イドリブ県に対するシリア・ロシア軍の爆撃、シリア軍と反体制派の砲撃戦が再び激化(2019年6月5日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから36日目となる6月5日も、シリア・ロシア軍が爆撃を実施、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団が交戦した。

シリア人権監視団によると、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より23人(民間人10人、シリア軍兵士4人、反体制武装集団戦闘員9人)増えて1,121人となった。

うち、351人が民間人(女性73人、子供80人を含む)、770人がシリア軍兵士(324人)および反体制武装集団戦闘員(446人)。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は114回、投下した「樽爆弾」の数は14発を記録、ロシア軍戦闘機も26回の爆撃を実施した。

また、シリア軍地上部隊による砲撃は650発におよぶ一方、反体制武装集団も360発の砲撃を行った。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカフルズィーター市、ラターミナ町に爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでサイヤード村に「樽爆弾」を投下した。

ロシア軍もカフルズィーター市、サハーブ村、サフリーヤ村を爆撃した。

爆撃により、ムーリク市で女性1人が死亡、アンカーウィー村の農地で火災が発生した。

これに対して、反体制武装集団は、シリア政府支配下のカルアト・マディーク町、カフルヌブーダ町、タッル・フワーシュ村、ムハルダ市、タッル・ミルフ村、ジャビーン村、ハマーミーヤート村、ジューリーン村を砲撃した。

これに関して、新興のアル=カーイダ系組織フッラース・ディーン機構、アンサール・ディーン戦線、アンサール・タウヒード、アンサール・イスラーム集団からなる「信者を煽れ」作戦司令室が声明を出し、ヒルバト・ナークース村一帯に進攻しようとしたシリア軍を撃退したと発表した。

一方、SANA(6月5日付)によると、反体制武装集団がシリア政府支配下のムハルダ市の住宅街を砲撃し、民家やインフラが被害を受けた。

これに対して、シリア軍は、ザクーム村、クライディーン村、ザカート村、ハスラーヤー村一帯にあるイッザ大隊(イッザ軍)、シャーム解放機構の拠点を重点的に砲撃した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でマアッラト・ハルマ村、カフル・ウワイド村、マアッラト・スィーン村、ハザーリーン村、アルバイーン山、スフーフン村、カンスフラ村、イフスィム村、ダイル・サンバル村、フィキーア村、カフルナブル市一帯、ハーン・シャイフーン市、トゥラムラー村、シャイフ・ムスタファー村、ウライニバ村、カルサア村に爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでラカーヤー・サジュナ村、フバイト村、アービディーン村に「樽爆弾」を投下した。

ロシア軍もタッルアース村、マアッラト・ヌウマーン市、フバイト村、トゥラムラー村を爆撃した。

爆撃により、マアッラト・ヌウマーン市で女性1人と子供2人が、カフル・ウワイド村で女性1人が死亡、またアミーカ村の農地で火災が発生した。

またシリア軍は地上部隊が、カフルサジュナ村、カフルナブル市を白リン弾などで砲撃し、カフルナブル市内では火災が発生した。

これに対して、反体制武装集団は4日にシリア政府が制圧したカッサービーヤ村に砲撃を加えた。

これに関して、トルコの支援を受ける国民解放戦線が、カッサービーヤ村の前線でシリア軍の57ミリ砲を地対地ミサイルで破壊したと発表、その映像を公開した。

一方、SANA(6月5日付)によると、シリア軍がハーン・シャイフーン市一帯、トゥラムラー村、ナキール村でシャーム解放機構の拠点を重点的に砲撃した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカッバーナ村一帯に爆撃を実施、地上部隊が同地一帯を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を18件(アレッポ県2件、ラタキア県10件、ハマー県6件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を9件(イドリブ県1件、ハマー県8件)確認した。

AFP, June 5, 2019、ANHA, June 5, 2019、AP, June 5, 2019、al-Durar al-Shamiya, June 5, 2019、al-Hayat, June 6, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, June 5, 2019、Reuters, June 5, 2019、SANA, June 5, 2019、SOHR, June 5, 2019、UPI, June 5, 2019などをもとに作成。

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