国連総会はシリアが反発するなか、同国での行方不明者の消息を調査するための独立機関の設置を決定する一方、安保理では越境(クロスボーダー)人道支援延長をめぐる審議が本格化(2023年6月29日)

国連総会(193ヵ国)は、2011年以降シリアで、当局によって拘束されるなどして失踪したとされる行方不明者約10万人の消息を調査するための独立機関(シリア・アラブ共和国における失踪者にかかる独立機関)の設置を定めた決議案を賛成多数で決定した。

決議案はルクセンブルグが提出、米英仏、日本など83ヵ国が賛成、シリア、ロシア、中国、イラン、キューバ、北朝鮮、ベネズエラなど11ヵ国が反対、インドなど62ヵ国が棄権した。

決議採択を受けて、シリアのバッサーム・サッバーグ国連代表は、この機関設置を定めて決議について、「シリアを標的とした、政治利用された新たな決議で、シリアの内政にあからさまに干渉しようとする姿勢を明らかに反映しており、米国を筆頭とする一部西側諸国がシリアに対して敵対的な手法を継続しようとするさらなる証拠だ」と非難した。

賛成した83ヵ国は、アルバニア、アンドラ、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、バハマ、ベルギー、ベニン、ボスニアヘルツェゴビナ、ブラジル、ブルガリア、カーボベルデ、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、キプロス、コートジボワール、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ、エクアドル、エストニア、フィジー、フィンランド、フランス、ガンビア、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、ホンジュラス、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、キリバス、クウェート、ラトビア、リベリア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、マーシャル諸島、メキシコ、ミクロネシア、モナコ、モンテネグロ、ミャンマー、オランダ、ニュージーランド、北マケドニア、ノルウェー、パラオ、パナマ、パプアニューギニア、ペルー、ポーランド、ポルトガル、カタール、韓国、モルドバ、ルーマニア、サモア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、スペイン、スリナム、スウェーデン、スイス、トンガ、トルコ、ウクライナ、英国、米国、ウルグアイ、バツアツ。

反対した11ヵ国、バラルーシ、ボリビア、中国、キューバ、北朝鮮、エリトリア、イラン、ニカラグア、ロシア、シリア、ザンビア。

棄権した62ヵ国は、アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、アゼルバイジャン、バーレーン、バングラデシュ、ベリーズ、ブルネイ、ブルンジ、カンボジア、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ、ジプチ、エジプト、エルサルバドル、エチオピア、ガボン、ガーナ、ガイアナ、インド、インドネシア、イラク、ヨルダン、カザフスタン、ケニヤ、キルギスタン、ラオス、レバノン、マダガスカル、マレーシア、モーリタニア、モーリシャス、モンゴル、モロッコ、ネパール、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、フィリピン、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サウジアラビア、セネガル、セルビア、シンガポール、ソロモン諸島、南アフリカ、スリランカ、タジキスタン、タイ、東チモール、トーゴ―、トリニダード・トバゴ、チュニジア、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウズベキスタン、ベトナム、イエメン。

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国連安保では、シリアの人道・政治情勢にかかる会合が開かれた。

会合では、マーティン・グリフィス国連人道問題担当事務次長とナジャート・ルシュディー国連シリア担当副特使が、7月10日に失効するシリアへの越境(クロスボーダー)での人道支援の期間を12ヵ月再延長するよう訴えた。

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これに対して、シリアのバッサーム・サッバーグ国連代表は、シリアにおける人道状況の改善には、シリアへの持続的な支援を充実させることが必要だとしたうえで、早期復旧プロジェクトへの支援を求めた。

また、難民の帰還をめぐる問題を政治利用すべきでないと主張するとともに、境界経由(クロスライン)による人道支援の輸送に何らの進展が見られず、越境支援では物資を届けることができない要支援者への支援が、テロ組織による境界経由支援への妨害によって行えていないと訴えた。


イナブ・バラディー(6月29日付)、SANA(6月29日付)などが伝えた。

AFP, June 29, 2023、ANHA, June 29, 2023、al-Durar al-Shamiya, June 29, 2023、Reuters, June 29, 2023、SANA, June 29, 2023、SOHR, June 29, 2023などをもとに作成。

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