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反体制運動をめぐる動き
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で、軍・治安部隊が3月に反体制抗議行動が始まって以来「もっとも大規模で激しい攻撃」を加えた。
同監視団によると「グータ地区の総合情報部内務治安課(ヒムス)支部やハーリド・ブン・ワリード・モスク近くで激しい銃声が聞こえ、また空軍情報局(ヒムス)支部近くでも爆発音と激しい銃声が聞こえた」。
地元調整諸委員会は声明を出し、「(ヒムス市でのこれまでの)殉教者の数は革命の犠牲者の3分の1におよび、数日前からさらに状況は悪化している」と述べた。
また「ヒムス市内各所は真の戦争状態にあり、爆発音が絶えず…、機関銃、対空砲などの集中砲火が続き、多くの家が破壊された。そしてこれにより、9人が死亡し、数十人が重傷を負った」という。
またハーリディーヤ地区では数十人が逮捕されたという。
この戦闘によって14人の民間人と17人の兵士が死亡し、過去48時間の犠牲者の数は40人以上となった。
一方、SANA(10月11日付)は、ヒムス市のザイダル街道で治安維持部隊が武装テロ集団に襲撃され、部隊の兵士2人が殺害されたと報じた。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、民間人3人が殺害された。
この3人は拷問で死亡した青年の葬儀に参列していたという。
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SANA(10月11日付)は、武装テロ集団がハマー県ムハルダ市郊外のジャルマ村のマムドゥーフ・ラスラーン・アラブ村長を誘拐したと報じた。
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SANA(10月11日付)は、イドリブ県のアイン・バイダーとハムーシーヤ間で武装集団が治安維持部隊を要撃し、部隊の兵士2人が殺害されたと報じた。
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自由シリア軍司令官のリヤード・アフマド大佐は、逃亡先のトルコで『ヒュッリーイェト・デイリー・ニュース』(10月10日付)の取材に応じ、そのなかでアサド政権打倒のための「国際的な軍事支援」を求めた。
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反体制弁護士のラッザーン・ザイトゥーナ女史(34歳)は「アンナ・ポリトコフスカヤ賞」の受賞を受けて、ロイター通信(10月10日付)の取材に応じ、反体制運動が平和的でなければならないとしつつ、「7ヵ月間にわたる血の弾圧と反体制勢力の不統一、そして国際社会が行動に訴えないなかで、革命の軍事化が表面化するのは当然」と述べた。
ザイトゥーナ弁護士は家族や友人の活動家らが投獄されて以降、国外に逃れ、民主化のための地下活動を行っている。
しかし筆者が9月下旬にシリア国内で平和的・漸進的な民主化をめざす国内在住の反体制活動家に聞き取りを行ったところによると、ザイトゥーナ弁護士と同じく反体制弁護士のスハイル・アタースィー女史の個人的な不仲が、地元調整諸委員会とシリア革命調整連合の対立に反映されているという。
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シリアのアッシリア教徒筋がAKI(10月10日付)に語ったところによると、カーミシュリー市でのミシュアル・タンムー氏暗殺を受けて、アルメニア教徒の反体制活動家も暗殺の恐怖にさらされている、という。
一方、シリア・アッシリア民主機構はスウェーデン政府に対して、シリア国民評議会をシリア国民の正当な代表として承認するよう求めた。
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複数の活動家によると、ダマスカス大学で数学講師を務めるハウラ・ハイダル・ハイダル女史が、理学部で1年生の前にして「武装集団についての話は作り話で、軍と治安部隊がデモ参加者を殺害する作戦を行っている」と述べた後に辞意を表明した。
その場にいた学生によると、この辞意表明に対して、講堂にいた学生たちは5分間にわたり拍手喝采したが、その後、学生の一人が治安当局の所属証を提示し、彼女を連行した。
これに対して学生たちは彼女をかくまおうと抵抗したという。
アサド政権の動き
ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報担当報道官は訪問先のマレーシア首都クアラルンプールで、「武装集団」が暴力の背後にいると改めて述べた。
また「我々と(トルコと)の間は、考えられている以上に良い関係があった。それゆえ、我々はトルコが、シリアにおける多元主義と民主化の路線を支持すると期待しており、シリア情勢を悪化させ、武装集団を支援するような発言を行わないはずだと考えている」と述べるとともに、一部の国がシリア国内の宗派対立や分断を支援するために武器や資金を援助していると断じた。
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『イクティサーディー』(10月10日付)は、ミシュアル・タンムー氏暗殺後閉鎖されていたカーミシュリー市の対トルコ国境が再び開通したと報じた。
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カナダ在住のキリスト教徒反体制活動家のミハイル・サアド氏はフェイスブックでシリア・ムスリム同胞団への加入を申請したと発表。
諸外国の動き
EUは外相声明を出し、「シリア国民が統一的なプログラムを作り上げたことを歓迎する…。シリア国民評議会の発足は前向きな措置である」と同評議会への歓迎の意思を初めて公式に示した。
またフランスのアラン・ジュペ外務大臣はシリアの反体制勢力と接触する意向を示す一方、イタリアのフランコ・フラティニ外務大臣は「まず彼らが誰なのかを知ることが重要」としたうえで、「我々は計画、提案、そしてもし可能なら行程が欲しい」と述べた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ロシアと中国がシリア情勢をめぐって「よりバランスのとれた」決議案を提出する用意があると述べた。
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西側諸国が支援するリビア暫定評議会は、シリア国民評議会を承認し、シリア大使館を閉鎖すると発表した。
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「アフバール・シャルク」(10月10日付)は、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は10月6日のイスタンブールでの作家・ジャーナリスト(30~40人が参加)との懇談で、アサド大統領との会談について語ったと報じた。
同報道によると、ダウトオール外務大臣は、3度にわたるアサド大統領との会談で、軍の撤退や憲法改正などを含む改革を求めたが、その都度、忠告を無視され、「トルコはアサド(大統領)への信頼を失い、国民の側につくことを決定した」と述べたという。
またトルコが現在、シリア国内での宗派・エスニック対立を懸念しているとしたうえで、アサド大統領がこのカードを「最後のカードにしようとしている」と非難したという。
一方、レジェップ・タイイップ・エルドアン首相が準備しているとされる制裁に関しては「シリア国民ではなく、政権に対するもの」と述べ、詳細には触れなかった。
さらにシリア国内情勢に関しては「政権内でクーデタが起きるかもしれない」との見方を示した。
AFP, October 10, 2011、Akhbar al-Sharq, October 10, 2011, October 14, 2011、AKI, October 10, 2011、al-Hayat, October 11, 2011、al-Iqtisadi, October 10, 2011、Reuters, October 11, 2011、SANA, October 11, 2011などをもとに作成。
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