アル=カーイダと自由シリア軍の連合部隊がシリア軍との戦闘の末にハマー県北部の戦略的要衝ハマーミーヤート村を奪還(2019年7月10日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから70日目となる7月10日、シリア・ロシア軍は爆撃を継続、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団が交戦した。

シリア人権監視団によると、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より115人(民間人14人、シリア軍兵士32人、反体制武装集団戦闘員21人)増えて2,344人となった。

うち、606人が民間人(女性123人、子供155人を含む)、830人がシリア軍兵士、908人が反体制武装集団戦闘員。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は72回を記録、ヘリコプターが「樽爆弾」50発を投下、ロシア軍も22回の爆撃を行った。

またシリア軍の地上部隊による砲撃は550発におよんだ。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でジスル・シュグール市およびその一帯、アルバイーン山、ハーン・シャイフーン市、カフルサジュナ村、ラカーヤー村、シャイフ・ムスタファー村、バーブーリーン村、ヒーシュ村、バスィーダー村、アリーハー市、タッル・マンス村、タッル・マルディーフ村、サラーキブ市およびその一帯に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでハーン・シャイフーン市、タマーニア町、カフルルーマー村、カニーサト・ナフラ村、バシュラームーン村に「樽爆弾」を投下した。

ドゥラル・シャーミーヤ(7月10日付)によると、シリア軍の爆撃により、ジスル・シュグール市で民間人6人が死亡した。

シリア人権監視団によると、シリア軍はまた、地上部隊が無人大隊基地一帯、ライヤーン村、シャイフ・イドリース村、ブジュガース村を砲撃した。

ロシア軍もカフルルーマー村、マアッラト・ヌウマーン市一帯、カフルサジュナ村、シャイフ・ムスタファー村、スィフヤーン村、マアッラト・ハルマ村およびその一帯を爆撃した。

ドゥラル・シャーミーヤ(7月10日付)によると、ロシア軍の爆撃は、マアッラト・ハルマ村の避難民キャンプにも及び、女児1人を含む民間人3人が死亡した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でクルド山に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでカッバーナ村一帯に「樽爆弾」を投下した。

ロシア軍もカッバーナ村一帯を爆撃した。

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ハマー県では、ドゥラル・シャーミーヤ(7月10日付)、イナブ・バラディー(7月10日付)などによると、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構、トルコの後援を受けるいわゆる自由シリア軍の国民解放戦線、米バラク・オバマ前政権の支援を受け、「革命のサヨナキドリ」ことアブドゥルバースィト・サールート氏も参加していたイッザ軍などからなる「必勝」作戦司令室がシリア軍との激戦の末、戦略的要衝のハマーミーヤート村およびハマーミーヤート丘を制圧した。

反体制派が同地を奪還するのは2カ月ぶり。


ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカフルズィーター市に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでサルマーニーヤ村、カフルズィーター市に「樽爆弾」発を投下した。

またシリア軍は地上部隊がタッル・ミルフ村、ジャビーン村、ハマーミーヤート村、ムーリク市、ハウワーシュ村、フワイジャ村、アルバイーン村、ジャイサート村、サフル丘、ハスラーヤー村を砲撃した。

一方、SANA(7月10日付)によると、シャーム解放機構がシリア政府支配下のスカイラビーヤ市を砲撃し、民間人2人が死亡、2人が負傷した。

シリア軍はこの攻撃に対して、ただちに反撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がザンマール町、ジャズラーヤー村を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を2件(アレッポ県1件、ラタキア県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を8件(ハマー県6件、アレッポ県1件、イドリブ県1件)確認した。

AFP, July 10, 2019、ANHA, July 10, 2019、AP, July 10, 2019、al-Durar al-Shamiya, July 10, 2019、‘Inab Baladi, July 10, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, July 10, 2019、Reuters, July 10, 2019、SANA, July 10, 2019、SOHR, July 10, 2019、UPI, July 10, 2019などをもとに作成。

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