アラブ連盟外相会合でシリアの連盟復帰が決議:カタールは消極的にこれを受け入れる(2023年5月7日)

アラブ連盟は本部のカイロ(エジプト)で緊急外務大臣会合を開催し、2011年11月に加盟資格を失っていたシリアの連盟復帰を認める決議第8914号を採択した。

アラブ連盟のジャマール・ラシュディー事務総長付報道官によると、決議採択が非公開の会合で行われた。

決議第8914号の内容は以下の通り:

エジプトを議長とする緊急アラブ連盟閣僚級会合が2023年5月7日日曜日に開催され、以下を決議した。
アラブ連盟憲章と、その原則に基づき、シリアの主権、領土保全、安定、そして地域の安定を維持することを改めて遵守する。過去10年におよぶ姉妹国シリアの国民の苦しみを終わらせたいという願望に基づき、またアラブ共通の利益、アラブの文明文化に歴史的に貢献してきたシリア国民を含むすべてのアラブ諸国民を結びつける兄弟関係に沿って、シリアが危機から脱するのを支援するためのアラブの取り組みを継続強化する重要性を確認する。
2023年4月14日、5月1日にそれぞれジェッダとアンマンでの会合で発表されたシリアにかかるアラブ諸国の声明を歓迎する。シリア危機解決におけるアラブの主導的役割のもと、難民、テロの脅威、麻薬密輸など、人道、治安、政治にかかる危機によってシリアとその国民にもたらされたすべての被害を癒し、近隣諸国、地域に与えた影響を解消することを切望する。シリアがアラブ諸国と協力して、関連するアラブ諸国の決議を実施し、アンマンでの会合の取り決めや合意を実施し、アラブの役割を活性化させるのに必要な仕組みを採用する意思を示したことを歓迎する。
危機解決に向けた実質的で実効的な措置を、国連安保理決議第2254号に沿って、段階的な方法で講じていく必要を確認する。これは、関連する国連決議において採用されている仕組みに沿って、シリア国内で支援を必要としているすべての人に人道支援を行き届かせる措置を継続することをもって開始される。
ヨルダン、サウジアラビア、イラク、レバノン、エジプト、アラブ連盟事務総長からなる閣僚連絡委員会を設置し、アンマン声明の実施状況を確認し、シリア危機の包括的解決に向けてシリア政府との直接対話を継続し、国連安保理決議第2254号に沿って、段階的な方法ですべての被害に対処する。委員会は連盟閣僚級会合に定期的に報告書を提出する。
シリアの使節団は2023年5月7日付でアラブ連盟および同連盟に所属するすべての機関の会合に再び参加する。
事務総長に対して、本決定の規定の実施状況の確認と、同会合への進捗の報告を要請する。

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議長を務めたエジプトのサーミフ・シュクリー外務大臣は、会合の場で、悲しい過去を清算するよう訴えるとともに、シリア政府に対して難民帰還に取り組むよう求めるとともに、同国の危機の政治的解決の責任がシリア政府にあると指摘、同政府とシリアの諸派に、政治的解決に向けて取り組むよう呼びかけた。

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カタールの代表として出席したムハンマド・ビン・アブドゥルアズィズ・ビン・サーリフ・ハリーフィー外務大臣は以下の通り述べ、シリアの連盟復帰に反対の意見を示しつつも、決議を受け入れた。

カタール、シリア危機の公正な解決に向けた、地域、そして国際社会によるすべての努力を支援してきたし、これからも支援する。それはシリアの統合、主権、領土保全を尊重し、シリア国民の要求を実現し、人道、政治のすべての面で国連安保理決議第2254号に基づいている。
カタールは、アラブの合意を実現するものを常に支援しようとしており、その障害とはならない。今日のこの合意は基本的にはシリアの体制の連盟への復帰にかかわるものだ。だが、体制との関係改善に向けたカタールの公式の立場は、関連する国連決議に従って、政治的系決に向けた進展があることと結びついている。

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イラク外務省のアフマド・サッファーフ報道官は声明を出し、アラブ連盟緊急外務大臣会合でシリアの連盟復帰が決定されることに同意したと発表、「イラクが行ってきた対話外交、アラブ統合への取り組み」がこれを可能としたと強調した。

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パレスチナのハマースのハーズィム・カースィム報道官はツイッターのアカウント(https://twitter.com/hazemaq/)を通じて、アラブ連盟緊急外務大臣会合でシリアの連盟復帰が決定されたことに関して、歓迎の意を示した。

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SANA(5月7日付)、QNA(5月7日付)、INA(5月7日付)などが伝えた。

AFP, May 7, 2023、ANHA, May 7, 2023、al-Durar al-Shamiya, May 7, 2023、INA, May 7, 2023、QNA, May 7, 2023、Reuters, May 7, 2023、SANA, May 7, 2023、SOHR, May 7, 2023などをもとに作成。

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