2011年9月9日のシリア情勢

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反体制運動をめぐる動き

シリアで昨日、治安部隊の発砲により8人が殺害された。同国の複数の都市では、「国際的保護の金曜日」と銘打った大規模デモが発生し、反体制勢力は、民間人保護のための国際監視団の派遣を呼びかけた。「国際的保護の金曜日」はフェイスブックの「シリア革命2011」で数日前から呼びかけられていた。

3月以来の反体制デモで「国際監視団の派遣」という要求のもとに外国の外部介入が要求されたのは今回が初めて。「リビア・シナリオの再来」を懸念し、外国の介入に消極的だった反体制勢力によるこうした要求は、彼らがバッシャール・アサド政権の弾圧を前に苦戦を強いられ、追い詰められていることを示すものと言える。

ユーチューブなどでは、「軍は裏切り者、自由なシリア万歳」、「我々は国際的保護を望む」、「ゲームオーバーだ、バッシャール」、「国民は大統領処刑を望んでいる」と連呼するデモ参加者を撮ったデモが配信され、ジャズィーラなどがこれらの映像を「垂れ流した」。

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イドリブ県では、サラーキブ、サルミーン、ビンニシュ、タフタナーズ、ハーン・シャイフーン、マアッラト・ニウマーンでデモが発生し、数万人が参加した。シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がザーウィヤ山に近いラーマ村で反体制デモ参加者に発砲し、15歳の少年1人が殺害された。またイブリーン村に対する軍・治安部隊の突入で8日に逮捕された2人が殺害された。このうち1人は自由将校運動司令官のフサイン・ハルムーシュ大佐の兄のムハンマド・ハルムーシュ氏(74歳)。

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ダイル・ザウル県では、ダイル・ザウル市で金曜礼拝後に反体制デモが発生し、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が参加者に発砲し、1人が殺害された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がヒムス市各地区で反体制デモ参加者に発砲し、1人が殺害された。ダイル・バアルバ地区は約20,000人がデモに参加し、体制打倒を求めた。ハーリディーヤ地区でも同様のデモが発生し、軍・武装部隊の発砲で6人が負傷した。またラスタン市、タルビーサ市、クサイル市でもデモが発生した。地元調整委員会によると、タルビーサ市では電話、電気が不通となっている。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が「指名手配中」の男性1人をヒターブ村で射殺した。

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ダマスカス県ではバルザ区でも金曜礼拝後にデモが発生したが、参加者は150人と小規模だった。バルザ区でのデモでは、ロシアと中国に国連の制裁決議を認めるよう求めるプラカードが掲げられた。またカフルスーサ区、マイダーン地区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市でもデモが発生した。

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ダマスカス郊外県では、地元調整委員会によると、キスワ地区でのデモに対して、軍…治安部隊が発砲し、6人が負傷した。 9月6日にダマスカス郊外県サフナーヤー市で友人とともに行方不明になっていたギヤース・マタル氏の遺体が発見される。遺体には拷問の跡が残っていた。

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スワイダー県では、地元調整委員会によると、スワイダー市で約100人が反体制デモを行った。

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ダマスカスおよび同郊外自由運動家連合は、9月9日早朝、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ墓地で約50人の遺体を発見した、と発表。同連合は、発見された遺体が、ダマスカス県、ダマスカス郊外県で逮捕・殺害された人々のものだと思われると付言。

アサド政権の動き

『クッルナー・シュラカー』(9月9日付)は信頼できる消息筋の話として、共和国護衛隊第105旅団司令官のマナーフ・トゥラース准将が司令官職を凍結され、実務から遠ざけられたと報じた。同筋によると、同准将の出身地で、父のムスタファー・トゥラース元国務長官の権威が及ぶと考えられているヒムス県ラスタン市での事態収拾のための仲介後に、アサド大統領にとって受け入れられない発言を行ったことが理由だという。トゥラース准将の仲介によって住民との休戦が成功したにもかかわらず、軍・治安部隊による弾圧によって、その努力が無に帰し、准将が住民に謝罪、仲介を放棄し、その際感極まって発言した内容がアサド大統領の逆鱗に触れたという。

