダイル・ザウル市、ブーカマール市での治安回復作戦を展開し、少なくとも8人(ハマーで4人、ダマスカス郊外で2人、ブーカマール市で2人)が殺害された。

バッシャール・アサド政権による弾圧の激化を受け、西側諸国も非難を強め、EUがアサド政権5人を新たに制裁リストに加えたほか、国連安保理ではシリア制裁決議採択に向けた試みが再開されようとしている。だが、ロシア、中国、南アフリカ、インド、ブラジルなどは、国内情勢の混乱に乗じた内政干渉を推し進めようとする西側諸国の動きに警戒感を示している。

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ハマー市住民や活動家によると、月曜日(8月1日)も軍・治安部隊はハマー市への戦車による攻撃を続け、4人が新たに犠牲となった。シリア人権監視団などによると、ハマー市での死者のうち2人はハミーディーヤ地区で、2人はハマー市郊外の村で殺害された。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、ハマー市ハミーディーヤ地区で激しい銃撃が行われ、市内で捜索を行う治安部隊の発砲により犠牲者が出た。

シリア人権連盟によると、ダマスカス郊外県キスワ市とダマスカス県カダム区で1人ずつ、計2人が殺害された。両市では大規模な反体制デモが発生し、治安部隊が排除したが、その際に2人は犠牲となった。

また複数の住民、活動家らの話としてシリア人権監視団が伝えたところによると、ブーカマール市も戦車による攻撃を受け、少なくとも2人が殺害され、2人が負傷した。犠牲者の一人は13歳の少年。同市は2週間前から軍によって包囲されている。

一方、複数の目撃者によると、ダイル・ザウル市に約80輌の戦車が向かった。ジャズィーラが地元筋の話として報じたところによると、ダイル・ザウル市ジャウラ地区が戦車の砲撃にさらされた。

こうしたなかバッカーラ部族の青年らがダイル・ザウル市北部のサーリヒーヤ広場で抗議の座り込みを行い、同市からの軍・治安部隊の撤退とナイワーフ・ラーギブ・バシール氏の釈放を求めた。この抗議行動には約5000人が参加した(主催者側は数万人が集まったと述べている)。

ヒムス市では、複数の地区で大規模なデモが発生し、郊外のフーラ地区に治安部隊が進入、激しい銃撃があり、15人の市民が負傷、18人が逮捕。日曜日の夜から月曜日の朝にかけて、ハーリディーヤ地区のヌール・モスク地下近くでも激しい銃撃があった。一方、『シャルク・アウサト』の電話取材に対して、ヒムスの複数の消息筋は、市内のダイル・バアルバ地区、バイヤーダ地区から戦車が撤退し、ハマー市に向かったと語った。

このほか、ダマスカス県コルニーシュ・マイダーン地区内の二カ所でも大きなデモが発生したが、治安部隊が催涙ガスなどを用いて排除された。また、カーミシュリー市、タルトゥース市、ジャブラ市では数百人がデモを行った。ラタキア市では約4000人がラムル地区でハマー救済と体制打倒を求めてデモが行われた。シリア人権監視団によると、ムウダミーヤト・シャーム市(ダマスカス郊外県)では、治安部隊が夜11時からラウダ通り、バイト・シャイフ地区で捜索活動を開始、弾圧が行われた。

シリア各地で抗議行動を指導するとされる地元の調整委員会によると、ダイル・ザウル市、アラバイン市では夜間、数時間にわたって多数の戦車や装甲車の襲撃を受けた。

2011年8月10日開催予定の「シリア未来建設大会」を準備する委員会は、アサド政権による抗議行動弾圧を強く非難。同委員会は国内の反体制活動家のファーイズ・サーラ氏、ミシェル・キールー氏、ルワイユ・フサイン氏らが主導する。声明では「当局が国土を寸断し、多くの都市や村を筆舌に尽くしがたい被災地とするなかで、大会を無期限で延期せざるを得ない」と発表。主催者の一人ルワイユ・フサイン氏がフェイスブックでの声明で明らかにした。

国内の反体制活動家らが声明を発表し、ハマーなどでの弾圧を非難。同声明には、ファーイズ・サーラ氏、アフマド・ファーイズ・ファウワーズ氏、ムスタファー・ルストゥム氏、ハサン・アブドゥルアズィーム氏、ミシェル・キールー氏、フサイン・アウダード氏、サリーフ・ハイルベク氏、アンワル・ブンニー氏らが署名した。

シリア革命支援国民連立(ハイサム・ラフマ調整委員長)が声明を発表し、ハマー市、ダイル・ザウル市、ダルアー市、ムウダミーヤト・シャーム市などでの軍治安部隊による弾圧に抗議。

「ダマスカス宣言」オーストラリア支部代表のアシュラフ・ミクダード氏はElpha.netに対して、「国際社会のシリアへの介入こそが解決策」と発言。シリアの反体制活動家が外国の干渉を呼びかけるのは異例。

