イスラエル軍はアレッポ市近郊の銅精錬工場を爆撃し、イラン・イスラーム革命防衛隊の顧問ら17人を殺害(2024年6月3日)

国防省はフェイスブックの公式アカウント(https://www.facebook.com/mod.gov.sy/)を通じて声明を出し、イスラエル軍が3日午前0時20分頃、アレッポ県南東方面からアレッポ市一帯の複数ヵ所に対して航空攻撃を行い、多数が死亡、物的被害が生じたと発表した。

SANA(6月3日付)が伝えた。

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スプートニク・アラビア語版(6月3日付)によると、攻撃はハイヤーン町一帯を狙ったもので、シリア軍防空部隊が迎撃を試みたものの、ミサイルが同町近くの銅精錬工場を直撃した。

 

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シリア人権監視団によると、「シリア人および外国人からなるイランの民兵」が支配するハイヤーン町とタームーラ村の間に位置する銅精錬工場一帯、「イランの民兵」の武器弾薬庫で複数回の爆発が発生した。

爆発は、シリア政府の支配下にあるアレッポ県西部農村地帯からシャーム解放機構の支配下にある県西部のカフル・アンマ村、カフル・ヌーラーン村にある同機構など諸派の陣地複数ヵ所を狙ってブルカーン重ロケット砲複数発での砲撃が行われた直後に行われた。

爆撃が行われた一帯には、S300長距離地対空ミサイルシステムが配備されているロシア軍の陣地やシリア軍第4師団の検問所も点在する。

イスラエル軍の爆撃で、「イランの民兵」のシリア人メンバー9人、イラク人メンバー3人、レバノンのヒズブッラーのメンバー3人、そしてイラン・イスラーム革命防衛隊の顧問1人を含むイラン人2人の計17人が死亡した。

シリア領内に対するイスラエルの攻撃で、イラン人が死亡するのは、4月初めの首都ダマスカスにあるイラン大使館(領事官)へのミサイル攻撃以来、約2ヵ月ぶり。

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シリア人権監視団によると、イスラエル軍によるシリアへの攻撃は、6月に入って初めて、今年に入って44回目(うち32回が航空攻撃、12回が地上攻撃)で、これにより92あまりの標的が破壊され、軍関係者164人が死亡、69人が負傷しているという。

同監視団によると、軍関係者の死者内訳は以下の通りである。

イラン人(イラン・イスラーム革命防衛隊):23人
ヒズブッラーのメンバー:33人
イラク人:15人
「イランの民兵」のシリア人メンバー:44人
「イランの民兵」の外国人メンバー:10人
シリア軍将兵:40人

また、民間人も13人(女性2人と子供1人を含む)が死亡、20人あまりが負傷している。

攻撃の県別内訳は以下の通りである。

ダマスカス県、ダマスカス郊外県:18回
ダルアー県:13回
ヒムス県:6回
クナイトラ県:3回
タルトゥース県:2回
ダイル・ザウル県:1回
アレッポ県:2回

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ロシア外務省は声明を出し、イスラエル軍の攻撃に関して、シリアの主権と国際法の基本規範に著しく違反しているとしたうえで、大規模な武力拡大を誘発する可能性があるとして、これを非難した。

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イラン学生通信(ISNA、6月3日付)によると、死亡したイラン・イスラーム革命防衛隊の顧問はサイード・エブラール氏。

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シリア人権監視団などによると、暗殺されたサイード・エブヤール氏は、シリア国籍を取得した6人のアフガニスタン人とイラク人とともに、銅精錬工場の瓦礫の下から遺体で発見された。

複数筋によると、エブヤール氏は6月1日に視察のため現地入りしていた。

エブヤール氏は、イラン・イスラーム革命防衛隊の精鋭部隊の司令官の1人。

AFP, June 3, 2024、ANHA, June 3, 2024、‘Inab Baladi, June 3, 2024、ISNA, June 3, 2024、Reuters, June 3, 2024、RIA Novosti, June 2, 2024、SANA, June 3, 2024、Sputnik Arabic, June 3, 2024、SOHR, June 3, 2024、June 6, 2024などをもとに作成。

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