また先日、副参謀長就任に伴うアリー・アイユーブ少将(第105旅団の前司令官)の台頭もトゥラース准将の事実上の粛清に関係しているとの見方もある。

同様に、共和国護衛隊の別の旅団を指揮するタラール・マフルーフ准将も、「民間人の殺害によって反体制運動が宗派対立の様相を強めている」との発言が原因となり、監視下に置かれ、任務から遠ざけられたという。同准将は故バースィル・アサド准将の大学時代の親友として知られている。

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ダーウード・ラージハ国防大臣はアサド軍事工科大学卒業式で訓辞を述べ、「自由を呼びかけるスローガンを利用して」、中東諸国を「分断」しようとする「忌まわしい計画」への警鐘をならした。

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タルトゥース県ドゥライキーシュ市の若者数千人がアサド大統領の改革を支持する集会を開催・参加。

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SANA(9月10日付)は、ハマー、ヒムス、ダマスカスでのデモに関するジャズィーラ、BBCなどの報道が事実と異なると批判。

諸外国の動き

ミハイル・マルゲロフ連邦議会外交委員会委員長(大統領特使)がシリアの反体制勢力使節団(ラドワーン・ズィヤード氏ら)とモスクワで会談。会談後、「外国の干渉なしで危機の解決策を見出さねばならない」と述べるとともに、一部の反体制勢力が外国の干渉や国際監視団派遣を主唱していることに対して「リビアのシナリオ再来に向かうのを許してはらない」と警鐘をならした。また「現地情勢の収集と係争地視察」のためロシア連邦議会の使節団を派遣することを検討していると述べ、「シリアの反体制勢力の代表はこれを歓迎した。月曜日に(ブサイナ・シャアバーン)大統領府政治情報担当報道官と議論する」と付言した。

これに対して、使節団の代表でシリア人権国民機構のアンマール・カルビー会長は、会談を「非常に開放的で前向きだった」と評価した。同会長によると、会談では、国連安保理でのロシアの姿勢に関して意見交換を行い、「対話では、本質的に国際社会の対場に近い最終的な危機打開のかたちに関して意見が交わされた」としつつ、ロシアに「より積極的」な姿勢を示すよう呼びかけた。

またRT(9月10日付け)は、使節団の一人、アブドゥルイラーフ・ムルヒムの話として、反体制派がロシアにシリアへのロシア政府使節団派遣を求めたと報じた。

一方、ロシアのドミートリー・メドヴェージェフ大統領は、ユーロニュースのインタビューに応じ、そのなかで「我々はさまざまな措置をとるべく支援する用意がある。しかし、政府やアサド大統領が行うことに偏った非難を浴びせるべきではない…。交渉のテーブルにつき、合意に達し、流血を止めるよう、対立し合うすべての当事者たちに断固たるメッセージを伝えねばならない」と述べつつ、反体制デモを行う一部の人々を「テロリスト」と非難した。

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Kull-nā Shurakā‘, September 10, 2011

Kull-nā Shurakā‘, September 10, 2011

在ダマスカス・サウジアラビア大使館は、シリアに滞在する約3,500世帯に対して、退避勧告を発した。

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ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、米国が来週、国連で西側諸国とともに、アサド政権に対する非難決議採択をめざす動きを「加速」させると述べる。

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日本政府は、米・EUに追随するかたちで、アサド大統領および政府高官14人、政権に近い6機関の資産を凍結。

レバノンの動き

レバノン軍団のアントワーン・ザフラ国民議会議員は、シリア国内の反体制抗議運動に対して否定的な見解を示しているビシャーラ・ラーイー・マロン派大司教に関して、「アサド大統領にチャンスを与えるかどうかは、シリア国民が決めること」と非難。

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レバノン・イスラーム集団は、シリア国内の反体制抗議運動に対して否定的な見解を示しているビシャーラ・ラーイー・マロン派総大司教、ミシェル・アウン国民議会議員の発言に関して、「宗派主義的、非宗派主義的感情を高めることは地域社会に寄与しないだろう」と非難。

AFP, September 9, 2011、Akhbār al-Sharq, September 10, 2011, September 11, 2011、al-Ḥayāt, September 9, 2011, September 10, 2011, September 10, 2011、Kull-nā Shurakā‘,
September 10, 2011、Naharnet.com, September 9, 2011、Reuters, September 9, 2011、SANA, September 10, 2011などをもとに作成。

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