スワイダー県では、ドゥルーズ派の民兵と、アフマド・シャルア移行期政権の国防省および内務省の合同部隊および遊牧民部族の民兵の戦闘が続いた。
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スワイダー24は、速報で以下の通り伝えた。
5:16 カナーキル村周辺で、再び激しい交戦が発生、銃撃音や爆発音が激しく響いている。
11:53 国防大臣は、スワイダー市内に展開しているすべての作戦部隊に対して、都市の有力者および名士らとの合意を受け、完全な停戦を実施するよう命じたと発表、また、応戦は発砲元への限定的な対応にとどめるよう要請した。
11:59 スワイダー市では、治安部隊および国防省部隊の進入と市街地への展開を受けて、市民による大規模な避難が発生。
12:30 政府軍の兵士らがスワイダー市中心部の主要商業通りの一つである幹線道路に進入し、商店が略奪・放火される様子を映した映像が公開された。同市に進入した部隊内では大混乱が生じており、一部の兵士らが市民に対する略奪・襲撃を行う一方で、別の部隊が被害を受けた住民に対して「これは個人による行為であり、我々を代表するものではない」と主張し、苦情の提出を呼びかけているという。
13:22 スワイダー市内のラドワーン家の接待所にいた民間人のうち10人以上が負傷、一部が政府軍部隊の即決処刑により死亡したと見られる。
14:54 スワイダー市に進入した政府軍部隊が実行した即決処刑によりラドワーン家の接待所にいた無辜の民間人9人が殺害された。
16:34 スワイダー市の複数の前線で、即決処刑や人権侵害への住民の怒りが高まり、激しい衝突が発生。
14:52 スワイダー市内バーシャー広場付近において朝、軍のバトロール部隊が兄弟3人を母親の目の前で即決処刑した。
16:58 スワイダー国立病院の周辺で銃撃戦が発生。
17:53 スワイダー市中心部の県庁舎および警察本部付近で激しい銃撃戦が発生。
19:27 スワイダー市に軍が突入した今朝、バーシャー交差点近くの自宅を離れ、避難を試みていた家族3人との連絡が途絶えている。
20:13 地元関係者および医療関係者によると、スワイダー市に突入した軍隊による即決処刑の犠牲者数は、20人(うち女性2人)を超えた。うちラドワーン家の接待所での死者は13人、負傷者3人、バーシャー交差点付近での死者は6人。
22:03 大サギーラ村にあるキリスト教会(聖ミカエル教会)が被害を受け、一部が破壊された。村は13日にブラーク村方面から襲撃を受け、現在も政府軍および武装グループが支配している。
20:28 スワイダー市立競技場近くの救援センターで火災が発生、衝突や銃撃の発生が報告された。
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また、シリア人権監視団によると、サアラ村のマズルーマ家の接待所でも、女性1人を含む4人の市民が処刑された。
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SANAによると、ダッラーティー司令官らアフマド・シャルア移行期政権の代表らが、ドゥルーズ派の宗教指導者の1人で、戦闘停止に向けた仲介を主導していたユースフ・ジャルブーウ師らと会談した。

会談のなかで、ジャルブーウ師は、すべての市民をあらゆる侵害や越権行為から守る国家の選択こそが、今日の唯一の望みであると強調し、スワイダー県民はシリア国家と祖国への帰属を堅持しており、いかなる外部勢力への傾倒も断じて容認しないと述べた。
一方、ダッラーティー司令官は、国家はいかなる違反や越権も容認せず、それが生じた場合の責任を国家が負うと表明、スワイダー市の治安は内務治安司令部の部隊が担い、軍は違反行為を防止するために市外へ再配置されたと述べた。
これを受けて、SANAによると、国防省の広報通信局は声明を出し、スワイダー市への進入を開始したと発表、住民に対して可能な限り外出を控え、法に反する武装グループの動きがあれば、速やかに当局へ通報するよう呼びかけた。
