SANA(6月18日付)などシリアの主要メディアは、米主導の有志連合の戦闘機複数機が、ダイル・ザウル県南東部ユーフラテス川西岸(右岸)のイラク国境に面するブーカマール市近郊のハリー村にあるシリア軍拠点の一つを爆撃し、複数が死傷したと伝えた。
シリア人権監視団によると、この爆撃でシリア軍兵士と親イラン民兵の戦闘員40人あまりが死亡したという。
またAFP(6月18日付)は、複数の地元消息筋の話として、親政権民兵の非シリア人戦闘員38人が死亡したと伝えた。
その後、ユーフラテス・ポスト(6月18日付)は、シリア軍士官5人、兵士10人、ヒズブッラーの戦闘員25人が死亡したと伝えた。
また、RT(6月18日付)も、シリア軍将兵16人、ヒズブッラーの戦闘員36人が死亡したと伝えた。
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一方、イラク人民動員隊も声明を出し、17日午後22時にブーカマール市近郊の国境地帯(シリア領内)に展開していた同隊所属の第45旅団および第46旅団の拠点が米軍戦闘機1機が発射した誘導ミサイル2発の攻撃を受け、戦闘員22人が死亡、12人が負傷したと発表した。
声明によると、「人民防衛部隊は国境解放作戦終了後も国境地帯に駐留している…。不毛地帯に国境線が敷かれているというこの地域の地理的特性、そして軍事的必要ゆえに、イラクの部隊は、国境から700メートルの距離に位置するシリアのブーカマール地区北部に本部を設営し、同地のインフラを管理する措置をとっている。同地付近には、テロがイラク領内に浸食するのを回避するため、防御壁が設置されている。この駐留はシリア政府、そしてイラク合同作戦司令室も承知している」という。
イラク人民動員隊は声明のなかで、「同地でのテロリストの結集は、イラク領内への浸食を試みるもので…。我々は(米軍の)こうした爆撃は、敵に国境地帯を掌握させようとするものだと考える」と厳しく非難、米国に「本件に関する釈明」を求めた。
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シリア軍と連携する同盟部隊の司令官は、ロイター通信(6月18日付)に対して「米軍所属と思われる正体不明の航空機複数機が、ブーカマール市とタンフ国境通行所(ヒムス県)の間に位置するイラクの武装勢力の拠点複数カ所、そしてシリア軍の拠点複数カ所を爆撃した」と述べた。
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ラタキア県フマイミーム航空基地の駐留ロシア軍のアレクサンドル・イヴァノフ報道官は、「この爆撃は、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員がこの地域に再び勢力を伸長する余地を与えることを狙った敵対行為だ」と述べ、米主導の有志連合を非難した。
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米国防総省のエイドリアン・ランキン=ギャロウェイ報道官(少佐)は、この爆撃に関して、米国および同国主導の有志連合の戦闘機によるものだとの報道・情報を否定した。
一方、フッラ・チャンネル(6月18日付)は、米政府高官の話として、イスラエル空軍が同地への爆撃を実施した、と伝えた。
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なお、ダイル・ザウル県南東部のユーフラテス川西岸(右岸)のイラク国境地帯、ヒムス県南東部の砂漠地帯では、最近になってダーイシュ(イスラーム国)によるシリア軍、親政権民兵への攻撃が激化している。
AFP, June 18, 2018、ANHA, June 18, 2018、AP, June 18, 2018、al-Durar al-Shamiya, June 18, 2018、Euphrates Post, June 18, 2018、al-Hayat, June 19, 2018、Alhurra, June 18, 2018、Reuters, June 18, 2018、RT, June 18, 2018、SANA, June 18, 2018、UPI, June 18, 2018などをもとに作成。
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