タルトゥース県の混乱が継続する一方、「テロ細胞」メンバー3人が外部当事者による指示のもとで「破壊工作」を試みていたことを自供(2011年4月12日)

国内の暴力

複数の目撃者によると、タルトゥース県バーニヤース市東南に位置するバイダー町で、治安部隊と武装集団が「無差別発砲」を行った。

『ハヤート』(4月13日付)によると、バイダー町の目撃者の一人は、「村は治安部隊と犯罪組織(シャッビーハ)による無差別銃撃を受けた」と述べた。

また別の目撃者によると、「バイダー町に対する銃撃は雨のように降り注ぎ、現在までに少なくとも1人が負傷した」と述べた。

活動家の一人によると、バイダー町民のなかには武器を持っている者がおり、武力衝突が発生したようだ、と述べた。

また「救急車両がバイダー町に入ろうとしている。負傷者がいる」と語った。

別の活動家によると、村の携帯電話回線は遮断され、装甲車両がバイダー町に入り、兵士が「無差別に」発砲、家から出てきた若者たちを逮捕していった。

人権活動家の一人は、「攻撃は当局がおそらくバイダー町出身のアナス・シャフリー氏を支持者とともに逮捕しようとしたためだ」との見方を示した。

シャフリー氏はバーニヤース市での抗議行動を指導する代表人物の一人。

バーニヤース市で複数の目撃者が述べたところによると、「シリア軍は海岸にある同都市の包囲を強め、停電によるパン工場の停止で食糧危機が始まっている」。

抗議運動の指導者の一人、アナス・シャフリー氏は「治安部隊と軍は依然として町を包囲している。封鎖により異常なまでの締付状態に陥っており、我々は彼らが我々に何をしようとしているのか、理解できない」と述べた。

また「バーニヤース市でのパンの材料不足、停電、電話の普通がほぼ恒常的に起きている」と指摘した。

アブドゥルバスィート氏(電気技師)を名乗る目撃者の一人はAFP(4月12日付)に対して「事態はきわめて困難で、軍は市内から撤退し、市の出口に結集した。また治安部隊と体制側のシャッビーハが逮捕を繰り返している」と述べた。

また「市は死んでしまったかのように静まっており、商店は閉鎖されている」と付言した。

さらに「軍が殺害した者のなかには、治安要員もいる。なぜなら彼らは市への攻撃命令実行を拒否したからだ」と述べた。

ヤースィル氏を名乗る商人の一人は、「バーニヤース市は戦車で包囲され、誰も出入りできない。刑務所のようになっている」と述べた。

また「もはやバーニヤース市にはパンがない。タルトゥースから若干のパンが届いているが、それでは不十分だ」と付け加え、「ガソリン・スタンドも閉鎖されている」と語った。

市内のあるモスクの説教師、シャイフ・ムハンマド師は「多くの家で女子供を隣接する村に避難させた」と述べ、これらの家族が「クーズ地区からの発砲があったラアス・ナブア地区に住んでいる」と指摘した。

Kull-na Shurakāʼ, April 12, 2011
Kull-na Shurakāʼ, April 12, 2011
Kull-na Shurakāʼ, April 12, 2011
Kull-na Shurakāʼ, April 12, 2011

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Kull-na Shurakāʼ, April 12, 2011
Kull-na Shurakāʼ, April 12, 2011

「アフバール・シャルク」(4月12日付)によると、ハサカ県アイン・アラブ市、ラタキア県ジャブラ市、ダマスカス郊外県キスワ市、ダルアー県ダルアー市でバーニヤース市と連帯を求める1,000人から2,000人規模のデモが発生した。

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シリア・アラブ・テレビ(4月12日付)は、「テロ細胞」メンバー3人が、シリア・ムスリム同胞団とレバノンのジャマール・ジャッラーフ国民議会議員(ムスタクバル潮流)と関係があり、「破壊工作」を行おうとしていたと自供した映像を放映した。

