米国はダイル・ザウル県南東部の国境地帯で「イランの民兵」を爆撃、イラク人22人が死亡(2021年2月26日)

ジョン・カービー国防総省報道官は声明を発表し、2月25日晩にシリア領内の「イランの民兵」の拠点に対して爆撃を実施したと発表した。

声明の内容は以下の通り:

バイデン大統領の指示により、米軍は今晩早く、シリア東部でイランが支援する武装グループが利用していたインフラに対して爆撃を実施した。これらの爆撃は、イラク国内での米国および有志連合の人員に対する最近の攻撃と、これらの人員に対する継続的な脅威への対抗措置として承認された。具体的には、爆撃により、ヒズブッラー大隊、サイイド・シュハダー大隊など、イランが支援する武装グループ多数が使用する国境管理地点にある複数の施設が破壊された。

こうした相応の軍事的対応は、有志連合のパートナーとの協議を含む外交措置と合わせて実施された。この作戦は次のような明確なメッセージを送るものだ。バイデン大統領は米国と有志連合の要員を保護するために行動する。同時に、我々は、シリア東部とイラク双方の全般的状況の緊張を緩和するため慎重に行動してきた。

米国が外国に対する軍事攻撃を行ったと公式に認めるのジョー・バイデン政権が発足後は初めて。

なお、ドナルド・トランプ米政権も最初に行った新たな対外軍事攻撃もシリアに対するもの(2017年4月のシリア軍による化学兵器使用疑惑を口実としたシリア政府支配地域への限定的ミサイル攻撃)だった。

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また、ロイド・オースティン国防長官は記者らに対して以下の通り述べた。

我々は、あなたたちが期待しているように、非常に慎重なアプローチをとった。

我々は、イラク人が我々に諜報関連の情報を調査し、その内容を発展させることを認め、奨励した。それは標的を絞り出すうえで大いに役立った。

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ロイター通信(2月26日付)が、米高官2人の話として伝えたところによると、爆撃は「イランの民兵」の拠点複数カ所に対するもので、バイデン大統領は、イラク政府の反発を避けるため、イラク領内ではなくシリア領内に対する爆撃を行うことに同意、実施を指示した。

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『ニューヨーク・タイムズ』(2月26日付)によると、爆撃は、イラク国境に面する砂漠地帯に設置されているいわゆる「イマーム・アリー基地」(イマーム・アリー・コンパウンド)の近くの軍用通行所を標的とし、「イランの民兵」の建物群に8発の爆弾が投下した。

これらの施設は、イランがイラク・シリア間の武器や戦闘員の移動に利用していたもので、爆撃によって少なくとも「イランの民兵」17人が死亡した。

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一方、シリア人権監視団によると、この攻撃でイラク人民防衛隊の隊員22人が死亡した。

死亡したほとんどは、ヒズブッラー大隊のメンバーでイラク人だという。

攻撃は、武器を積んだ車輌3輌が、イラクのアンバール県のカーイム国境通行所(シリア側はダイル・ザウル県ブーカマール国境通行所)近くの軍用通行所を通過して、シリア領内に入ったところを狙ったもので、この車輌とイラク人民防衛隊の拠点複数カ所が標的となった。

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爆撃は、イラク駐留米軍に対する攻撃への報復。

イラクでは2月15日、クルドディスタン地域のアルビール市の国際空港や隣接する駐留米軍の施設の付近に複数のロケット弾が打ち込まれ、少なくとも駐留米軍の請負業者1人が死亡し、米軍兵士1人を含む9人が負傷していた。

AFP, February 26, 2021、ANHA, February 26, 2021、al-Durar al-Shamiya, February 26, 2021、The New York Times, February 26, 2021、Reuters, February 26, 2021、SANA, February 26, 2021、SOHR, February 26, 2021などをもとに作成。

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