アサド大統領がイランのアーラム・チャンネルのインタビューに応じる「シリア国内のイスラエル軍、すなわちテロリストと戦うことが、パレスチナを支援することになる」(2018年6月13日)

アサド大統領はイランのアーラム・チャンネル(6月13日付)のインタビューに応じた。

インタビューはアラビア語で行われ、その映像はSANAがYoutube(https://www.sana.sy/?p=767443)を通じて公開、また全文と英語全訳をHP(アラビア語全文https://www.sana.sy/?p=767411、英語全訳https://sana.sy/en/?p=140166)を通じて配信した。


アサド大統領の主な発言は以下の通り:

**

(ダルアー県の反体制派支配地域の処遇をめぐって)「シリアの他のすべての地域と同じく、我々には二つの選択肢がある。和解か力による解放かだ。ロシアは、2011年以前の状態を回復するため、すなわち同地域にシリア軍の進駐させるため、他の地域で起きたのと同じように、関係正常化と和解に向けた機会を与える可能性を示した。同地はシオニストの敵と対峙する地域だ。もちろん、テロリストの退去が提案された。これは我々にとっても適切な提案だ。今のところ、実質的な結果は得られていない。その理由は単純で、イスラエルと米国が介入し、この地域のテロリストに圧力をかけ、関係正常化や平和的問題解決を阻止しているからだ」。

「ロシア、米国、イスラエルの間で今も折衝が続いている。だが、テロリストとは誰も連絡をとりあっていない。彼らは自分達の主人が決定したことを実行するだけだからだ…。これまでにも和解のチャンスはあったが、米国とイスラエルの介入がそれを妨げてきた」。

「米国には世界のいかなる問題であれ一般原則がある。それは、地域の派遣を米国が唯一の報酬として求めるというものだ…。もちろん我々の側がこうした代償を支払うことはない。この戦争をなぜ何年も戦ってきたというのか? 我々は自決、祖国の独立、国土統一に戦っているのだ。一方、イランの問題について言うと、シリア・イラン関係が戦略的関係だということをはっきりさせておきたい。それはシリア南部での事態正常化…、そしてシリア北部の事態正常化に従属するものではない。両国関係は…この地域の現在、そして未来に関わっている…。シリアもイランも、両国関係を国際政治のバザールで売りに出し、交渉の材料にしようとしたことなどない。そうしているのはイスラエルだ。その狙いはイランに揺さぶりをかけるというものだ…。同時に、こうした行動は、核問題をめぐって、今イランに対して行われている国際的なプロパガンダとも合致している…。我々について言うと、シリア領内にかかわる決定は、シリア人のみによる…。我々はイランについて決定する場合、イランと協議するのであって、それ以外のいかなる当事者と協議することはない」。

「MOC(米CIAが統括する「軍事作戦司令室」)はこうした決定(イランをめぐる問題での決定)には関係ない。MOCはシリアに対する戦争が始まった当初から、テロリストの存在や活動とつながりがあった。MOCはテロリストとともに存在を続け、訓示面で彼らを指導している…。MOCが存在し続けるということは、テロリストの役割も続くということだ…。我々がいつ南部、北部、東部、あるいは東部に向かうかは、純粋に軍事的問題だ。だが、MOCの存在はともかくとして、我々は今、南部に向かっている。政治プロセスが行われる余地を与えているが、それがうまくいかなければ、力による解放しかない」。

(シリア南部の処遇をめぐって米国、ロシア、イスラエル、イラン、ヒズブッラーが関与していることに関して)「二つの枢軸が(混同されて)話されている…。米国やイスラエルによって代表される…第1の枢軸とはテロを支援し、覇権を狙っている。これに対して第2の枢軸は独立をめざしている…。どちらかが勝つとしか言えない。だが、少なくともテロと戦う枢軸は、シリア、そしてこの地域からテロを掃討することで譲歩はしないし、シリアの領土統一をめぐって譲歩もしない。もう一方の枢軸が現実を変えられるか否かは、事態を見ていくことにしよう…。だが実際のところ…、現実を変えることはできないだろう。現実によって規定されている政治的パフォーマンスを変えるのだろう」。

