SANA(5月8日付)によると、ロシア仲介によるシリア政府と、ヒムス県北部・ハマー県南部の反体制武装集団の停戦合意(1日)に従い、シリア軍に重火器、中火器の引き渡しを完了した武装集団の戦闘員とその家族が、7日に引き続き、シリア政府によって準備された大型バス58台に分乗し、ラスタン市からトルコの実質占領下にあるアレッポ県ジャラーブルス市方面およびイドリブ県方面に退去した。
SANAによると、退去に向けた作業が行われているなか、戦闘員らが集まるラスタン橋一帯が砲撃を受けたが死傷者はなかった。
一方、シリア人権監視団によると、ヒムス県北部とハマー県南部で活動を続けていた反体制武装集団の戦闘員とその家族を乗せて、7日にヒムス県ラスタン市近郊のラスタン橋を出発し、トルコの実質占領下にあるアレッポ県ジャラーブルス市方面に向かった大型バス67台(SANAによるとバスは62台)の車列が、シリア政府支配地域との境界に位置するアレッポ県バーブ市近郊のアブー・ザンダーン通行所で、「トルコ当局が受入を拒否したため」、一時足止めを食った。
アブー・ザンダーン通行所に到着した戦闘員と家族のうち、負傷者や重篤患者14人は救急車輌でバーブ市方面に入ることを許されたが、それ以外の戦闘員らが通行を拒否されたという。
ドゥラル・シャーミーヤ(5月8日付)によると、事態を受けるかたちで、ハムザ師団によるヒクマ・ワ・サラーム病院襲撃や、東部自由人連合とワーキー家の抗争に伴う同地の治安悪化に抗議するゼネストが呼びかけるビラがバーブ市で配布された。
ゼネストは「バーブ市および同郊外調整」の名で呼びかけられており、ヒムス県北部、ハマー県南部から退去している反体制武装集団の戦闘員とその家族を受け入れることも合わせて要求された。
アレッポ県の複数の活動家によると、トルコ当局はその後、「民衆の圧力」に屈して、受け入れを許可したという。
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ダマスカス郊外県では、SANA(5月8日付)によると、3、4、5、6、7日に引き続き、ヤルダー市、バービッラー市、バイト・サフム市で活動を続けてきた反体制武装集団の戦闘員とその家族が、シリア政府によって準備された大型バス37台に分乗し、トルコの実質占領下にあるアレッポ県ジャラーブルス市方面とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団の支配下にあるイドリブ県に退去した。
AFP, May 8, 2018、ANHA, May 8, 2018、AP, May 8, 2018、al-Durar al-Shamiya, May 8, 2018、al-Hayat, May 9, 2018、Reuters, May 8, 2018、SANA, May 8, 2018、UPI, May 8, 2018などをもとに作成。
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