シリア人権監視団は、複数筋の話として、米中央軍(CENTCOM)が、米国が違法に駐留するタンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)で活動する革命特殊任務軍の司令官を務めるムハンナド・アフマド・タラーア大佐を解任し、ファリード・フサーム・カースィムを名乗る人物を新たな司令官に任命したと発表した。
同監視団によると、タラーア大佐は革命特殊任務軍のメンバーらに対して、突如イラク側と新たな国境通行所(ズーリーヤ国境通行所)を開設するためと告げ、イラクに向かっていたが、この時期を見計らって解任された。
新司令官となったカースィム氏は、カルヤタイン旅団の司令官だった人物。
司令官の交代について、一部司令官が拒否の意思を示しており、革命特殊任務軍はすべてのメンバーを招集し、本件への対応について協議したという。
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一方、トルコのイスタンブールを拠点とする反体制系サイトのシリア・テレビ(9月25日付)は、CENTOMの独自情報筋の話として、タラーア司令官の解任は、彼がトルコを「通常の休暇」で訪問しているのに合わせて行われたと伝えた。
タラーア司令官は「通常の休暇」を家族の一部が暮らしているトルコで過ごすことが多いという。
タラーア司令官の解任は、地域住民への対処に失敗したのを受けたもので、カルヤタイン殉教者旅団、部族自由人軍などからなる武装連合体の意思に基づいているという。
だが、この武装連合体がいかなるもので、タラーア司令官の解任において実際にどのような役割を果たしたのかは明らかでない。
新司令官となったカースィム氏は、ヒムス県カルヤタイン市生まれ。
シリア軍の大尉だったが、「アラブの春」波及直後に離反し、カルヤタイン殉教者旅団を率いた。
カースィム新司令官は、米主導の有志連合に近い人物と目されて、カルヤタイン殉教者旅団も有志連合から支援を受けてきた。
AFP, September 24, 2022、ANHA, September 24, 2022、al-Durar al-Shamiya, September 24, 2022、Reuters, September 24, 2022、SANA, September 24, 2022、SOHR, September 24, 2022、Syria TV, September 25, 2022などをもとに作成。
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