証言したのは、アナス・カンジュ、ムハンマド・バドル・カラム、ムハンマド・アフマド・スフナを名のる3人。

証言によると、アサド政権を支持するデモや行進の参加者に発砲せよとの指示が、ジャマール・ジャッラーフ議員からアフマド・アウダという友人を経由して下された、という。

al-Hayat, April 13, 2011
al-Hayat, April 13, 2011

アフマド・アウダはシリア・ムスリム同胞団のメンバーで、3人に高性能の電話を提供、治安当局の車に似せた車で警護すると約束、3人は当初、ダマスカス県旧市街にあるウマイヤ・モスクで人々を集めてデモを行ったが、混乱を発生させることができず、次第に破壊工作を行う必要があると考えるようになり、アウダから武器を受け取った、という。

反体制勢力の動き

ダマスカス民主変革宣言は、3月以降の弾圧で約200人が死亡、数百人が逮捕されたと発表した。

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Facebook
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シリア言論の自由擁護センター所長のハリール・マアトゥーク弁護士はAFP(4月12日付)に対して、シリアの複数の都市で署名な活動家ら複数名が逮捕されたことを明らかにした。

逮捕されたのは、シリア民主人民党のギヤース・ウユーン・スード第一書記(4月12日、ダマスカス郊外県サフナーヤー市で逮捕)、同党幹部のジョルジュ・サブラ氏(4月10日、ダマスカス郊外県カタナー市で失踪)、アラブ社会主義連合民主党幹部のアフマド・マアトゥーク氏、ダマスカス民主変革宣言のナジャーティー・タイヤーラ弁護士(ヒムス)、同宣言のファーイズ・サーラ氏(ダマスカス郊外県ガズラーニーヤ町)。

彼らはジャズィーラなどに出演し、政権によるデモ弾圧を批判していた。

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シリア民族社会党インティファーダ派のアリー・ハイダル党首、民主統一改革党のムハンマド・サウワーン党首、シリア共産主義者統一国民委員会のカドリー・ジャミール代表がダマスカスで共同声明を出し、市民による改革要求デモに対して武器を使用しないよう当局に求めるとともに、デモ参加者に破壊行為を行わないよう呼びかけた。

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シリアの6つの人権団体は、バーニヤース市近郊での「シリアの軍部隊を標的とした悪質な攻撃をきわめて強く非難」し、「発砲した武装集団の身元を調査」と処罰を求めた。

アサド政権の動き

『サフィール』(4月13日付)は、ファールーク・シャルア副大統領がダルアー市民使節団と会談し、事態正常化に向けた協議を行ったと報じた。

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『クドス・アラビー』(4月12日付)は、軍事情報局南部地区長のスハイル・ラマダーン准将が地区長職を解任され異動となったと報じた。

軍事情報局南部地区はダルアー県、スワイダー県での治安を担当している。

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『クッルナー・シュラカー』(4月12日付)はダマスカス大学構内での学生の活動に対する「人民諸委員会」による監視がムハンマド・イーサー大佐の指導のもとで強化された、と報じた。

レバノンの動き

ベイルート県中心部のハムラー地区にあるシリア大使館前で、シリア人活動家3人が民主化を求めるデモを行った。

しかしまもなく、アサド政権を支持する若者訳100人がハムラー地区に大挙し、対抗した。

諸外国の動き

ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、シリア情勢に関して、「政府の手によって負傷したシリア人が治療を受けられないとの情報に我々は懸念を感じている」としたうえで、「合衆国は平和的デモ参加者弾圧の試みを厳しく非難する」と述べた。

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英国外務省は英国民に対して、シリアの治安情勢悪化を理由に、不要不急のシリアへの渡航を控えるよう勧告した。

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イランのラーミーン・メフマーン・バラスト外務省報道官は、シリアでの抗議行動が中東のレジスタンスを支持する政府に揺さぶりをかけようとする西欧の陰謀の一環としてなされていると断じた。

報道官は昨日、シリアの抗議行動が自発的に発生した事件ではなく、外国の介入の産物だとの見解を示したうえで、「シリアで起きていることは西欧人たち、とりわけ米国人とシオニストが行う忌まわしい行為だ」と述べた。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、4月8日(金曜日)のダルアー市での反体制デモに対する治安当局の弾圧に際して、当局は救急車両による医療活動を阻止していたと発表・非難した。

AFP, April 12, 2011、Akhbar al-Sharq, April 12, 2011、al-Hayat, April 13, 2011、Kull-na Shurakaʼ, April 12, 2011、Reuters, April 12, 2011、al-Quds al-ʻArabi, April 12, 2011、SANA, April 12, 2011、al-Safir, April 13, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.

