諸外国の動き(2014年5月13日追記)

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、辞意表明に先だって国連の潘基文事務総長に自身の活動の進捗について報告、シリア紛争解決に向けた7つの優先事項を示した。

『ハヤート』(5月15日付)によると、7つの優先事項とは、①国連安保理決議第2139号に基づく人道支援、②暴力の軽減と停止、③移行期統治機関(移行期政府)樹立、④国民対話の開催、⑤憲法再考、⑥新憲法に基づく選挙の実施、⑦シリアへの武器流入阻止。

ブラーヒーミー共同特別代表はまた13日晩の安保理会合で、イランが自らの示した提案を国連安保理が受諾すれば、シリアの大統領選挙の延期を試みる用意があるとの姿勢を示してきたことを明かした。

モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣が示したというイラン提案は、①発砲停止、②挙国一致内閣の発足、③大統領権限縮小のための憲法再考、④国連監視下での大統領選挙、国会選挙の実施、という4点からなっていたという。

しかし、ブラーヒーミー共同特別代表は、「ほかの地域での情勢」(ウクライナ情勢)によって、米露の協力が低迷し、シリアの紛争解決に向けた国際社会の協力が阻害されたと付言し、「シリアでの政治的関係正常化は地域諸国の参加なしには不可能だ」と強調した。

一方、6月3日に投票が予定されている大統領選挙について、ブラーヒーミー共同特別代表は、ジュネーブ2会議の交渉に反体制勢力が応じることを不可能にしたと批判するとともに、「国連ではなく、反体制勢力支援国が反体制勢力の統合のため行動」すべきだと主張し、「1,000に及ぶ反体制武装組織」の乱立もジュネーブ2会議再開を阻害しているとの見方を示した。

他方、ヒムス市旧市街での「停戦合意」については、「将来の交渉のモデル」になると評価しつつも、シリア政府が「実際には不可能であるにもかかわらず…外国の支援なしに国内の平和を取り戻す能力があると主張しているため」、国連による停戦に向けた仲介を「受け入れることはないだろう」と悲観しつつ、「国連と赤十字国際委員会の支援がシリアの主権に抵触しないことを友好国は説得しなければならない」と強調した。

シリア国内で活動する外国人戦闘員については、「シリア国内にこれらの戦闘員の居場所がないということを地域諸国が合意する」ことで、その排除に向けた治安レベルでの協力が必要だと述べた。

移行期統治機関については、シリア政府がジュネーブ2会議の議場外において「挙国一致政府」の樹立を認めるとした点に着目し、「呼称はともかく、現政府、反体制勢力、無所属の活動家が等しく参加したかたちで移行期政府を樹立しなければならない」と述べた。

また国民対話については、「最初の会合についてはシリア国外でも開催もあり得る」との見方を示した。

**

ロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使は、ブラーヒーミー共同特別代表の辞任に関して遺憾の意を示す一方、「シリア政府にはジュネーブ2会議の第3サウンドへの参加の用意がある」と述べ、潘事務総長に共同特別代表の任期が終了する5月31日までに後任の人選を行うよう求めた。

また6月3日に投票が予定されているシリア大統領選挙については2012年6月の「ジュネーブ合意に反していない」と述べ、「誇大」な批判を行うべきではないと釘を刺した。

そのうえで、シリアでの犯罪の国際刑事裁判所への起訴を求めるフランスの国連安保理決議案について「良い考えだとは思わない」と述べ、拒否の姿勢を示した。

al-Hayat, May 15, 2014などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.