Contents
アサド政権の動き
SANA(12月20日付)は、シリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が会合を開き、大統領候補者の立候補資格、大統領の任期について審議したと報じた。
同報道によると、立候補資格はシリアに10年以上居住し、40歳以上で、シリア人を両親に持つ、2割以上の国会議員の支持といった条件が盛り込まれるという。
また任期は7年という案が有力だが委員の間で意見の一致には至っていない。
また立法機関の名称に関して、「人民議会」、「代議員議会」、「人民代議員議会」、「民族議会」などの呼称が候補となり、継続審議となった。
『クッルナー・シュラカー』(12月21日付)が地元各紙の報道として伝えたところによると、委員会メンバーの一人で反体制活動家のカドリー・ジャミール氏(人民変革解放人民戦線議長)は、会合への報道関係者の傍聴を求めたが、傍聴は最初の10分しか認めらず、議事は非公式なかたちで進められた。
**
アサド大統領は武器の密輸者らに対する厳罰を定めた2011年法律第26号を発した。
同法律は、武器密輸を行った者に対して15年の懲役刑、密売やテロ行為を目的として武器密輸を行った者に対して無期懲役刑を科すことを定めているほか、テロ行為目的で武器を提供・配給した者およびその共犯者に対しても同様の処罰を科している。
http://www.sana.sy/ara/2/2011/12/20/389447.htm
**
『バアス』(12月20日付)は、アーディル・サファル首相が関係機関に対して2012年度の歳出を25%削減するよう指示したと報じた。
反体制勢力の動き
シリア国家建設潮流は声明を出し、アラブ監視団派遣に関するシリア政府とアラブ連盟の合意に関して、「政権による暴力を抑止し、闘争を平和的な政治闘争とする」には「ささいなチャンス」ではあるが、「シリアのインティファーダにとっての成果」とみなしえると評価した。
そのうえで、流血停止、国際問題化回避、平和的な政治解決を実現するため、すべての個人、勢力が「国民的責任」を負うよう呼びかけた。
反体制(武装)運動
軍・治安部隊がイドリブ県、ヒムス県、ダルアー県での脱走兵(離反兵)の潜伏先に対する作戦を強化した。
**
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山に近いカフル・ウワイド村、ファッティーラ村間のトルコ国境地域で軍と脱走兵(離反兵)の間で激しい戦闘があり、軍が脱走兵約100人を包囲し、多数が死傷した。
シリア人権監視団によると、カフル・ウワイド村では活動家多数を含む市民数十人が軍・治安部隊に包囲された。
**
シリア革命総合委員会は、ダルアー県、ヒムス県(うちヒムス市で6人)、ハマー県、イドリブ県などで合わせて25人が殺害された。
またハサカ県では士官1人を含む脱走兵(離反兵)8人が殺害された。
シリア人権監視団によると、軍と脱走兵との戦闘に加えて、民間人3人が殺害された。
複数の活動家によると、イドリブ県、ヒムス県で民間人2人が殺害され、ダマスカス県・ヒムス市間の幹線道路に検問所が多数設置された。
彼らによると、ヒムス市上空に戦闘機が旋回しているというが、その任務が市民の脅迫は通常の訓練かは定かでない。
**
複数の活動家・目撃者によると、アレッポ県アレッポ市のサラーフッディーン地区、サーフール地区など各地区および同市郊外、ハマー県ハマー市のハミーディーヤ地区および同市郊外で反体制デモが発生した。
**
一方、SANA(12月20日付)によると、ハマー県で軍と武装テロ集団が交戦し、軍の大尉1人が戦死した。
またヒムス県ヒムス市などでも軍が武装テロ集団と交戦し、バーブ・スィバーア地区では指名手配者6人を殺害した。
さらにダルアー県郊外でも軍が武装テロ集団と交戦し、バーブ・スィバーア地区では指名手配者5人を殺害した。
**
電力省は、ヒムス県ヒスヤー市にあるジャンダル発電所に派遣されている外国人技師8人が武装テロ集団に誘拐されたと発表した。
**
SANA(12月20日付)は「政府が21人の士官を処刑した」との一部衛星放送の報道を否定した。
諸外国の動き
レバノンのファーイズ・グスン国防大臣は、アル=カーイダが「シリアの反体制活動家を装って」シリア領からベカーア県バアルベック郡アルサール地方を経由してレバノン領内に潜入していると述べ、警鐘を鳴らした。
**
ロシアと中国の外務大臣が電話会談を行い、その後共同声明を発表、アラブ監視団派遣に関するシリア政府とアラブ連盟の合意への歓迎の意を示した。
**
サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、湾岸諸国首脳会議後の記者会見で、アラブ監視団がシリアの危機打開のための連盟イニシアチブと不可分だと述べるとともに、アサド政権に対して改めて弾圧停止を求めた。
**
アラブ連盟のアフマド・ベンフッリー連盟事務次長は、各国代表級会合後に、ムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダービー氏をアラブ使節団の団長に任命したと発表した。
ダービー氏はスーダンの軍人・外交官で、スーダン政府とダルフールのアフリカ連合・国連合同PKOの調整官を務めていた。
なおエジプトの外交官サミール・サイフ・ヤザル氏ら12人がアラブ使節団先遣隊として21日にダマスカス訪問予定。
エジプト日刊紙『シュルーク』(12月20日付)は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長のインタビュー記事を掲載、そのなかアラビー事務総長は、西側諸国がシリアへの介入の意思がないと述べるとともに、シリアの反体制勢力のビジョンが「成熟していない」との見解を示した。
**
ニューヨークの国連安保理では、ロシアが提出した安保理決議案に対して西側諸国が修正案を提示した。
『ハヤート』(12月21日付)によると、修正案は、シリアへの武器禁輸禁止、アラブ連盟と同様の対シリア制裁発動、シリア政府による人権侵害の指摘などを骨子とするという。
AFP, December 20, 2011、Akhbar al-Sharq, December 20, 2011、al-Ba‘th, December 20, 2011、al-Hayat, December 21, 2011、Kull-na Shuraka’, December 20, 2011, December 21, 2011、Naharnet.com, December 20, 2011、Reuters, December 20, 2011、SANA, December 20, 2011、al-Shuruq, Decemeber 20, 2011などをもとに作成。
(C)青山弘之All rights reserved.