クウェートやバーレーンの元首がアサド大統領への支持を表明、また米国務長官はシリアへの軍事介入の可能性を否定(2011年3月27日)

反体制デモをめぐる動き

複数の住民が述べたところによると、ダルアー市やラタキア市に、軍・治安部隊、ムハーバラートの増援部隊が派遣され、市内制圧を支援する一方、監視態勢を強化し、大規模なデモは発生しなかった。

ただし、ダルアー市内には、戦車、兵員輸送車輌は投入されていないという。

Youtube
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複数の通信社によると、衛星テレビ局アフバール・スーリーヤは、当局が約300人を逮捕し、そのなかにはイラク人、ヨルダン人、レバノン人、アルジェリア人が含まれていたと報じた。

彼らは3月26日(土曜日)、ラタキア市で、ビルの屋上を占拠し、通行人に発砲したという。

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『クッルナー・シュラカー』(3月27日付)は、「クルド青年革命」を名乗るグループが、フェイスブックなどでダルアー市との連帯を表明するため、カーミシュリー市での座り込みを呼びかけたと報じる。

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アラブ社会主義連合民主党は声明を出し、「平和的な手段による愛国的、民主的な運動のただ中にを見出す」と述べ、反体制抗議行動支持を表明。

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人民議会の審議で、ユースフ・アブー・ルーミヤ議員(75歳、ダルアー県選出、無所属)が、ダルアー市で治安部隊が「執拗に」デモ参加者に発砲したと非難した。

アブー・ルーミヤ議員は「ハウラーン地方で起きているのは、大統領ではなく、ヘリコプターを投入して市民に発砲した…ダルアーの政治治安部の無思慮に抗議するものだ」と述べた。

この発言はYoutubeで配信された。

アサド政権の動き

大統領府声明によると、バッシャール・アサド大統領はクウェートのフバーフ・アフマド・ジャービル・スバーフ首長、バーレーンのハマド・ブン・イーサー・アール・ハリーファ国王と電話会談した。

同声明によると、スバーフ首長は「クウェートが治安と安定を揺るがそうとする試みに対抗するシリアを支持するとの意思」を示し、この試みを退けるシリア政府および国民の能力を信頼していると述べた。

一方ハマド国王は「アサド大統領に対して、バーレーンが治安と安定を標的とした陰謀に立ち向かうシリア政府および国民を支持し、この陰謀を排除し、克服するシリア国民の意思と能力を信頼している」と述べた。

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SANA(3月28日付)は、公式筋の情報として、「武装集団が2日間にわたってラタキア市民、街区を攻撃し、治安部隊兵士、市民、10人と、武装集団メンバー2人がした。同集団は市内を徘徊し、家々の屋根を占拠して、市民に無差別に発砲、市民をパニックに陥れた…。約200人が負傷した。そのほとんどが治安要員で、武装集団はまた、ラタキア市内の公共施設、私有施設、福祉施設、焦点を破壊し、家々に押し入り、住民を脅迫した」と報じた。

またその際、市内の国立病院も襲撃され、多数の救急車両や医療クルーを攻撃した、という。

しかし、「ラタキア市民は、すべての地区で治安部隊に協力し、武装集団の居場所を知らせ、メンバー多数の逮捕、尋問に寄与した」。

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AFP(3月27日付)によると、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報顧問は、ラタキア市での3月26日(土曜日)の事件に関して「治安要員と市民2人、武装した男2人がラタキア市の住民や市街地に対する武装集団の攻撃によって死亡した」と公式筋の発表を繰り返した。

シャアバーン顧問はまた「攻撃の背後には過激派がおり、国内に宗派主義的亀裂をもたらそうとしていた」と疑った。

そのうえで「非常事態令解除は決定済みだが、それがいつ実施段階に入るかは分からない」と付言した。

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シリア・アラブ・テレビの報道によると、米国籍を持つエジプト人は外国から金銭を受け取り、シリアで撮影した映像を送っていたという。

シリア・アラブ・テレビで公開されたムハンマド氏の証言映像で、同氏はインターネットでコロンビア人からダマスカスでのデモの映像を撮影したら100EPの報酬を与えると持ちかけられたと述べた。

