シリア国民評議会の使節団がアラブ連盟の事務総長および次長と会談、また同事務総長は国連に対し連盟・国連合同監視団のシリア派遣を要請(2012年2月11日)

SANA, February 12, 2012

SANA, February 12, 2012

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国内の暴力

『ハヤート』(2月12日付)によると、ヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区、ダマスカス郊外県ザバダーニー市に対する軍・治安部隊の掃討作戦が続き、25人(うち19人が民間人)が死亡した。

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SANA(2月11日付)によると、武装テロ集団3人が、ダマスカスハーミーシュ軍事病院に勤務する軍医のイーサー・フーリー准将を自宅から連れ出し、暗殺した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区での軍・治安部隊の攻撃で民間人9人が殺害された。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザバダーニー市マハッタ地区に軍・治安部隊が侵入したが、自由シリア軍の応戦を受け、撤退した、という。

また市民3人が軍・治安部隊の砲撃により死亡した。

一方、ドゥーマー市のカビール・モスクに軍・治安部隊が突入し、礼拝中の市民を逮捕した、という。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ムサイフラ町で軍・治安部隊が市民5人を殺害した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団などによると、アレッポ市での前日の自爆テロを受け、市内各所に治安部隊が多数展開し、厳戒態勢をとった。

アサド政権の動き

SANA, February 12, 2012

SANA, February 12, 2012

ダマスカス県ウマイヤ・モスク、聖マリア教会で、10日のアレッポ市での同時自爆テロの犠牲者を追悼する集団礼拝・ミサが行われた。

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『クッルナー・シュラカー』(2月11日付)は、ハサカ県の治安当局と関係があることで知られるH・A氏が、ラアス・アイン市で慈善団体を発足するためクルド人をリクルートしていると報じた。

同報道によると、リクルートされたクルド人の多くは、PKK系の民主統一党の支持者で、月収3,000シリア・リラを約束されているという。

また彼らは自身のIDや戸籍(の写し)をH・A氏に提出しており、これらの情報は、政党結成を計画しているとされるラーミー・マフルーフ氏によって利用される、という。

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シリア政府はチュニジア、リビア両国に対して、72時間以内にダマスカスの両国大使館を閉鎖するよう通告した。両国でのシリア大使館閉鎖に対する対抗措置。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会運営委員会の使節団がアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長および次長と会談し、『ハヤート』(2月12日付)によると、アラブ連盟のイニシアチブ、アラブ・イスラーム諸国による監視団の派遣などについて意見を交換した。

使節団はバスマ・カドマーニー報道官、アフマド・ラマダーン氏、アブドゥルバースィト・スィーダー氏、アディーブ・シーシャクリー氏、ジブル・シャウキー氏からなる。

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2月6日にシリア(解放)革命最高軍事評議会の発足を宣言していたムスタファー・シャイフ准将がシリア国民と国際社会に向けて声明を出し、「シリア解放革命最高軍事評議会は国土解放と殺人・虐殺体制の転覆…のために結成された」とその存在を改めて固持した。

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シリア・ムスリム同胞団のファールーク・タイフール副監督者は、「我らが人民を支援するための国際的介入と措置を必要とするような深刻な人道的虐殺が行われている」と述べ、国際社会に人道的な介入を呼びかけた。

レバノンの動き

アドナーン・マンスール外務大臣はクウェート紙『ラアユ』(2月12日付)に対して、アラブ連盟においてシリアの安定を脅かす決定がなされた場合、沈黙せずにレバノンの立場を明示すると述べた。

マンスール外務大臣は「我々は沈黙しないだろう。率直に意見を述べる権利を持っているがゆえ、偽証者にならない…。レバノンとシリアの治安は絡み合っている。シリアが火に包まれれば、その炎はレバノンに達する」と述べた。

またGCC諸国などが大使を召還した動きに関して、「GCC諸国の問題だ。我々がしたいのは、シリアを助け解決策を見つけ出し、危機を終わらすことであって、ことを複雑にすることではない」と述べ、暗に批判した。

