ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣兼副首相は、ダマスカス大学講堂で同大学の教員や学生を対象とした講演を行い、イドリブ県をテロから解放することが現下の最優先課題だと位置づけるとともに、シリア国内でいかなる「クルド政体」も認めないと強調した。
また、一部アラブ諸国による策略にもかかわらず、シリアがアラブ性(ウルーバ)を深く信仰しているとしたうえで、シリアを含むアラブ世界の混乱は、アラブ人による共同行動が麻痺しているためで、これを矯正する必要があると主張した。
講演は、スーダンのウマル・バシール大統領のシリア訪問に合わせて、シリア学生国民連合の執行部が依頼するかたちで実現した。
シリア北東部の情勢に関して、ムアッリム外務在外居住者大臣は「シリアで誰一人として、独立政体、あるいは連邦制について云々することを決して認めない。全国民に対してその両腕を拡げて迎え入れようとしている祖国への復帰以外にオルターナティブはない。シリア・アラブ共和国の隅々まで主権を回復するというのが国家の決定だ」と述べた。
ロシアとの関係については、ロシア・シリア通商経済科学芸術合同委員会の重要性を強調し、政治、軍事面だけでなく、経済、文化、社会面での戦略的関係を深化させることが必要だと述べた。
シリアに対して戦争をしかけ、策略をめぐらせている諸外国については、その政策の代償として失業、インフレ、政治・社会の分断などに苛まれており、米国の主導のもとにシリアに対して策略をめぐらせてきたすべての者にとって、来年は心地良いものとはならないだろうと主張した。
イドリブ県情勢に関して、シリア指導部にとって最優先課題が同地をテロ集団から解放することで、そのためにロシアとの連携を続けると述べる一方、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がソチでの合意(非武装地帯設置合意)を遵守していないと批判した。
政治対話については、イドリブ県からのテロの根絶をすることであればこれを推し進めるとしたうえで、シリア全土を解放することを指導部が決定していると述べた。
制憲委員会については、設置が遅れているなかで、その活動内容について話すのは時期尚早だと述べた。
復興については、「テロとの戦い」でシリアの国家を支えてきた国の参加が最優先で、外務在外居住者省経済局が現在、イラン、ロシア、中国、インド、マレーシアとの関係拡大を進めていると述べた。
西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)の活動やトルコによるシリア北部の占領、北東部への侵略については、シリアのクルド人はシリア社会の一部で、シリア政府は常に対話の用意があると述べた。
シリア国内の米国やトルコの進駐については、これらの国がシリア危機の政治的解決における役割を見つけ出そうとしているが、それは無理で、シリアの占領を終わらねばならないと述べた。
このほかゴラン高原返還の必要性、パレスチナ諸派との連携などについて語った。
SANA(12月17日付)が伝えた。
AFP, December 17, 2018、ANHA, December 17, 2018、AP, December 17, 2018、al-Durar al-Shamiya, December 17, 2018、al-Hayat, December 17, 2018、Reuters, December 17, 2018、SANA, December 17, 2018、UPI, December 17, 2018などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.