2011年11月27日のシリア情勢

アラブ連盟の動き

アラブ連盟外相会議で対シリア経済制裁決議が19カ国の承認で可決された。

カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、イラクが採決で態度を「保留」、制裁には加わらないだろうと述べた。

また加盟資格停止中のシリアは採決には参加できず、レバノンも採決には参加しなかった。

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アラブ連盟外相会議での対シリア経済制裁決議の骨子は以下の通り:

1. シリア政府高官のアラブ諸国への渡航禁止およびアラブ諸国内の資産凍結。制裁対象はカタールが議長を務める実行委員会が決する。
2. シリア中央銀行との取引停止。
3. シリア政府との政府間の貿易取引の停止。ただしシリア国民に影響を及ぼす戦略物資は除外する。
4. シリア政府の資産凍結。
5. シリア・アラブ共和国との金融取引停止。
6. シリア商業銀行とのすべての取引の停止。
7. アラブ諸国の中央銀行とシリア中央銀行と間で行われている政府間貿易取引への融資停止。
8. アラブ諸国の中央銀行による銀行振込、債権取引の監視要請。ただしシリアの通貨による外国からの家族送金、シリア国内のアラブ諸国国民への送金は除外する。
9. アラブ諸国によるシリア国内でのプロジェクトへの融資の凍結。
10. シリアへの航空機乗り入れに関して、決議発動から1週間以内に実行技術委員会が閣僚委員会に対して、乗り入れ停止の期日を確定するための報告書を提出する。
11. 関連事項の実施状況のフォローアップをアラブ民間航空委員会とアラブ通貨基金に委任する。
12. シリア国内のアラブ関連機関、国際期間、アラブ連盟関連本部および職員は制裁から除外する。
13. 議長国カタールのもと、ヨルダン、アルジェリア、サウジアラビア、スーダン、オマーン、エジプト、モロッコ、そして連盟事務局の高官および専門家による技術実行委員会を設置し、シリア国民および周辺諸国民に直接の影響を及ぼす人道物資の除外を検討する。
14. 事態の進捗状況をフォローアップするため閣僚会議を会期中とする。

全文はhttp://international.daralhayat.com/internationalarticle/333414を参照。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、制裁決議に関して、「シリア政府が我々のメッセージを理解することを望む。そうすれば我々の問題は内輪で解決されるだろう」と述べた。

また「シリア政府が民間人を殺害し、無実の人々を弾圧するのに大使、トルコもアラブ連盟も沈黙を続けるなど誰も期待できない」と脅迫した。

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複数のアラブ外交筋によると、少なくともアルジェリアとオマーンが性急な制裁発動が、シリア政府でなく国民に災難をもたらすと警鐘をならした。

しかしカタールを中心とする制裁支持諸国は、シリア国民への被害を軽減するための手段やしくみを検討しつつ、段階的であっても制裁を発動する必要があるとの立場を貫いた。

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アラブ連盟の動きが外国の干渉を助長するとのシリア政府の批判に関してハマド首相は、「我々が行っていることすべてが外国による解決を回避すること」とし、「我々が真剣に対処しなければ、外国の干渉がないと保障することはできない」と述べた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、「我々の最大の関心事はシリア国民への制裁の影響をどのように回避するかにある」と述べた。

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これに対して、ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣は、『ハヤート』(11月28日付)に、シリアの近隣諸国から多くの意見が出されたことで、フォローアップ実行技術委員会が発足したことを明らかにした。

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UAEのアブドゥッラー・ビン・ザーイド外務大臣は、「シリアへの外国の介入はアラブ連盟においてそもそも提起されていない」と述べた。

アサド政権の動き

SANA, November 27, 2011

SANA, November 27, 2011

SANA, November 27, 2011

SANA, November 27, 2011

SANA, November 27, 2011

SANA, November 27, 2011

SANA(11月27日付)は、ダマスカス県、ラタキア県ラタキア市、タルトゥース県タルトゥース市など各地でアサド政権主導の改革支持、アラブ連盟の介入拒否を訴える大規模集会が開催されたと報じた。同集会は日中に開催されていたこれまでのアサド政権支持集会とは異なり、晩にまで及んだ。

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『バラドナー』紙のバッサーム・ジュナイド編集長は、シャームFM(11月27日付)とのインタビューで情報大臣の辞任を求めた。

『バラドナー』紙はバアス党内の汚職を非難する記事を掲載した記事を掲載した号を公刊しようとしたが、検閲を受け、同号は発禁処分となっていた。

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反体制勢力の動き

シリア国家建設潮流が声明を出し、アラブ監視団派遣に関する議定書へのシリア政府の署名拒否を、国が置かれている危機を解消しないための口実を探し、反体制勢力の根絶のための時間稼ぎを行っていると非難した。

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シリア国民評議会はアラブ連盟閣僚会議での対シリア経済制裁決議採択に関して声明を出し、「体制の敗北」、「体制孤立化への重要なステップ」とみなすと評価した。

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UPI(11月27日付)は、エジプト在住の反体制活動家、サーイル・ナーシフ氏の妻(エジプト人)で、同氏が「シャッビーハ」に誘拐されたと発表していたムナー・アブドゥルワッハーブさんが無事発見されたと報じた。

Kull-nā Shurakā, November 27, 2011

Kull-nā Shurakā, November 27, 2011

同報道によると、ムナーさんは気を失い、路上で倒れていたという。

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国内で反体制活動を行うシリアのための第三潮流は声明を出し、アラブ連盟外相会議による対シリア経済制裁発動の決定が、シリアの危機の政治的正常化に向けた努力に資さない、と非難した。

反体制運動掃討

ヒムス県では、SANA(11月27日付)によると、ヒムス市で武装テロ集団が10歳の少年(サーリー・サーウードくん)を射殺したと家族が証言したと報じた。同少年に関しては、アラブ諸国の衛星放送がシリア軍によって射殺したと報じていた。

