シリア軍がカフルヌブーダ町(ハマー県)で反体制武装集団戦闘員30人以上殲滅する一方、マアッラト・ヌウマーン市(イドリブ県)を爆撃、民間人12人が死亡(2019年5月22日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯第1ゾーンでは、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから23日目となる5月22日、シリア・ロシア軍が爆撃を実施、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団が激しく交戦した。

シリア人権監視団によると、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より114人(民間人23人、兵士・反体制武装集団戦闘員91人)増えて630人となった。

うち、204人が民間人(女性41人、子供39人を含む)、390人がシリア軍兵士および反体制武装集団戦闘員。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は80回、投下した「樽爆弾」の数は57発を記録、ロシア軍戦闘機も爆撃を行った。
また、シリア軍地上部隊が発射した砲弾は530発以上にのぼった。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でフバイト村に5回、ハーン・シャイフーン市およびその一帯に5回、サラーキブ市に4回、マアッラト・ハルマ村とその一帯に3回、カフルサジュナ村に3回、ジスル・シュグール市、アービディーン村、スフーフン村、バーラ村、イシュタブリク村、シャイフ・ムスタファー村、アイン・ラールーズ村一帯、マガッル・ハマーム村、アリーハー市、カフルルーマー村一帯、アミーカ村、トゥラムラー村にそれぞれ2回の爆撃を行う一方、ヘリコプターがフバイト村に「樽爆弾」12発、アービディーン村、バアルブー村、スフーフン村にそれぞれ2発を投下した。

ロシア軍もマアッラト・ヌウマーン市に対して爆撃を行った。

シリア軍はまた、地上部隊がハーン・シャイフーン市、マアッラト・マーティル村、マアッラト・ハルマ村、アルマナーヤー村、ダイル・サンバル村を砲撃した。

同監視団によると、シリア軍戦闘機によるマアッラト・ヌウマーン市への爆撃で子供1人を含む民間人12人が、サラーキブ市への爆撃で民間人5人が、ジスル・シュグール市への爆撃で子供1人が、マアッラト・ハルマ村への爆撃で民間人2人が、シリア軍ヘリコプターによるスフーフン村への「樽爆弾」での爆撃で民間人1人が死亡した。

一方、SANA(5月22日付)によると、シリア軍がシリア政府支配下の県北部への攻撃を続けるシャーム解放機構などの反体制武装集団と交戦した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカフルヌブーダ町およびシャフシャブー山一帯に30回、ムーリク市、シール・マガール村、ハウワーシュ村にそれぞれ2回の爆撃を行う一方、ヘリコプターがカフルヌブーダ町とその一帯(シャフシャブー山一帯)に「樽爆弾」27発、アンカーウィー村、フワイジャ村にそれぞれ3発、マイダーン・ガザール村に2発を投下した。

シリア軍はまた地上部隊がカフルズィーター市、ラターミナ町、アルバイーン村、ザカート村、シャフルナーズ村、サフリーヤ村、マイダーン・ガザール村、フワイジャ村、アンカーウィー村、ザクーム村を砲撃、反体制武装集団もスカイラビーヤ市各所を砲撃した。

同監視団によると、シリア軍戦闘機によるハウワーシュ村への爆撃で民間人1人が死亡した。

また、カフルヌブーダ町では、シリア軍が敷設した地雷の爆発により、イッザ軍などの反体制武装集団の戦闘員17人が死亡した。

さらにシャフシャブー山に面するガーブ平原、カフルヌブーダ町などでのシリア軍との戦闘で反体制武装集団の戦闘員18人が死亡した。

戦闘ではシリア軍側も15人が死亡した。

一方、SANA(5月22日付)によると、シリア軍がシリア政府支配下の県北部への攻撃を続けるシャーム解放機構などの反体制武装集団と交戦した。

他方、イッザ軍司令官のムスタバー・バックール大佐はドゥラル・シャーミーヤ(5月22日付)に対して、カフルヌブーダ町内の複数拠点を解放することに成功し、シリア軍戦車、装甲車などを破壊したと主張した。

国民解放戦線報道官のムスタファー・ナージー大尉も、ドゥラル・シャーミーヤ(5月22日付)に対して、カフルヌブーダ町での戦闘でシリア軍戦車複数輌を破壊したと主張した。

シャーム解放機構も同地でシリア軍装甲車を破壊したと主張している。

なお、シャーム解放機構は、カフルヌブーダ町を制圧したと発表したが、ロシア国防省はこれをただちに否定した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカッバーナ村に2回の爆撃を行う一方、ヘリコプターも同地に「樽爆弾」4発を投下した。

また、同地ではシリア軍と反体制武装集団が交戦、シリア軍兵士4人が死亡した。

シャーム解放機構に近いイバー・ネット(5月22日付)によると、シリア軍はカッバーナ村近郊のクナイバ丘の攻略を試みたが、シャーム解放機構が撃退、多数の兵士を殺傷したという。

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アレッポ県、シリア人権監視団によると、シリア軍がダクマーク村を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を18件(アレッポ県1件、ラタキア県11件、ハマー県6件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を12件(アレッポ県1件、ラタキア県2件、ハマー県9件)確認した。

AFP, May 22, 2019、ANHA, May 22, 2019、AP, May 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 22, 2019、al-Hayat, May 23, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 22, 2019、Reuters, May 22, 2019、SANA, May 22, 2019、Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, May 22, 2019、SOHR, May 22, 2019、UPI, May 22, 2019などをもとに作成。

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