ムワッヒド・ドゥルーズ・ムスリム精神指導部は午前8時17分、フェイスブックを通じて声明を出し、流血の回避と県内の治安と安定の回復を最優先とみなし、これを達成するには、国家が公的機関、とりわけ治安・軍事機関を通じて県に対する権限を行使することが不可欠であるとしたうえで、以下の通り表明した。
1. 内務省および国防省の部隊が治安・軍事拠点を掌握し、県の治安を確保するために進入することを歓迎する。
2. スワイダー県内のすべての武装勢力に対し、内務省の部隊と協力し、その進入を妨害せず、武装解除のうえ内務省に武器を引き渡すよう呼びかける。
3. 今回の事態の影響に対処し、国家機関を再び機能させるため、県内の人材や専門家と連携したうえで、シリア政府との対話を開始することを求める。
これに関して、内務省は午前8時45分、フェイスブックを通じて、スワイダー県のアフマド・ダッラーティー内務治安司令官(准将)が、ムワッヒド・ドゥルーズ・ムスリム精神指導部の声明発表に歓迎の意を示したと発表した。
ダッラーティー司令官はまた、他の宗教指導者や有力者らに対しても、国家の治安維持と統治権確立を支援するため、内務省の措置を支持する統一姿勢をとるよう呼びかけるとともに、法に反する武装グループとその指導者たちに対し、内務省と国防省の部隊の進入を妨げるような行為をやめ、協力体制をとるよう要請した。
しかし、ムワッヒド・ドゥルーズ・ムスリム精神指導部は午前10時19分、フェイスブックを通じて、ドゥルーズ派の最高宗教指導者であるヒクマト・ヒジュリー師のビデオ声明を発表した。
フジュリー師は声明のなかで、ムワッヒド・ドゥルーズ・ムスリム精神指導部の声明について以下の通り述べ、これを否定、暴力での弾圧を試みるアフマド・シャルア移行期政権を厳しく非難した。
強い圧力と強制の下で発表されたものであり、我々の自由な意思によるものではない。
その内容は我々の信念を代表するものではなく、今後もこのような声明には一切責任を負わない。
スワイダー県が暴力と戦闘の場と化すことは絶対に認められない。
良心も宗教も流血を容認しない。
知恵と尊厳を保ち、暴力による命令や圧力を拒絶するよう呼びかける。
人々の尊厳を守る対話こそが解決策であり、弾圧では何も解決しない。我々は子どもたちを売ることも、自由を取引の材料とすることもない。
山地(スワイダー県)を屈服させられると思っている者は幻想に生きている。
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内務省は、スワイダー市で国防省と内務省の合同部隊、遊牧民部族の武装グループの一部が住民に対して即決処刑を行っているとの情報が確認されたことを受るかたちで、午前11時50分、フェイスブックを通じて、同市に展開している国防省と内務省の合同部隊に対して、任務遂行中に公私の財産に対するいかなる違法行為も、いかなる名目でも容認されないとしたうえで、こうした行為への関与が確認されたあらゆる要員に対して、内務省は一切の容赦なく、厳正な法的措置を講じると発表した。
また、SANAによると、大統領府は、すべての公的・私的機関に対して、一切の越権・違反行為を禁止するよう通達した。
また、すべての監査・執行機関に対し、違反や不正が確認された者に対しては、その地位や階級を問わず、直ちに法的措置を講じるよう命じた。
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国防省は23時25分、フェイスブックを通じて、ムルハフ・アブー・カスラ国防大臣が、スワイダー市内で活動中のすべての部隊に向けて以下の命令を発表した。
市内の有力者および長老たちとの合意に基づき、スワイダー市内における完全な停戦を実施する。これ以降、発砲は禁止とし、応戦は敵からの攻撃に対してのみ行うものとする。すなわち、違法武装集団による攻撃があった場合に限り、その発砲元を特定し、対応すること。
国防省はまた、23時52分にフェイスブックを通じて別の声明を発表した。
声明の内容は以下の通り。
スワイダー市に駐留するすべての部隊に対し、住民の安全確保、社会的平穏の維持、ならびに公共および私有財産の保護を徹底するよう厳格な指示を出した。悪意ある者による略奪や破壊行為を未然に防ぐためである。
