シリアでの人権侵害を調査するため国連人権理事会調査委員会は東グータ地方でのシリア軍の「人道に対する罪」と反体制派の「戦争犯罪」を指摘(2018年6月20日)

シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会(IIIM、パウロ・セルジオ・ピネイロ委員長)は、4月にシリア政府の支配下に復帰したダマスカス郊外県東グータ地方の状況に関する最新の報告書を提出した。

ロイター通信(6月20日付)によると、23ページからなる報告書は、約140回の聞き取り調査、写真、ビデオ、衛星画像、医療記録などをもとに作成されており、シリア軍による東グータ地方への攻撃や包囲による飢餓作戦が「人道に対する罪」にあたると指摘した。

具体的には、2013年4月にシリア軍によって包囲された東グータ地方は、「近代史のなかでもっとも長期間包囲を受け、中世の戦闘にも似た…消耗戦のなかで、戦闘員も市民を疲弊した…。(2018年2月から4月にかけて、シリア軍がロシア軍とともに行った同地方の奪還作戦は)極めて違法なもので…、東グータ地方の住民を処罰し、住民に降伏か餓死を迫るものだった…。市民が暮らす住宅地に対する大規模で体系的な砲撃、包囲を受ける市民に対する食糧や医療物資の継続的な供給拒否を通じて…、政府軍は人道に対する罪を犯した」と非難した。

報告書ではまた、イスラーム軍、シャーム自由人イスラーム運動(シリア解放戦線)、シャーム解放機構など、複数のテロ組織を含む反体制派の戦闘員約2万人が、シリア政府の包囲を受けていた地域内に立て籠もり、首都ダマスカスを砲撃、民間人数百人を死傷させたとし、こうした行為が「戦争犯罪」にあたると指摘した。

委員の一人ハニー・メガリー(Hanny Megally)氏は声明を出し、「親政権部隊が東グータ地方の市民を屈服させようとして、砲撃し、飢餓に追い込おうとしていたとしても、市民が暮らす首都ダマスカスの住宅地区への無差別攻撃は正当化されない」と述べた。

AFP, June 20, 2018、ANHA, June 20, 2018、AP, June 20, 2018、al-Durar al-Shamiya, June 20, 2018、al-Hayat, June 21, 2018、Reuters, June 20, 2018、SANA, June 20, 2018、UPI, June 20, 2018などをもとに作成。

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