これに対して、アブー・バクル・ラドワーン氏(エジプト人)が3月27日晩にアラビーヤの電話取材に対して、息子のムハンマド氏がダマスカスで3月25日に逮捕されたと語った。

ムハンマド氏はウマイヤ・モスクで発生したデモを携帯電話のデジカメで撮影しただけであるにもかかわらず、シリア当局はイスラエルのスパイとの容疑をかけたという。

しかし、アブー・バクル氏は、ムハンマド氏がヨルダン経由でイスラエルに入国したことを認める。

ムハンマド氏は米国生まれの32歳で、テキサス大学を卒業。米在住。石油技師。

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AFP(3月27日付)はミシェル・シャンマース弁護士の話として、3月16日に内務省舎前で座り込みを行い「ダマスカスで逮捕されたディヤーナー・ジャワービラ女史ら17人の釈放を当局が決定した」と報じた。

ジャワービラ女史の逮捕は出身地であるダルアー市でのデモを激化させる原因ともなった。

この措置は、3月23日の女性参加者釈放に次ぐ動きであった。

しかし、シャンマース弁護士は9人が依然身柄拘束中で、そのなかには人権活動家のスハイル・アタースィー女史、ナーヒド・バダウィーヤ女史が含まれていると付け加えた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、米国にはシリアへの軍事攻撃の意思がないと明言した。

リビアでの軍事攻撃に関する米テレビ局CBSの質問に対して、国務長官は「いいえ、(中東での)情勢にはそれぞれ個別の特性がある」と答えた。

そのうえで、国際的な連携のもと、国連での「グローバル」な合意のもとで暴力行為が非難された状況下において、軍事的介入を考慮することが初めて可能になるとの見解を示し、「今後こうしたことは起きないだろう。なぜなら我々は現在何が起きており、その結果何が生じ得るかを完全には把握していないからである」と述べた。

さらに「もちろん、シリアでの暴力行為を遺憾に思っており、平和的なデモを認め、経済・政治改革の開始を呼びかけている」と付け加えた。

そしてシリアで起きていることを「大いに懸念しているが、それでも航空機を動員した無差別な都市への空爆と、我々の誰もが期待していなかったような過剰な実力行使を明白に伴う警察活動とは異なっている」と述べた。

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Naharnet.com, March 27, 2011
Naharnet.com, March 27, 2011

ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は、シリアでの反体制デモに関して「彼(アサド大統領)を退任させようとする帝国主義の新たな運動」と非難、「社会主義指導者」にして「兄弟」のアサド大統領への支持を表明した。

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レバノンの首都ベイルート県内ハムラー地区にあるシリア大使館前で、数百人のシリア人がバッシャール・アサド大統領と政府との団結を訴えるデモを行った。

参加者はアイン・ムライサ地区に集まり、ハムラー地区に向かって行進、アサド大統領を支持するプラカード、大統領の写真、父ハーフィズ・アサド前大統領の写真を掲げ、「アッラー、シリア、バッシャールのみ」と連呼した。

またダナー地区近くでも約200人が集まり、イマーム・アリー・モスクに向かって行進、アサド大統領支持を訴える写真やプラカードを掲げて、ジュダイダ街道地区を通過した。

デモ参加者がコーラ地区に到着すると、地元住民との間で小競り合いが起き、殴り合いに発展したが、現場にいたレバノン軍が事態を収拾した。

この衝突に関して、『アフバール・シャルク』(3月28日付)は、ムスタクバル潮流の支持者と、アサド政権を支持するヒズブッラーの支持者が衝突し、1人が銃で撃たれて負傷したと報じた。

ベイルート郊外のブルジュ・ハンムード(レバノン山地県)のナブア地区では、アサド大統領の写真を掲げるアラブ人労働者が集まり、大統領を支持するシュプレヒコールを連呼した。

一方、レバノン国営通信社NNAが伝えたところによると、シリア大使館周辺で、アサド政権に反対する約50人が行進を行った。

AFP, March 27, 2011、Akhbar al-Sharq, March 27, 2011, March 28, 2011, March 30, 2011, April 3, 2011、al-Hayat, March 28, 2011、Kull-na Shuraka’, March 27, 2011, March 28, 2011、Naharnet.com, March 27, 2011、NNA, March 27, 2011、Reuters, March 27, 2011、SANA, March 28, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之All rights reserved.