アサド大統領のいとこのラーミー・マフルーフ氏が3度目となるビデオ・メッセージ「こんな方法では国は復興しない」(2020年5月17日)

アサド大統領のいとこのラーミー・マフルーフ氏はフェイスブックの公式アカウント(https://www.facebook.com/RamiMakhloufSY/)を通じて新たなビデオ・メッセージを発表した。

マフルーフ氏によるビデオ配信は今回が3度目。

「抑圧者は互いを守護し、アッラーは正しい者を守る」と題された約16分のビデオ・メッセージのなかで、マフルーフ氏は次のように述べた。

https://www.facebook.com/RamiMakhloufSY/videos/924582417986589/

**

「あなた方にアッラーの平和がありますように。

まずは、治安当局に逮捕され、今も拘束されている社員の家族の皆さんに、共感と謝罪の意を示すことで、このビデオを始めたいと思う。彼らを釈放する努力をしたが、駄目だった。彼らを釈放させるために何が必要かを見極めようとしたが、答えは明確だった。我々は、決定を撤回し、ある連中に奉仕しなければならない。我々は、多くの株主から多くのことを託されている。この間、被害を最小限に食い止めて乗り切ろうとする必要がある。アッラーがあなたに忍耐を与えますように。彼がこれらの圧力に苦しむすべての人に忍耐を与えますように。私は彼らを逮捕した当局にあらゆる責任を負わせたい。しかし、残念ながら、正式かつ正規の措置を講じることはできなかった。すべてが正規に行われていないからだ。崇高にして偉大なるアッラーの他に全能なる力はない。我々は耐える必要がある。許してください。

ここでの問題は、このようなかたちで続ければ、会社が崩壊しかねないということだ。全国にサービスを提供する会社だ。会社は国家の収入に貢献している。社員は6500人以上、株主は6500人以上、利用客は1万1000人以上いる。多くの部門に多くの作業プロジェクトを提供し、通信塔の建設、サービス提供などをともに行っている。加えて、シリア国内に約10万人の営業職員がいる。だから、会社は、シリア、そしておそらくはアラブ世界でもっとも成功した企業の一つだ。それを崩壊させるというのであれば、恥を知るべきだ。このようなやり方は、社員を脅かすもので、現に怖がっている人や働き続けたくない人も出ている。このようなやり方では(通信)部門が破綻しかねない。それはシリア経済にとって大惨事だ。そうなれば恥だ。そうなるべきではない。また、この会社の利益はラーマーク(開発)人道(プロジェクト民間持株会)社の慈善事業に利用され、支援を必要とするシリア社会の広い範囲に奉仕している。あらゆる点で良い会社だ。愛の会社、人々に奉仕する会社だ。

さて、社員を釈放させようとするなかで、我々が直面した状況について説明したい。これはかなり滑稽だった。我々は、釈放させるために何が欲しいのか連中に尋ねた。彼らは「条件はたいしたものではない、まずは金を払え」と言ってきた。我々は「そうすることが不当で、連中の言うような税金ではないとしても、金は払う」と言った。その大金は、何の法的な説明もなく支払わされるものだった。にもかかわらず、我々は支払いを受け入れた。そして、我々にはそうした要請を受ける筋合いはないが、政府を支援するものだとみなして支払うとした正式な文書を送った。そのうえで、連中に我々の会社が支払いを行っても倒産しない方法を探して欲しいと頼んだ。

そして、我々は尋ねた。「それ以外に何をして欲しいのか?」。

彼らは、自分たちがシリアテルにすべての必要なものを提供できる会社を持っていると言ってきた。そして、我々にこの会社の製品を購入するための独占契約を結ぶよう言ってきた。それ以外の会社との取引は許されないというのだ。

我々はこう答えた。「申し込みをして欲しい。他社の申し込みと比較して、取引するか決めたい」。しかし、彼らはこう言った。「駄目だ。あなたはこの会社としか取引できない。さもないと…」。

「さもないと、どうなるのだ?」 我々はそう聞き返した。「始終脅迫を受けるようでは、仕事をして経済を作り上げることはできない。これは不公平であり、誰も地球上であなたの行動を裁くことができないのなら、いずれアッラーによって裁かれるだろう」。話し合いの後、我々は契約の独占条件を解除し、我々の会社に合う条件を追加することができた。そうすることで、会社を破産から守ることができた。我々は解決策を見つけようとした。そして、ほとんどの問題に共通点を見つけることができた。

だから、我々は「それ以外に何をして欲しいのか?」と尋ねた。彼らはこう言った。「ああ、我々はお前みたいな奴が気に入らない。退いて欲しい」。

「どういう要求なのか? それは、会社の経営に関わる社内の問題であり、そんなことはできない」。我々はそう答えた。しかし、彼らは「我々の言う通りにしろ、さもなければ、お前は後で耐え苦しむことになる…」。その後、社員たちから電話があり、私に訊いてきたが、私は今は退かないと答えた。なぜなら、私が今辞めれば、それは自分の国と会社を貶めることを意味するからだ。戦争の困難のなかでも、私は辞めなかったし、国も国民も見捨てなかった。大統領もそうだった。だから、このような状況下でもそうしようとは思わない。私がそうすると考えるなら、私が誰かということを知らないということだ。

