カザフスタンの首都アスタナで28日に開幕したアスタナ11会議は、閉幕声明を発表し、2日間の日程を終了した。
声明は、ロシア、トルコ、イランの代表団、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表が同席するなか、カザフスタンのカイラット・アブドラフマノフ外務大臣によって読み上げられた。
声明の主な内容は以下の通り:
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アスタナ会議の保障国であるロシア、イラン、トルコは、シリアの主権、国土統一、ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線(シャーム解放機構)、そしてこれらとつながりのあるテロ集団根絶の努力の継続を確認する。
「テロとの戦い」を口実として新たな現実の創り出そうとするあらゆる試みを拒否する。
シリアの主権と国土統一を反故にしようとする分離主義的アジェンダを拒否する。
国連安保理決議第2254号に従い、シリア人が主導する政治的関係正常化プロセスのみをもってシリアの危機を解決する。
イドリブ県を中心とする反体制派支配地域での緊張緩和地帯設置にかかる合意、非武装地帯設置にかかる合意の遵守。
シリアでの化学兵器使用に関して、化学兵器禁止機関(OPCW)との連携のもと、透明性のあるプロフェッショナルな調査の実施を求める。
制憲委員会設置に向けた努力を集中させる。
シリア人の生活再建に向けた支援を継続し、国際社会、とりわけ国連や人権団体に、難民帰還を支援するよう呼びかける。
拉致被害者、失踪者に関する問題解決に向けた努力を集中させる。
なお、次回のアスタナ会議(アスタナ12会議)は2019年2月を目処に開催することも合わせて決定された。
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『ハヤート』(11月30日付)がロシアの複数の消息筋の話として伝えたところによると、制憲委員会の設置に関して、メンバー150人中の142人は確定しているが、残る8人をめぐって政府代表団と反体制派代表団の意見が分かれたままだという。
複数の反体制筋は、『ハヤート』(11月30日付)に対して「新しい結果はなかった。残る8人をめぐる対立はこれまで通りのもので、数ヶ月間続いている」と述べている。
デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表も閉幕に合わせて声明を出し、「制憲委員会設置をめぐって10ヶ月間続く膠着状態を克服するような具体的な進展がなかったことに対して強い遺憾の意」を示した。
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ロシアのアレクサンドル・ラヴレンティフ・シリア問題担当大統領特使は、イドリブ県にヌスラ戦線のテロリストが15,000人もいることは受け入れられず、国際社会に対して、多数のテロリストが化学兵器を保有し、民間人に対してこれを使用してきたことを訴えてきたとしたうえで、24日のアレッポ市に対する塩素ガス攻撃を欧米諸国が無視することを非難した。
ラヴレンティフ特使はまた、ロシアがイドリブ県での安定を確立しようとするシリア軍を全面支援すると強調した。
さらに、シリア国内での米国の違法な進駐への懸念を表明した。
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シリアの代表団を率いるバッシャール・ジャアファリー国連代表は、閉幕声明が発表された記者会見で、トルコが、非武装地帯設置合意を遵守せずに、テロリストが民間人を攻撃することを奨励していると非難した。
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SANA(11月29日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(11月29日付)、『ハヤート』(11月30日付)などが伝えた。
AFP, November 29, 2018、ANHA, November 29, 2018、AP, November 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, November 29, 2018、al-Hayat, November 30, 2018、Reuters, November 29, 2018、SANA, November 29, 2018、UPI, November 29, 2018などをもとに作成。
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