2011年9月28日のシリア情勢

ヒムス市での暗殺

シリア人権監視団によると、何者かが科学技術技師のアブドゥルカリーム・ハリール氏をヒムス市で暗殺した。またSANA(9月29日付)は、ヒムス市にあるバアス大学で務める同氏が「妻を職場に送る途中、武装テロ集団」に撃たれたと報じた。

Kull-nā Shurakā, September 28, 2011

Kull-nā Shurakā, September 28, 2011

シリア人権監視団によると、ハリール氏が暗殺される前日(27日)にもヒムスの反体制指導者2人が何者かに暗殺された。暗殺されたのは、バアス大学のナーイル・ダヒール理学部長、同大学建築工学部のムハンアド・アリー・アキール教授。またヒムス市の病院のフサイン・イード外科医もヒムス市で27日に暗殺されたという。

複数の活動家によると、ハリール氏、イード外科医はいずれもアラウィー派、アキール氏はシーア派、ダヒール氏はキリスト教徒で、バッシャール・アサド政権がヒムス市内で宗派主義対立を助長するために標的としたと断じているが、真相は定かでない。

事実、シリア人権監視団は、アサド政権に近い技術者たちの暗殺を相次いで批判するとともに、ヒムス市住民に対して、「これらの暗殺にかかわった者」をつきとめるとともに、暗殺を非難し、暗殺をはじめとする暴力行為を控えるよう呼びかけ、反体制勢力のなかに暴力行為を行っている者がいることを暗に認めてしまっている。

離反兵の掃討

シリア人権監視団によると、ヒムス県ラスタン市での離反兵と軍・治安部隊の戦闘で離反兵3人が殺害された。また士官のアフマド・ハルフも重傷を負い死亡した。ラスタン市では、軍・治安部隊による離反兵の逮捕・掃討作戦が続いている。

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シリア革命調整連合は、ダイル・ザウル県で、離反兵が「ウマル・ブン・ハッターブ大隊」を結成し、軍・治安部隊、シャビーハと交戦したことを明らかにした。

その他の反体制運動をめぐる動き

軍・武装部隊による各地での逮捕・掃討作戦で、少なくとも9人が死亡した。犠牲者の多くはラスタンで殺害された。

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複数の目撃者によると、軍・治安部隊のバス10台がダマスカス県カダム区に進入し、逮捕・追跡作戦を行った。

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SANA(9月29日付)は、ヒムス市バイヤーダ地区でクビが切り落とされたアブドゥッラフマーン・マグリビー氏の遺体が発見されたと報じた。

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SANA(9月29日付)は、ハマー県ハマー市タアーウニーヤ地区でタイスィール・ウクラ大佐が武装テロ集団によって撃たれて戦士した、と報じた。

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『クッルナー・シュラカー』(9月28日付)は、バースィル・サイード・マーニウ弁護士(弁護士組合ダマスカス支部)が、9月10日軍事裁判所に起訴されたと報じる。容疑はマーヒル・アサド大佐誘拐未遂。マーニウ弁護士は7月4日にダマスカス県内の事務所で身柄拘束されていた。

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イスラーム無所属民主潮流は声明を出し、イスタンブールの会合には国内で活動する自分たち自身に加えて、ダマスカス国民民主宣言(シリア民主人民党、イスラーム無所属民主潮流、クルド民族主義政党5党、アッシリア変革機構、労働者党、リベラル・左派・世俗主義活動家)、シリア・ムスリム同胞団、国民行動委員会、在外反体制勢力諸会議代表、調整諸委員会、革命調整諸連合、革命自由運動家、シリア革命総合委員会、シリア革命最高評議会などが参加していると述べる。

アサド政権の動き

バッシャール・アサド大統領は2011年法令第374号を発し、選挙法に基づき「選挙最高委員会」を設置した。大統領府声明で発表された。

委員会メンバーはハルフ・アッザーウィー(控訴裁判所顧問)、ムハンマド・ハイダル・ジャッディー(同左)、アブドゥルファッターフ・イブラーヒーム(同左)、ムハンマド・アニース・スライマーン(同左)、フサナー・アスワド(同左)。また以下5人をメンバー候補とした。アントワーン・フィールー(控訴裁判所顧問)、アフマド・アルムーシュ(同左)、アブドゥー・シャフラー(同左)、ヒシャーム・シャッアール(同左)、ヒシャーム・ザーザー(同左)。

これを受け、選挙最高委員会がダマスカス県の控訴裁判所で第1回会合を開き、各選挙区の分科会を設置、そのメンバーを任命する。各分科会は3名からなり、検事、弁護市からなる。

SANA, September 28, 2011

SANA, September 28, 2011

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レバノンのサリーム・フッス元首相がシリアを訪問し、アサド大統領と会談。シリア国内情勢について意見交換。アサド大統領は「おかげさまで痛ましい事件は終わった。事件に遭ったシリアの各都市は完全に安定を取り戻した」と述べる。

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ブサイナ・シャアバーンは、BBC(9月26日付)のインタビューに応え、アサド大統領が憲法改正委員会の設置を準備していると述べる。

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ムハンマド・ニダール・シャッアール経済通商大臣は、輸入規制に関して、一部の生活必需品を除外する可能性があると述べる。

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ワリード・ムアッリム外務大臣は国連総会出席のために訪問中のワシントンD.C.でがベネズエラ、パキスタン、ベラルーシ、マレーシアの外相と相次いで会談。

SANA, September 28, 2011

SANA, September 28, 2011

諸外国の動き

国連安保理では、シリアに対する決議をめぐって、西側諸国とロシアの駆け引きが行われた。西側消息筋によると、ロシアの国連代表は英国代表に対して、西側が決議案を公式発表する前に内容の検討を行うことを求める一方、西側に先んじてロシアの決議案を公式発表し、同案の採決に持ち込もうとしているという。

『ハヤート』(9月29日付)は西側およびロシアの決議案をそれぞれ入手、それによると西側の決議案は、シリア政府による弾圧を「人権侵害」と断じ、即時暴力停止を求めている。またシリア政府が2週間以内に弾圧を停止せず、また真摯な改革措置を講じなければ、制裁を科すとして、制裁発動に猶予を設けている。また人権侵害に関与している関係者の処罰、国際人権監視団と国連人権理事会の真相調査委員会の受け入れを求めている。またシリア政府の弾圧に関して「国際刑事裁判所に起訴されねばならない」と指摘し、シリア国民自身の指導のもとに包括的な政治プロセスを開始し、国民の要求を実現するよう呼びかけている。

これに対して、ロシアの決議案は、シリア政府と反体制運動双方の暴力停止を求めるとともに、アラブ連盟に対して当事者間の政治対話に向けた努力を行うよう呼びかけている。またシリアの反体制勢力に対しては過激派を排除するよう要求、シリアの危機解決が「平和的で、外国の干渉なし」に行われるよう求めている。

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『シャルク・アウサト』(9月28日付)は、レバノンの北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド出身の青年2人が失踪したと報じる。家族は何者かが2人を国境地帯で誘拐し、シリアのシャッビーハに引き渡したと疑っているという。

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英国大使はアサド政権は存続のためなら何でもすると述べる。

AFP, September 28, 2011、Akhbār al-Sharq, October 2, 2011、al-Ḥayāt, September 29, 2011、Kull-nā Shurakā’, September 28, 2011、Reuters, September 28、SANA, September 29, 2011、al-Sharq al-Awsaṭ, September 28, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

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