米軍、あるいはイスラエル軍と見られる正体不明の航空機がダイル・ザウル県各所を爆撃、イラク・イスラーム革命防衛隊の士官、WHOの職員ら多数が死傷:シリア政府は米国の爆撃と主張、米国は否定(2024年3月26日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団、イナブ・バラディー(3月26日付)など複数メディアによると、正体不明の航空機複数機がシリア政府支配地各所の「イランの民兵」の拠点複数ヵ所を爆撃した。


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ダイル・ザウル県はフェイスブックの公式アカウント(https://www.facebook.com/DearEzzorGov/)を通じて、ファーディル・ナッジャール県知事とビラール・マフムード県警察署長が、アサド病院、ダイル・ザウル軍事病院を訪問し、負傷者を見舞ったと発表した。

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RIAノーヴォスチ通信(3月26日付)は地元情報筋の話として、正体不明の航空機複数機がダイル・ザウル市シリア軍の同盟部隊の司令部を攻撃、5人が死亡、30人あまりが負傷したと伝えた。

犠牲者のなかには、女性や子供を含む民間人15人も含まれているという。

また、マヤーディーン市の司令部も攻撃を受け、兵士数人が死亡したほか、ブーカマール市の本部を爆撃を受けたと伝えた。

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この攻撃に関して、シリア人権監視団は、イスラエル軍か米軍か特定し得ない正体の複数の航空機がダイル・ザウル県内の「イランの民兵」の拠点複数ヵ所を爆撃し、「イランの民兵」少なくとも18人が死亡、31人が負傷したと発表した。

死者の内訳は、イラン・イスラーム革命防衛隊の大佐で標的となった通信センターの責任者を務める軍事顧問1人、その護衛2人、イラク人9人、イラン・イスラーム革命防衛隊とともに活動するシリア人4人、レバノンのヒズブッラーとともに活動するシリア人1人、シリア人民間技師1人。

負傷者の内訳は、「イランの民兵」のメンバー21人、民間人10人。

(シリア人権監視団によると、重傷を負っていたイラン・イスラーム革命防衛隊の軍事顧問1人が27日に死亡した。)

複数筋によると、爆撃では、ブーカマール市内にある「イランの民兵」の拠点2ヵ所、アッバース村近郊の1ヵ所、ダイル・ザウル市ヴィーラート地区内の拠点1ヵ所が標的となった。

この爆撃に先立ち、ダイル・ザウル航空基地には、イラン・イスラーム革命防衛隊の隊員や兵站物資を乗せた貨物機1機が25日午後にダマスカス国際空港を出発、25日晩に到着していた。

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アイ・オブ・ユーフラテス(3月26日付)などによると、ダイル・ザウル市ヴィーラート地区内の拠点1ヵ所は、アフマド・アブドゥルムンイム氏が所有するヴィッラで、「ハッジー」を名乗るイラン人司令官によってワン・フロアが借り上げられ、イラン・イスラーム革命防衛隊が通信本部として使用していたという。

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イランのメフル通信(3月26日付)は、米国がシリアのダイル・ザウル県内にある抵抗枢軸の拠点複数ヵ所を攻撃したとしたうえで、イラン・イスラーム革命防衛隊の軍事顧問を務めるベフズール・ワヒーディー氏が死亡したと伝えた。

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ダイル・ザウル24(3月26日付)は、ダイル・ザウル市近郊のスッカリーヤ村に対しても爆撃が行われ、「ハーッジ・アスカル」を名乗るイラン・イスラーム革命防衛隊のイラン人司令官が負傷した。

「ハーッジ・アスカル」は「ハーッジ・メフディー」の名でも知られる人物で、ブーカマール市にある「イランの民兵」の司令部を統括しているという。

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その後、国防省はフェイスブックの公式アカウント(https://www.facebook.com/mod.gov.sy/)を通じて声明を出し、米占領軍が26日未明にダイル・ザウル県内の多数の町村と軍事拠点を狙って戦闘機と無人航空機(ドローン)で爆撃し、軍関係者7人と民間人1人が死亡、軍関係者19人と民間人13人が負傷、公共財産と私有財産に甚大な被害が生じたと発表した。

SANA(3月26日付)が伝えた。

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この攻撃を受けて、外務在外居住者省は非難声明を出した。

声明の内容は以下の通り。

米占領軍が、シオニスト政体の部隊と交互に地域情勢を煽り、この地域においてシリア、パレスチナ、そして米・シオニスト軍が犯す虐殺に立ちはだかるそのほかの国々において攻撃的行為を拡大させるため、国際的に非難されているこの二国の目的に資する役割をはたしていることが明らかになった。これは、中東地域全体の緊張の火にブラを注ぎ、爆発・炎上させ続けようとするだけのものだ。なぜなら、米国は、ある場所が沈静化すると、別の場所で事態を炎上させ、中東を混乱させ、国連が規定する公正かつ包括的和平の実現から遠ざけようとしているからだ。

このことに基づき、シリアはこの攻撃を非難し、自衛権を行使し、国際法が定める方法で攻撃に制裁を科すことを確認する。シリアは自らの領土を攻撃し、その国民に対して犯罪を行う者を忘れることはできない。

米国は、国際法と国際人道法において非難の対象となっている口実のもとで、世界の警察官を自認してきた。このことに基づき、米国は、シリア領内に呈する違法な駐留と、資金や武器の供与、最近になって複数の周知の場所において発生したようなテロ犯罪行為の煽動といった、ダーイシュ(イスラーム国)とその他のテロ組織への公然たる支援を終わらせねばならない。

シリアは主権、自由、独立を守り、人権を確立するために闘い続ける世界の国々に対して、この攻撃を非難し、拒否を表明し、地域における違法駐留と軍事テロ活動を終わらせるよう米国に求めるよう要請する。

SANA(3月26日付)が伝えた。

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これに関して、サブリナ・シン国防総省報道官は記者団に対して、「我々は昨晩、シリアで爆撃を行っていない」と述べ、関与を否定した。

 

ロイター通信(3月26日付)が伝えた。

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ロイター通信(3月26日付)は、イマード・シハーブ世界保健機関(WHO)に勤務し、ダイル・ザウル市内の水道、衛生部門の中心人物だった技師のイマード・シハーブ氏が死亡したと伝えた。

AFP, March 26, 2024、ANHA, March 26, 2024、Deirezzor 24, March 26, 2024、Eye of Euprates, March 26, 2024、‘Inab Baladi, March 26, 2024、Mehr News, March 26, 2024、Reuters, March 26, 2024、RIA Novosti, March 26, 2024、SANA, March 26, 2024、SOHR, March 26, 2024、March 27, 2024などをもとに作成。

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