(米国はヒムス県のタンフ国境通行所から撤退するかとの問いに対して)「米国はその準備ができていると言っている。だが、米国が歴史を通じて、政治においてウソをついてきたことはみなが知っている。なのに、なぜ信じられるのか。これについても事態を見ていく必要がある」。

「イスラエルは満足することもなければ、道徳もなく、国際法も関係ない。これらすべてはイスラエルにとっては無意味なのだ…。イスラエルはシリア軍を直接攻撃してきたし、テロリストを直接支援してきた。イスラエルの大砲、戦闘機は、ヌスラ戦線などのテロリストのための大砲、戦闘機となっている…。(シリア南部へのシリア軍の展開などをめぐって)イスラエルの合意には何の役割もない。イスラエルがテロリストを支援しようと、我々は自分達の任務を遂行し、シリア軍は南部前線に向かって戦いを続け、多くの地域を自らの力をもって解放してきた。(イスラエルと)合意しようがしまいが、決定はシリア人が行うものであって、我々が遂行する義務とはそうしたものだ」。

「我々は(イスラエルに対する)報復を止めたことなどない。我々はまず、テロリストとの戦闘を止めたことはないし、同時にイスラエルに対する報復も止めることはない。それは、軍事技術面での我々の十分な能力をもって行われる。この能力が向上する度に、報復はより高度で優れたものとなる。現在イスラエルに対して行われている強力は報復とは、シリア国内にいるイスラエル軍に打撃を与えるというものだ。イスラエル軍というのはつまりはテロリストのことだ…。テロリストは、(シリア軍の)防空システムへの攻撃を開始した当初から、明らかにイスラエルのために活動している。歩兵部隊のようなテロリストにとって防空兵器は無関係だ。こうした攻撃はイスラエルの指示によるものだ…。イスラエルが政治、軍事を含むあらゆる分野でまず打撃を受ければ、それはシリア国内にいる「イスラエルのテロリスト」にとっての打撃となる。それはダーイシュ(イスラーム国)であれ、ヌスラ(シャーム解放委員会)であれ、イスラエルの戦略や計画につながりのあるその他のグループであれ同じだ」。

「イスラエルの行動がエスカレートすれば、我々は最終的には戦争をもって応じる」。

「(ロシアとの)関係は間違いなく戦略的なものだ…。ロシアはシリア国内の問題には介入しない。仮にロシアが我々とともに何らかのアイデアを提示したとしても、ロシアは、最終的に決めるのは、シリアの指導部、シリアの国民だと言ってくる。これがロシアとの関係の原則だ。だから、(ロシア、そしてイランとの)同盟は戦略的なのだ…。戦術面での詳細をめぐって、(シリア、イラン、ロシアの間には)毎日のように意見の違いは生じている。すべてのことで合意済みだというのなら、なぜ協議する必要があるというのか? 我々は毎日集中的に会合を持ち、合意しようとしているのだ」。

「(シリア、イラン、ロシアからなる)この同盟は、現状、国益、そして国際情勢の変化のおかげで強化されている…。もう一方の陣営がテロを支援するなか、我々、イラン、そしてロシアはシリアだけでなく、3カ国、そして世界全体のテロに脅威を感じている…」。

「最初に述べた通り、我々はこの関係(イランとの関係)をバザールで売りに出したりはしない…。例えば、サウジアラビアなど複数の国からこの問題をめぐって提案があった…。もしシリアがイランと関係を絶てば、シリア情勢は正常なものとなる、という提案が。だが、我々にとって、こうした原則はそもそも拒否されるべきものだ…(こうした取引の提案は)何度も…直接あった。イランとの関係はあらゆる提案においても根本をなしていた。サウジアラビアのこうした姿勢は公然たるもので、隠しだてはしない」。

