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反体制勢力の動き
『ハヤート』(12月2日付)は、カイロで予定されていた反体制勢力の会合が頓挫したと報じた。
同報道がカイロ在住の反体制活動家ムハンマド・マアムーン・ヒムスィー前人民議会議員の話として伝えたところによると、ハイサム・マーリフ氏(シリア国民救済大会代表)が反体制勢力代表に対して、反体制勢力の立場の統一をめざすため、カイロの記者組合本部での会合を呼びかけていた。
しかしヒムスィー前人民議会議員によると、シリア情勢の「国際問題化、軍事介入、民間人保護のための航空禁止空域設定」の是非をめぐって出席者の意見が割れた。またシリア国民評議会の組織拡大を通じた反体制勢力の糾合についても意見対立が生じた、という。
ヒムスィー前人民議会議員は、一部の勢力が自らの意見を他の勢力に押しつけようとし、またシリア国民が殺戮、弾圧、逮捕に曝されていることの責任を追及した、と述べ、議事の様子に危機感を示した。
アサド政権の動き
SANA(12月1日付)は、ワリード・ムアッリム外務大臣が11月30日のジェッダでのイスラーム諸国会議理事会の緊急会合でのトルコ、カタールの発言に対して、「シリアへの監視団派遣に関するアラブ連盟の議定書(案)はシリアとの合意に基づかねばならない…。(シリアは)議定書が順守契約になることに反対する…。シリアは意図的黙殺のもとに発せられた決議を承認しない」と反論したと報じた。
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シリア外務省のジハード・マクディスィー報道官は、EUの制裁に関して、「正当性がなく、シリア国民の暮らしを標的とし、国民主権に対する重大な侵害で、あからさまな内政干渉」と非難した。
そのうえで、こうした決定・行動がシリアとEU諸国のこれまでの合意に反しているとし、地中海連合の加盟資格を自ら凍結すると発表した。
マクディスィー外務省報道官はまた、シリア・トルコ両国の自由通商協定を停止すると発表した。
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ダマスカス郊外県ダーライヤー市、サーフィーター市などで、アラブ連盟による対シリア経済制裁反対や外国の内政干渉拒否を訴える大規模集会が実施された。
ダーライヤー市はダマスカス郊外県内でもっとも反体制活動が激しかった町の一つである。
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『ザマーン・ワスル』(12月1日付)は、政府系企業や機関の職員多数が、「仕事に来なかった」との理由で減俸処分を受けていると報じた。
同報道によると、治安部隊の検問所が各地に設置されているため、職員の出勤が妨げられているという。
反体制運動掃討
ハマー県では、SANA(12月1日付)によると、ハマー市郊外で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、後者のメンバー5人を殺害、35人を逮捕、大量の武器を押収したと報じた。
またハマー市の特派員によると、武装テロ集団が市内の商店主に店を閉めるよう脅迫していると報じた。
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イドリブ県では、SANA(12月1日付)によると、のブダーマー地方(対シリア国境)では、国境警備隊がシリア領内に潜入しようとする武装テロ集団と交戦し、後者メンバー多数を殺害、逮捕した、と報じた。同報道によると戦闘では、国境警備隊兵士1人が犠牲となったという。
またサラーキブ市・イドリブ市間で、サラーキブ市の労働者の給与を運んでいた車が武装テロ集団に襲撃された。
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ヒムス県では、SANA(12月1日付)によると、フーラ地域で、武装テロ集団がしかけた爆弾2発を爆弾処理班が撤去した。
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地元調整諸委員会は、各地で「自由の殉教者への忠誠」の名のもと各地でゼネストを呼びかけた。
同委員会は、ハマー県ハマー市、イドリブ県ジスル・シュグール市、ヒムス県、ハマー県、ダルアー県、ダイル・ザウル県の各地で市民がこの呼びかけに応えたとしているが真偽は定かでない。
地元調整諸委員会はまた、軍・治安部隊が各地で逮捕・弾圧活動を行い、ハマー県(トゥライミサ村など)で9人、ヒムス県ヒムス市で2人、イドリブ県で1人、合わせて12人を殺害した、と発表した。
同委員会とシリア人権監視団によると、軍・治安部隊の逮捕・弾圧は、ハマー県スーラーン市、ヒムス県ヒムス市、タッルカラフ市、ダマスカス郊外県ハラスター市、イドリブ県カフルタハーリーム町、ダルアー県ジャースィム市、ダーイル町などで激しく行われ、それ以外にも各地で軍・治安部隊と離反兵が交戦した、という。
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アレッポ県では、『ザマーン・ワスル』(12月1日付)によると、アレッポ大学内で学生が反体制デモを行った。多数の学生が参加したが、15分後の武装した治安維持部隊が大学に到着し強制排除した、という。
諸外国の動き
国連人権理事会のナバネセム・ピレイ人権高等弁務官は、2011年3月以降のシリア国内での死者数が4,000人を越えたとしたうえで、同国で内戦が発生していると危機感を示した。
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米財務省は、アウス・アスラーン(共和国防衛隊)、ムハンマド・マフルーフ(ラーミー・マフルーフの父)など政府・軍高官やアサド政権に近いビジネスマン、軍事航空公社、シリア不動産銀行といった機関を新たに制裁リストに追加した。
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EUは、11の企業・機関、12人の政府関係者らを新たに制裁リストに加えた。
またシリア政府発行の債券購入禁止、貸付停止、シリアの銀行の支店開設禁止、共同プロジェクト禁止、融資の禁止、インターネット等の監視に利用可能な技術輸出の禁止などを定めるとともに、地中海連合におけるシリアの加盟資格を停止した。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長はベルギーのブリュッセルを訪問しEU諸国外相らと会談した。
『ハヤート』(12月2日付)によると、アラビー事務総長は会談で、パレスチナ問題、アラブの春、連盟EU関係、シリアをめぐる問題へのEUの対応などについて意見交換し、連盟が外国の介入排除をめざしている点を強調した。
一方、キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表はアラブ連盟の「主導的役割」を改めて高く評価した。
またフランスのアラン・ジュペ外務大臣、シリアへの監視団派遣に向けて引き続き行動する意思を示した。
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モロッコのアブドゥルイラーフ・ベン・キーラーン新首相はシリア情勢に関して「想像に絶する」と述べた。
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「アフバール・シャルク」(12月1日付)は、レバノンの匿名の銀行筋は、レバノンの銀行がシリア人の顧客との取引への監視強化を開始したと報じた。
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クウェート外務省はシリア在住のクウェート国民に対して退避勧告を出した。
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サウジアラビア外務省次官は、シリア政府に対して暴力の即時停止とアラブ連盟外相会議の議定書への署名を改めて求めた。
AFP, December 1, 2011、Akhbar al-Sharq, December 1, 2011、al-Hayat, December 2, 2011、Kull-na Shuraka’, December 1, 2011、Reuters, December
1, 2011、SANA, December 1, 2011、Zamān al-Wasl, December 1, 2011などをもとに作成。
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