シリアで活動するイスラーム過激派はシャーム解放機構にロシア軍、シリア軍に対する戦端を開くよう迫る(2022年2月25日)

レバノンのインターネット・サイトのムドゥン(2月25日付)は、シリア国内で活動を続けるサラフィー主義者(イスラーム過激派)らが、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構に対して、ウクライナ侵攻をめぐるロシアへの欧米諸国の批判や制裁を利するかたちで、シリア国内でもロシア軍やシリア軍に対する戦端を開くよう圧力をかけていると伝えた。

2020年3月のロシアとトルコの停戦合意以降、ロシア軍やシリア軍との全面衝突を回避するようになっているシャーム解放機構の姿勢に反対し、シリアでの活動を続けているエジプト人サラフィー主義者のアブー・シュアイブ・ミスリー(タルハト・マスィール)氏はテレグラムのアカウント(https://t.me/s/abosheab?before=618)などを通じて次のように述べて、決起を求めた。

アッラーよ、ジハードを混乱させ、民と戦った…すべての人を滅ぼしてください。ウクライナでの戦争においてもっとも重要な教訓の一つは、我々のウンマにおける最大の問題が、敵の強さや弱さ、敵が忙殺されているか否かではないということだ。最大の問題は、ウンマとジハードを隔てようとする我らが民の偽善者にある。

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また、シャーム解放機構を離反したアブー・ヤフヤー・シャーミー氏はツイッターのアカウント(https://twitter.com/borwjj)を通じて次のように述べている。

ウクライナに対するロシアの戦争が始まった。それは全面戦争へと発展する可能性があり、シリア革命に復活の機会を与えるだろう。アッラーは自由な者たちに糸口を御与えくださっている。だが、追随者たちはその機会を利することができない…。

ウクライナでのロシアの勝利を楽観し、その見返りとして、ロシアがシャームを放棄すると期待する者もいれば、ロシアの敗北を楽観し、より多くを期待している者もいる。だが、いずれにおいても悪影響があるというのが真理だ。ロシアがウクライナに関与したことこそが好影響だ。重要な問題とは、ロシアが忙殺されていることを利することができるか、我々以外の誰かがこの状態、さらには我々を利するかということになる。
抑制、封じ込め、独占の連鎖が増し、多くの危害が過去と現在において失われている。反抗するシリア国民がこうした機会を利することができるのは、こうした枷から解放され、狭量な利益を囚われた指導者や戦争商人を転覆することによってのみだ。

なお、複数の軍事筋がムドンに対して明らかにしたところによると、こうした言説に、強大な軍事力と欧米諸国の弱腰ゆえにロシアがウクライナで勝利を収めると考えてているシャーム解放機構の幹部らは苛立ちを感じているという。

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、al-Mudun, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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