カザフスタンの首都ヌルスルタン(旧アスタナ)で7月7日から開催されていたアスタナ16会議は、アレクサンドル・ラヴレンチエフ・シリア問題担当大統領特使を長とするロシア代表団、アリー・アスガル・ハージー外務大臣補を長とするイラン代表団、サダト・オナル外務大臣補を長とするトルコ代表団が全体会合を開き、共同声明を発表し、閉幕した。
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共同声明において、会議の保障国である3カ国は、無垢の民間人を標的とするテロ活動を非難、ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線(現シャーム解放機構)、そしてアル=カーイダとつながりのあるすべての組織・個人を根絶するための協力を継続することを確認した。
また、イドリブ県中北部、ラタキア県北東部、ハマー県南西部、アレッポ県北部を包摂する緊張緩和地帯の状況については、同地の停戦にかかるすべての合意を実施する必要を確認した。
米国の支援を受け、トルコが「分離主義テロリスト」とみなすクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局の支配下にあるシリア北東部の情勢について、シリアの主権と領土保全に脅威を及ぼす「分離主義的アジェンダ」を拒否、「テロとの戦い」を口実とした違法な自治のイニシアチブは受け入れ慣れないと表明、シリアで産出される石油の奪脱を非難した。
さらに、シリア領内に対して繰り返されるイスラエルの侵犯行為を改めて非難した。
国連安保理決議第2254号に沿った政治プロセスについては、その推進に専念し、制憲委員会(憲法委員会)の活動を支援することを再確認した。
このほか、人道状況、とりわけ新型コロナウイルス感染症の拡大に懸念を表明、シリアに対する一方敵な経済制裁を拒否、政治利用なき無制限の人道支援を行うこと、基礎インフラの復興、難民・国内避難民(IDPs)の帰還を促す必要を強調した。
なお、次回の会合(アスタナ17会議)の開催は、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえつつ、年末に開催することを合わせて合意した。
SANA(7月8日付)、アナトリア通信(7月8日付)、スプートニク・ニュース(7月8日付)などが伝えた。
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なお、反体制系サイトのフッル・ネット(7月8日付)が会合に参加した複数筋の話として伝えたところによると、ロシアは緊張緩和地帯内に非武装地帯を設置することを強く主張した。
AFP, July 8, 2021、Anadolu Ajansı, July 8, 2021、ANHA, July 8, 2021、al-Durar al-Shamiya, July 8, 2021、al-Hull, July 8, 2021、Reuters, July 8, 2021、SANA, July 8, 2021、SOHR, July 8, 2021、Sputnik News, July 8, 2021などをもとに作成。
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