アサド大統領は中国の鳳凰衛視の単独インタビューに応じる「復興には中国などからの投資が必要」(2019年12月16日)

アサド大統領は中国の民間衛星テレビ局「鳳凰衛視」(フェニックス・テレビ)(12月16日付)の単独インタビューに応じた。

インタビューは約25分に及び、アラビア語で行われ、大統領府、SANAなどを通じても配信された。

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:

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「我々は実際のところ、復興を開始するために、戦時段階の終了、ないしは克服を待ってはいない。既に復興は、大規模地域、小規模地域、村、都市のいずれであれ、どの地域でも解放されればただちに始まっている。復興は幾つかの段階を通じて始まっている。第1段階は、インフラ建設、あるいはインフラ再建だ。これは、特に水道、電気といった分野で進められる。続いて学校、医療センター、病院の復興に映る。だが、復興においてもっとも重要で、これらの次に行われ、我々にとってもっとも大きな挑戦となるのが、とりわけ経済面での生活モデルの再建だ。これには多大な努力、そして内的、外的な環境整備が必要だ。こうした環境は復興に悪影響を及ぼし、復興を遅らせることがある。西側諸国がシリアに対して科している制裁がそれだ。つまり、復興は始まっているが、国内外からのさらなる投資が必要なのだ」。

「中国は特に、復興分野での支援を提供してくれている。だが、人道分野を中心にだ…。中国を含めた友好国と、過去数年間に、復興について大規模な対話はなされていなかった。治安状況が復興プロセスを大規模に開始するのに適切ではなかったからだ。だが、ほとんどの地域が解放された今、我々は中国の多くの企業とこの問題について対話を開始した…。経済生活の再建についても、我々は中国の企業が、研究調査、そしてシリアの市場調査を行うことを希望している…。投資機会を検討すべきだ。周知の通り、戦争で部分的、ないしは完全に破壊された国の復興では、投資分野で大きな収益を上げることができる。債務や無償援助だけでなく、投資が利益をもたらす…。だが、投資関連企業や投資家の間では、(欧米諸国の)制裁対象になることへの懸念が残っている。我々は今、限定的ではあるがシリアの市場に安全に参入する方法を見出している。もちろん、その中身については明らかにしないが、それはシリアの復興プロセスに寄与することになる。こうした支援は単に経済に限られてないと明言したい。なぜなら、復興について話す時、それは二つの理由でシリアの安定に貢献することになるからだ。第1は、難民の帰国だ…。そして第2は、武装勢力やテロリストと活動してきた労働力…との関係の正常回復だ。彼らが武器を棄て、日常生活に復帰すると決心した場合、働く機会が必要となる。中国や友好国がこの分野で貢献することの重要性は、シリアでの安定回復やテロとの戦いで軍事的に貢献することの重要性と同じなのだ」。

「どの投資家にとってもまず必要なのは安全だ…。これについては、我々はテロリストと戦い、地域を次々と解放することで日々取り組んでいる。投資環境について言うと…、我々は二つのことを行っている。第1は、火急の課題として行われているもので、まずは透明性を確保し、投資家の権利、そして義務を明確にすることで…投資環境を改善するというものだ…。だが、より重要で包括的な(第2の)措置として、投資法を検討しなければならない。これに関しては、投資法を世界の多くの国にある投資法と同じようなへと改善し、投資に関する国際基準を満たすため、多くの段階に踏み込んできた。この法は投資家がシリアで投資を行うにあたっての保障を明確に規定している。法的保障、財務上の保障、免除…、税務などだ…。我々はこの法律(改正)の最終段階にあり、それは近く施行されるだろう」。

「(中国の投資家がシリアへの投資を行うにあたって)二つの障害が残っている。第1は、シリアと中国の間には、送金を行うための効率的な緊急チャンネルがないことだ。この問題の根本原因の一つは制裁だ…。投資家がシリアに来ようとする場合、この点を解決する策を案出しなければならない。両国の金融機関で解決しなければならない。それにや二国家レベルでの議論や対話が必要だ」。

「第2点は、中国の多くの企業が抱いている懸念だ…。かつては、どの中国の専門家もシリアに来ることに大きな懸念を抱いてきた。この問題は最近になって改善され始めている…。だが、中国資本の投資について話す場合、さらなる安心感を与える必要がある。我々は国家として多くの努力を払っており、中国の国歌、関係機関、投資を保証する機関にも投資家にシリア行きを奨励するよう期待している」。

「それ(一帯一路)について戦略面の話をするのなら、それは世界レベルでの戦略の変化、国際関係の質の変化だと言いたい。世界の現状を見ると、世界を支配しているのは米国を初めとする西側の覇権確立に向けた試みだ…。それは国家どうしの紛争の段階でもある。この紛争は、対立し合う局覇権の程度、とりわけ西側が自らの利益を実現するためそれ以外の局にどの程度覇権を及ぼすかによって左右されてきた…。諸国民はより強大な国々の奴隷と化していた。だが今は、新たな超大国が出現した。中国だ。中国は世界にその影響を拡大しようと試みている。だが、どのような影響力だろう? 我々が考えているような悪い意味での影響力ではなく、友好関係や共通の国益に基づく影響力だ。我々がシリク・ロードの一部をなしていると考える時、シリアは、国際的な基準においても、地理、人工、経済、軍事面でも小国に過ぎないが…、シルク・ロードのうえに位置している。だが、それ以上に重要なのは、この新たな道(一帯一路)が歴史に由来していて、しかも21世紀に対応しているということだ。この道は絶え間なく続く道なのだ」。