アッシリア民主機構情報局が声明を発表。ハマー市などでの弾圧を批判。

「ジャズィーラ地方カーミシュリー挙国統一青年調整(委員会)」の名で6つの団体が共同声明を発表し、アサド政権によるデモ弾圧を非難するとともに、平和的デモの継続を宣言する。共同声明に署名した6つの団体は以下の通り。アラブ青年調整(委員会)、ジャズィーラ地方シリア共産主義者統一国民委員会青年調整(委員会)、シリア・クルド・イェキーティー青年調整(委員会)、シリア・クルド・アーザーディー青年連立、クルド左派調整(委員会)、無所属青年調整(委員会)。

シリアの反体制ウラマーらが共同声明を発し、国内でのデモ弾圧による死者発生の責任がアサド政権にあると非難。同共同声明には、アドナーン・サカー、ジャウダト・サイード、アブドゥッラフマーン・クーキーらが名を連ねている。しかし同声明がインターネット上で発表後、署名したウラマーらによると、内容が体制に近いメディアにおいて書き換えられ、武装集団に対する軍の攻撃を支持する内容となっていた。

ハマー市住民や活動家によると、月曜日(8月1日)も軍・治安部隊はハマー市への戦車による攻撃を続け、4人が新たに犠牲となった。

シリア人権監視団などによると、ハマー市での死者のうち2人はハミーディーヤ地区で、2人はハマー市郊外の村で殺害された。同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、ハマー市ハミーディーヤ地区で激しい銃撃が行われ、市内で捜索を行う治安部隊の発砲により犠牲者が出た。

 

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弁護士組合ハサカ支部は8月1日、反体制弁護士でシリア・クルド人権一般的自由擁護機構(DAD)のムスタファー・ウース事務局長を聴取。聴取は衛生テレビ局など海外メディアでの反体制的な言説と弁護士規定との整合性を調査することが目的。

アサド大統領はダマスカスのティシュリーン軍事病院を慰問し、「武装テロ集団」の攻撃により負傷した兵士を見舞った。

SANAが得た情報によると、武装集団がハマー市内の警察署などを襲撃、また市内の徴兵事務所などを襲撃し、武器弾薬を奪った。その際、複数の兵士が負傷。またイドリブ県内マアッラト・ヌウマーン地区のハザーリーン村で武装集団が砂糖13トンを積んでいたトラックを襲撃した。

シリア・アラブ・テレビは武装集団がハマー市の道路を封鎖し、軍・治安部隊や市民を攻撃する映像や遺体を回収し、アースィー川に遺棄する映像を放映した。

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EUは、シリア政権高官などに対する制裁対象を拡大。EUへの渡航禁止と資産凍結などを骨子とする制裁の新たな対象となるのは国内の抗議行動弾圧に関与しているとされる5人だが、氏名は公表されていない。EUはすでにバッシャール・アサド大統領ら政権高官に対して制裁を発動している。

ドイツ国連代表部は日曜日、国連安保理の8月の議長国インドに対して安保理緊急会合(非公式会合)を開き、シリアでのデモ弾圧への対応を協議することを呼びかけた。西欧諸国は非難決議の採択をめざしているとされるが、この試みは、ロシア、中国、南アフリカ、インド、ブラジルなどの反発を招くことが予想される。

在ダマスカス米大使館報道官は「シリアにはシリア政府という名の武装集団のみが存在する」と非難。

アンダース・フォー・ラスムッセンNATO事務局長はフランス地方紙『ミディ・リーブル』(8月1日付)に掲載されたインタビューで、シリアへの軍事介入の可能性を改めて否定。

英国のウィリアムズ・ヘイグ外務大臣も、シリアでの反体制抗議行動弾圧に関して「さらなる国際的圧力」を求めつつ、国連の枠組みのもとでの軍事介入の可能性を否定。

ドイツ通信社(DPA)によると、ダマスカスで『シュピーゲル』がドイツ諜報機関長官にインタビューを行い、同長官がシリア情勢は体制転換をもたらさないだろうとの見解を示したと報じた。同長官は反体制派が現支配体制を転換し得るほど統一されているようには思えない、と述べたという。

エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣はシリア情勢に関して、「アラブの春の経験は治安対策による解決が不可能だということを示している」としたうえで、「シリアの危機の国際問題化を回避するかたちでの政治的解決策の創出」を急ぐよう呼びかけた。エジプト政府がシリア情勢に関して公式の立場を表明するのはこれが初めて。

トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はハマー市で戦車の投入に関して、「激しい憤りと悲しみ」を感じると述べる。

ロシア外務省が声明を発表し、シリア政府と反体制勢力の双方に自制を求める一方、「挑発と弾圧を止める」よう呼びかけ、ハマー市などでの犠牲者発生に強い懸念を示した。また政府と反体制勢力双方に対して「すべてのシリア国民のために内政、社会、経済問題の正常化を最重要視し、本質的で包括的な対話を行う」ことを呼びかけた。

レバノン・カターイブ党政治局は声明を発表し、シリアでの人権侵害に沈黙することを受け入れられないと述べる。

Akhbar al-Sharq, August 1, 2011, August 2, 2011, August 3, 2011, August
4, 2011、Aljazeera.net, August 1, 2011、DPA, August 1, 2011、Elpha.net, August
1, 2011、al-Hayat, August 2, 2011、Kull-na Shuraka’, August 1, 2011, August 2, 2011、Midi Libre, August 1, 2011、Naharnet.com, August 1, 2011、al-Sharq al-Awsat, August 1, 2011などをもとに作成。

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