「シリアにはイランの顧問が複数いる。これは確かだ。また、シリアで戦うためにやって来たイラン人の義勇兵のグループも複数いる。イラン人の士官が彼らの指揮にあたっているイランはシリア国民のために戦い、守ってくれた。イランは血を流してくれた。だから、我々が「顧問」という場合、それは一般的な呼称なのだ。イラン人がいてくれることを恥じているということではない…。我々が「顧問」という言葉を用いているのは、シリア国内にイランの正規軍部隊が駐留していないからだ…大隊であれ、旅団であれ、大隊であれ、駐留はしていない」。

(シリア国内にロシア軍の基地が複数あるのに、なぜイラン軍基地がないのかとの、との問いに対して)「イランがロシア同じ同盟こくなら、こうした基地が存在することを禁じるものではない…。我々はこうした部隊の進駐を要請することはできる。イランの側は要請してはいない。なぜならイランにはテロ撲滅以外の国益はないからだ…。イランとの協力、連携、対話のなかで、イラン軍の基地を設置する必要があると考えたら、我々は躊躇しないだろう。だが、イランの支援は現状において優れて効率的だ」。

(シリアはパレスチナ人を支援することはできるか、との問いに対して)「何よりもまず、シリア国内のイスラエル軍を打倒しなければならない。シリアで安定を回復し、テロを撲滅し、シリア国内でのイスラエルの計画を頓挫させること、これがパレスチナの大義への支援の一部をなしていることは確かだ…。シリアの現在の能力を踏まえると、優先事項は間違いなくシリアでテロを浄化することだ」。

(ヒズブッラーにシリアから退去するよう求めたことはあるか、との問いに対して)「戦いは長く続いており、(シリア、ロシア、イランからなる)三国同盟が必要不可欠だ。我々は三国同盟をヒズブッラーの加入によって四者同盟とみなすのであれば…、我々は国家からなる三国同盟について話しているが、ヒズブッラーはこの戦争において主要な存在だ…。ヒズブッラー、あるいはイランなどが、テロは根絶されたと考えた時、帰国したいと言うことだろう…。だが、この問題について話すのは時期尚早だ」。

「我々は国家として当初から、テロリストであれ、占領軍であれ、こうした勢力に対するあらゆるレジスタンスに対して支援を行う。占領軍が米軍であっても、フランス軍であっても、トルコ軍であっても、そしてイスラエル軍であってもだ」。

(シリアに部隊を進駐させようとしているサウジアラビアに関して)「我々が外国について話す場合、その国には自決権があると考えねばならない。だから、我々はサウジアラビアの役割について話すつもりはない」。

「戦争により、シリアの能力の多くが国外へと去ってしまったが、我々は今も復興を開始する能力を持っている…。資金面では…シリアの資本は国内、さらには国外において十分とは言えない…。だが、復興開始に向けて投資の準備はなされているし…、友好国には(復興を支援する)能力、そして願望がある…。我々はこうした国々(欧米諸国、アラブ湾岸諸国)を必要とはしていない。我々はこれらの国が復興に参加することを決して許さないだろう」。

SANA, Jnue 13, 2018

(もっとも困難だったとき、事態が好転したと思った戦いは何か、との問いに対して)「2013年のクサイル市での勝利が…2016年のアレッポ市にいたる勝利の始まりとなった。大いなる勝利の始まりとなった。その後、ダイル・ザウル市での勝利があり、今は首都ダマスカスと同郊外県の解放に歓喜している。

(大統領職を辞めたいと思ったことはあるか、との問いに対して)「個人レベルで言うと、絶望することもあるかもしれないし、飽きたり、疲れたりするし…、あきらめたいと思うこともある。そういうこともあるとは思う…。一個人としてあるかもしれない。ただし、事態は個人レベルではなく、国民レベルなのだ…。自分のこととして想像してみて下さい…。例えば、この建物を一人で建てていれば、疲れを感じるかもしれない。だが、多くの人が助けてくれれば、疲れを忘れることができる…」。

AFP, June 13, 2018、ANHA, June 13, 2018、AP, June 13, 2018、al-Durar al-Shamiya, June 13, 2018、al-Hayat, June 14, 2018、Reuters, June 13, 2018、SANA, June 13, 2018、UPI, June 13, 2018などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き パーマリンク