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ナハールネット(2月11日付)などによると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で10日から続いていたアサド政権反対派住民と支持者住民の衝突は、国会議員らの仲介によって停戦に合意し、国軍が展開、事態は収束した。

仲介を行ったのは、アフマド・カラーミー国務大臣(団結ブロック)、サミール・ジスル議員(ムスタクバル潮流)、マイーン・マルアビー議員(ムスタクバル潮流)。

住民の武器引き渡し、国軍などへの全面協力などで合意した。

衝突では3人が死亡、23人が負傷した。

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ムスタクバル潮流の政治的見解を代弁する『ムスタクバル』(2月11日付)は、シリアからレバノンにヒズブッラーのメンバー2人の遺体が搬送された、と報じた。

同報道によると、遺体は南部県スール市の病院に搬送された、という。

同報道は、ヒズブッラーがアサド政権による反体制運動の掃討作戦に参加しているという宣伝のために流されたと思われる。

イラクの動き

イラクのアドナーン・アサディー内務次官は「イラク人ジハード戦闘員」がイラクからシリアに潜入し武装破壊活動を行っていると述べるとともに、イラク領内からシリアへ武器密輸がなされていることを認めた。

アサディー内務次官は、モスルでは、カラシニコフ銃が一丁100~200ドルだったのが、1,000~1,500ドルになるなど、武器価格が高騰しており、またモスルからルバイア国境を経由して、シリアに武器が密輸されていると指摘した。

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ラマーディー市では、宗教関係者、部族の指導者らが反アサド政権のデモを行い、約500人が集まった。

諸外国の動き

ロバート・フォード在ダマスカス・シリア大使は大使館のフェイスブックのページで、ヒムス市などの「広範な」弾圧の跡が映し出されたとされる衛星写真を公開した。http://www.facebook.com/syria.usembassy#!/photo.php?fbid=10150600575457649&set=pu.48261722648&type=1&theater

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ロバート・ケリー米上院議員(民主党)とマルコ・アントニオ・ルビオ上院議員(民主党)はバラク・オバマ大統領にシリアの民主主義への実質的転換を「物質的・技術的」に支援する決議案を議会に提出した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は国連の潘基文事務総長に、シリア情勢を監視するための連盟・国連合同監視団の派遣を要請した。

『ハヤート』(2月12日付)によると、合同監視団の派遣は、スーダンのダルフール問題などの判例を踏まえると、国連安保理による決議、シリア政府による受け入れ承認、そして派遣団員の安全確保をクリアする必要がある。

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『ハヤート』(2月12日付)など各国メディアは、サウジアラビアが1月22日にアラブ連盟外相会合で採択されたシリア問題に関する行程表への支持を求めるための国連総会決議案を各国に回付した、と報じた。

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アナトリア通信(2月11日付)は、訪米中のトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣が、国連に対してシリアでの弾圧の犠牲者への人道支援要請を行うだろうと報じた。

しかし、ダウトオール外務大臣は『ワシントン・ポスト』(2月11日付)に対して、人道支援が「人道回廊」の設置を意味しないと述べ、本格介入には含みを持たせている。

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マリオ・ゼナリ在ダマスカス・ヴァチカン大使は「キリスト教徒は今日までのところ、キリスト教徒だという理由で(弾圧や暴力の)標的となっていない」と述べた。

AFP, February 11, 2012、Akhbar al-Sharq, February 11, 2012、Facebook、al-Hayat, February 12, 2012、Kull-na Shuraka’, February 11, 2012、al-Mustaqbal, February 11, 2012、Naharnet.com, February 11, 2012, February 12, 2012、al-Ra’y, February 12, 2012、Reuters, February 11, 2012、SANA, February 12, 2012、The Washington Post, February 11, 2012、UPI, February 11, 2012などをもとに作成。

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