またヒムス市ワルシャ地区で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、指名手配者11人を殺害、多数を逮捕し、大量の武器を押収した。また市内の別の地区でも交戦し、3人を殺害、大量の武器を押収した。

一方、シリア人権委員会によると、ランクース村で発生した反体制デモに治安部隊が介入、弾圧し、5人が死亡、少なくとも15人が負傷した。

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イドリブ県では、SANA(11月27日付)によると、マアッルシューリーン村とガドファ村間で武装テロ集団が石油パイプラインの警備員を襲撃、交戦があったと報じた。同報道によると、これにより武装テロ集団のメンバー1人が死亡、1人が負傷し、彼らの武器が押収された。

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ダマスカス県では、シリア人権委員会によると、ルクンッディーン区、サーリヒーヤ区で治安組織による活動家逮捕、家宅捜索がなされた。

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ハマー県では、SANA(11月27日付)によると、破棄裁判所顧問のファーイズ・アスカル氏がハマー市で武装テロ集団に誘拐された

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シリア人権国民機構のアンマール・カルビー所長は声明を出し、11月27日の死者数が40人に上ったと発表した。

同声明によると死者はヒムス県で16人、ダマスカス郊外県で14人、イドリブ県で2人、ハマー県で4人、ダイル・ザウル県で3人、タルトゥース県で1人。

レバノンの動き

レバノンの北部県トリポリ市でムスタクバル潮流が「武器の秋…独立の春」と題した大規模集会を開催し、数十万人を動員した。

集会では、ムスタクバル潮流幹部や3月14日勢力の幹部が出席し、アサド政権による反体制デモ弾圧と、レバノン特別法廷をめぐるレバノン国内の対立激化を絡めて、ヒズブッラーや自由国民潮流を酷評した。

ムスタクバル潮流のムハンマド・カッバーラ議員は、「レバノンにおけるアサドのヘゲモニーは転覆させられねばならない」と述べ、「この政府(ナジーブ・ミーカーティー内閣)はレジスタンスとは無縁だ、なぜならシリア国民を攻撃するために狙撃手をシリアに派遣する者はレジスタンスなどではないからだ」と述べた。

同じくムスタクバル潮流のサミール・ジスル議員は、「彼らは、人々があらゆる専制者よりも強く、警察国家が人々の意思によって倒されるということをベイルートの春(独立インティファーダ)から学ばなかったのか」と述べ、レバノン特別法廷への資金供出を拒否しようとするヒズブッラーや自由国民潮流を非難した。

Naharnet, November 27, 2011

Naharnet, November 27, 2011

民主会合ブロック代表のマルワーン・ハマーダ議員は「私はヒズブッラーが倒れること、政府が転覆することを残念だとは思わないだろう。私はアサドの犯罪体制を決して許さない…」と述べた。そのうえでヒズブッラーと自由国民潮流を「全体主義という巨大な刑務所を構成する」と非難し、ミシェル・スライマーン大統領、ミーカーティー首相、そしてナビーフ・ビッリー国民議会議長に「レバノンが巨大な刑務所に囚われないよう」行動することを求めた。

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AFP(11月27日付)によると、アッカール郡シャイフ・アイヤーシュ村を車で通過した近くのアラウィー派の村落住民が村人2人をはね、村の10代の少年1人(スンナ派)が死亡した。車で通過したアラウィー派の運転手もその後村人に殴られ、負傷し、病院に搬送されたという。

アラウィー派の運転手は、シャイフ・アイシャーシュ村の住民がトリポリ市での集会に参加しようとするのを阻止しようと挑発したという。

少年殺害に抗議し、シャイフ・アイシャーシュ村が道路を封鎖したが、警察・治安部隊が排除した。

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NNA(11月27日付)によると、アラウィー派が多く住むトリポリ市のジャバル・ムフスィン地区で、市内でのムスタクバル潮流の集会での祝砲によって、3人が負傷した。

これに関して、アラウィー派政党のアラブ民主党は、3人のうちの1人が集会の参加者がジャバル・ムフスィン地区に撃ち込んだ砲弾で負傷したと発表した。

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AFP(11月27日付)によると、集会参加者が打った祝砲でスンナ派1人が負傷したと報じた。

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AFP(11月27日付)によると、トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区とバーブ・タッバーナ地区を分けるバアル・ダルウィーシュ地区に手榴弾が投げ込まれた。

諸外国の動き

ヨルダン政府は、シリア人避難民がヨルダン国内国境のラムサーに避難したのを受けて、シリア、ヨルダン両軍が交戦したとの一部情報を否定した。

ヨルダンのラーカーン・マジャーリー情報通信担当大臣は、『ハヤート』(11月28日付)に対して、シリア国境警備隊がシリア人家族が午後4時にヨルダンへの違法な越境を試みた家族(3人)に発砲したと述べた。

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カタールとバハレーンの外務省は、国民に対してシリアからの退避を勧告した。

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カタールのドーハで、シリア人労働者数千人が反体制デモを行った。

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エジプトのナセル主義アラブ民主党使節団がシリアを訪問し、アサド政権支持を表明した。一方同党のムハンマド・アブー・アッラー党首は、カイロでシリアの反体制勢力の使節団と会談し、シリア国民評議会を承認すると述べた。

AFP, November 27, 2011、Akhbār al-Sharq, November 27, 2011、al-Ḥayāt, November 28, 2011、Kull-nā Shurakā, November 27, 2011, November 28, 2011、Naharnet,
November 27, 2011、NNA, November 27, 2011、Reuters, November 27, 2011、SANA,
November 27, 2011、UPI, November 27, 2011などをもとに作成。

 

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