「よし、じゃあ」と彼らは言った。「これらの契約に署名して欲しい」。これは、とある「戦争成金たち」のための契約だ。その後、彼らは、私の代わりに署名できる2人に求めてきた。(取締役)副会長と社長は30分もしないうちに契約を結んだ。2人は、私がいる限りは、私の許可なく代理を務められないと断った。彼らは私に電話してきて、どうすれば良いかと訊いてきた。私は弟でもある副会長にこう言った。「あなたには二つの選択肢しかない。拒否するか、辞任するか。そうしなければ、会社を裏切ることになる」。彼は「拒否できないから、辞職する。そうすれば、あなたが問題に対処できる」と言ってきた。こうして、私が署名できる唯一の人間となった。もし、彼らが私に背いていたら、会社は崩壊し、経済は破綻しただろう。その他に何が崩壊するかは分からないが、それは恥ずべきことだ。

我々はSY-TRAで正式な会議を開いた。我々は金を払う準備ができていると言った。彼らはそれでは十分ではないと答えてきた。連中はいつも考えを変えては、新しいことを要求してくる。つまり、連中は自分たちが何を欲しいのかさえ分かっておらず、それが問題なのだ。だから私は「今度は何が欲しいのか」と尋ねた。彼らは「あなたは国にさらなる収益を与えなければならない」と言った。どうすれば、そんなことできるのか? 我々には、長年にわたって国と交わしてきた契約があって、それらはすべてが合法で文書化されている。しかし、彼らは「我々の言う通りにしろ、さもなければ…」と答えてきた。「さもなければ、どうする? 我々は逮捕されるのか」。私はそういった。我々は毎回逮捕されると脅迫されている。「我々は今、あなた方の年間利益の20%を支払っており、それはあなた方の収益の50%にあたる」。しかし、連中は我々の年間利益の50%を支払うよう求めてきた。それでは、我々の収益の100%でなく、120%になってしまう。つまり、我々は実際には自分たちのお金から20%を支払うことになる。これがいわゆる脅迫だ。彼らは、我々が命じられたことに日曜日までに従わない場合、我々に対する認可を取り上げ、会社を接収し、我々を逮捕すると言った。そんなことできない。こんな行為で、あなたは会社を崩壊に追い込めないし、シリア経済も破綻させられない。会社は現在、シリア経済に貢献している唯一の会社だ。戦争で、多くの事業者、投資家、労働力などを失ってきた。我々は十分に失った。信じて欲しい、国はこうした人たちがいなければ、支えることができない。すべては二つの対照的なものからなりたっている。肯定と否定、女と男、夜と昼。国家はこれらの人々なしに支えることはできなし、これらの人々は国家がなければ生き延びられない。我々は一緒でなければならない。信じて欲しい、独りで成功などできない。だから、あなた方のこうした行為と脅迫はこの部門(通信部門)を破壊することになる。それは、多くの資源の損失につながる。会社の事業に影響を及ぼすがゆえに、多くの市民に影響を与える。その収益は株主に配当され、その資金は国家に貢献しているからだ。あなた方にはそんな巨大な損失に対処することなどできない。

戦争が始まってから2019年半ばまで、一部の製品の価格は10倍になった。状況を踏まえると、物価高騰は理解できるもので、我々は皆それを受け入れた。しかし、9月半ばに突然、何かが変わった。何が変わったのは分かるだろう。物価が6ヶ月もしないうちに30倍に跳ね上がった。2019年半ばまで10倍、2019年半ばから20倍上昇し、合計で30倍も上がった。悲惨だ。シリア経済の崩壊だ。どうしてそんなことをしているのか? 私は、自分のためでも会社のためでもなく、あなたのためにそう言っている。シリアとその国民のためにだ。シリアを愛し、大切にするすべての人々のために。戦争中にシリアに寄り添ったすべての人々のためにだ。さらに悪化するかもしれないこの非常に困難な経済状況のなかで、彼らを失望させるのは恥だ。立ち止まって、考え直して欲しい。自ら経済を立て直すために一緒になって立ち上がろう。シリア国外にいるすべての人々に呼びかけよう。目を覚まし、助けようとしてここにいるすべての人々に伝えよう。我々自身で国を建設しよう。なぜなら、西側であれ、東側であれ、我々のためにそうする者などいないから。どうか、信じて欲しい。もし、我々が政府と一緒になって、自分たちの手で国を建設しなければ、我々(シリアの人々)が政府と並んで働くことによって我々自身の手でそれを構築しなければ、我々は資源を失うだろう。我々の経済は脅かされている。皆に、そしてすべての意思決定者に言いたい。戦争成金に従わないで欲しい。連中は金以外には何の関心もない。だが、以前ここ(会社)にいた人々は、戦争中も国家を思い、支えた。この国と指導者のために持ち得るすべてを犠牲にした。彼らの奉仕のおかげで、国は生き残った。だから、私はあなたにお願いしている。事態はあなたが考えている以上にセンシティブで深刻だ。

アッラーが私の言ったことの証人になりますように、アッラーが私の言ったことの証人になりますように、アッラーが私の言ったことの証人になりますように…」。

AFP, May 17, 2020、ANHA, May 17, 2020、AP, May 17, 2020、al-Durar al-Shamiya, May 17, 2020、Reuters, May 17, 2020、SANA, May 17, 2020、SOHR, May 17, 2020、UPI, May 17, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.