「我々はこの道の一部をなす時、中国は、小国に対峙する大国としてではなく、我々と絶え間なく関わってくれる。そこには共通の利益がある。中国、シリア、そしてこの道が通るすべての国に利益をもたらす…。それは文明に基づく関係、文化に基づく関係であり、反映、投資、社会・経済・治安状況の改善をこれらの国にもたらす。そしてそれは世界がさらに安定することを意味する」。

「戦争の最初の数年は、安定が亡かったために、それ(一帯一路への関与)は我々の優先事項ではなかった…。今は、こうした段階を克服し、安定を始め、シリアの経済も動き出している。今年になって、我々は中国政府と、シリアがどのようにシルク・ロードの一部となるかについての真剣な対話を始めた…。インフラについての教義も最近になって始まった。それはシリアが将来、シルク・ロードの一部をなすうえでもっとも重要な要素の一つだ。我々は多くのプロジェクトを最近数ヶ月の間に提示した」。

「(ドナルド・)トランプ(米大統領)について話したインタビューのなかで、私は、彼がより透明性を持っているがゆえにましだ、と言ったことがある。もちろん、まし、というのは良いという意味ではないが、透明性は良いものだ。なぜなら、とくに西側の政策は、世界に対して自らの真意を隠す仮面で覆われていることに慣れさせられてきたからだ。我々は米国の政治システムが我々が理解しているような国家のシステムではないことを知っておかねばならない。ロビー・システムとでも言うものだからだ。米国を支配しているのは、石油であれ、武器であれ、銀行であれ、それ以外のものであれ、資本のロビーだ…。大統領に善意があろうが、かれはロビー・ポリティクスから逸脱はできない…。私は米国の政策が今後数年間は変わらないと考えている…。だから、我々はは、誰が米大統領になり、誰が退くかは考慮はしない」。

「(トランプ米大統領によるシリア駐留部隊の撤退決定と部隊の残留に関して)それは(米国の)政策がロビーによって支配されていると私が指摘しているものを再認識させるものだ。同時に、この国は原則によってではなく、企業の利益によって支配はされていないということも分かる。その利益とは、油田を占領し、石油を盗み、販売するというものだ。この国、そしてこの体制は、国際法、さらには自国の法律を顧みずに企業のために行動するだろう」。

「米国は(シリアに駐留する米軍部隊が)数千人、あるいは数百人だと発表している。数千人と言う場合、それは戦争を支持しているロビーに向けて言っているのであって…、数百人という言う場合、戦争に反対する人々に話している…。しかし、真実はいずれの数字でもない。理由は簡単だ。この数字が仮に正しいとしても、それは米軍兵士の数を指しているに過ぎず、米軍とともに戦闘している者の数は示していないからだ。米政権はイラクなどでブラック・ウォーター社などの民間企業に多く依存している。シリアに数百人の兵士がいるという場合、こうした企業によって雇用されている数千、あるいは数万人の民間人もおり、シリア国内で戦闘を行っていることになる。だから本当の数を知るのは困難だ。だが、数千人いることは確実だ」。

「米国が来る前、ヌスラ戦線(シャーム解放機構)が最初にこれらの油田に投資をしていた。ダーイシュ(イスラーム国)がやって来て、ヌスラ戦線が去った後…、ヌスラ戦線は実際には去ったのではなくて、ダーイシュが吸収して、ダーイシュを名乗るようになったのだが…、そのときダーイシュも石油を盗み、密売した。どこへ? トルコを経由して密売されていた。今日、アメリカは石油を盗み、トルコに売りさばいている。トルコはこれらのグループと石油の密売における共犯者だ」。

「ほとんどの油田が今もテロ組織の支配下、法の支配の外にあり、米国の指揮下に置かれている。石油に関して言うと、状況は現時点でもあまり変わっていない」。

「まず、米国はテロリストに依存しているので、テロリストに打撃を与えなければならない。これがシリアにおける我々の最優先課題だ。テロリストに打撃を与えれば、米国のプレゼンスは弱まる…。そのうえで、米国の支配下にあるシリアのグループを、対話を通じて…説得しなければならない。祖国のゆりかごに復帰し、全土解放に向けた努力に参加することが皆の利益なのだ。そうなれば…、大衆的な抵抗が生じ…、米国は結果出て行くことになるだろう」。

「(イラク、レバノン、イランでの抗議デモに関して)近隣諸国は我々に直接の影響を及ぼす…。だが、同時に中東は一つの地域で、その社会構成は類似しており…、隣接していなくともそれぞれの国の利益は結びつき合っている…。こうした運動(抗議デモ)が市民が被っている問題を対処するための運動であるなら、それは経済、政治などの状況を改善することに繋がるだろう。こうした影響は良いものだと言える。だが、論理的に考えた場合、西側諸国、とくに米国はこうした国が自発的に動くことを放っておくだろうか? おそらく介入し、利用することで、混乱を創り出そうするはずだ。なぜなら、イラク戦争以降…の米国の政策は、いわゆる「建設的カオス」を作り出そうとしてきたからだ」。

AFP, December 16, 2019、ANHA, December 16, 2019、AP, December 16, 2019、al-Durar al-Shamiya, December 16, 2019、Reuters, December 16, 2019、SANA, December 16, 2019、SOHR, December 16, 2019、UPI, December 16, 2019、鳳凰衛視, December 16, 2019などをもとに作成。

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