掃討作戦が完了次第、スワイダー市内の各地区は順次、治安維持を担う内部治安(司令部)部隊に引き渡す予定である。これにより混乱の収束、住民の帰還、そして都市の安定回復を図る。
スワイダー市内における軍の行動を監督・是正するため、憲兵隊の展開を開始するよう指示を出した。軍の規律維持と違反行為の取り締まりを徹底する。
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内務省は午後8時40分、フェイスブックを通じて、スワイダー県の現況についての声明を発表した。
声明では、市内の一部地域では依然として衝突が続いているものの、アフマド・シャルア移行期政権はスワイダーの有力者や宗教指導者たちと連携し、全面的な支配の回復と恒久的な治安と安定の確保に向けて集中的な努力を続けていると表明された。
また、内務省の治安部隊は国防省の部隊と連携し、法に背く武装グループをスワイダー市中心部から排除し、民間人を保護し、市内に安定を取り戻すことに成功したと主張している。
さらに、この作戦ののち、ダッラーティー司令官と宗教指導者・地元有力者らとの間で大規模な会合が開催され、市内に治安部隊の拠点を設置し、軍の車両と部隊を撤収させることで合意が成立したことが発表されたが、合意はすぐに破られ、法に背く武装グループが再び治安部隊や警察部隊を狙った奇襲攻撃を仕掛け、地域の安定と合意形成の破壊を図った。
加えて、より深刻な事態として、イスラエル軍がこれらの武装グループを支援して、スワイダー市などを爆撃、内務治安部隊およびシリア軍兵士の殉職者が出たことを明らかにした。
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シリア人権監視団によると、13日に発生したドゥルーズ派民兵と、アフマド・シャルア移行期政権の国防省および内務省の合同部隊、遊牧民部族の武装グループとの戦闘での死者は203人となった。
内訳は以下の通り。
●スワイダー県出身者:71人(うち子ども4人、女性2人)
●国防省・治安機関関係者:111人(うち遊牧民18人)
●即時処刑者:21人(うち女性3人、国防省および内務省の兵士による銃殺)
スワイダー市各所(マスラフ地区、ジャラー地区、クーム街道地区)、ラサース村、カナワート市では、アフマド・シャルア移行期政権の国防省および内務省の合同部隊、遊牧民部族の武装グループが市内の住宅街を迫撃砲弾で砲撃、砲弾が着弾した。
戦闘の影響で、スワイダー市の市場ではほぼ完全な麻痺状態となり、大多数の商店が砲撃や略奪を恐れて営業を控えたほか、マズラア町、カナーキル村、サアラ村などの前線では、多くの家族が戦闘を避けて避難した。
一方、ハマー県やヒムス県から首都ダマスカスへ向かう国防省部隊の車列も確認された。
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トーマス・バッラク在トルコ米大使兼務シリア担当特使はXを通じて以下の通り発表した。
我々は、シリア国内のすべての関係者と積極的に関与し、沈静化と建設的な統合に向けた議論を前進させる努力を続けている。
最近のスワイダー県での衝突は、すべての側にとって憂慮すべき事態であり、我々はドゥルーズ派、ベドウィン部族、シリア政府、そしてイスラエル軍のそれぞれが受け入れられるような平和的かつ包摂的な解決を模索している。
情報の錯綜や誤導、非効率なコミュニケーションこそが、各当事者の利害を平和的かつ慎重に統合する上で最大の課題である。
我々は、すべての側と直接的かつ建設的な協議を行い、沈静化と統合に向けた道筋をともに探っている。
レバノンの進歩社会主義党の前の党首のワリード・ジュンブラート、カタール外務省、ヨルダン外務省、バーレーン外務省は、アブー・カスラ国防大臣によるスワイダー市での停戦発表に歓迎の意を示した。
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ANHAによると、シリア民主評議会のライラ・カラマーン共同議長は、ラッカ県ラッカ市で開催された同評議会女性局の会議で、スワイダー県での戦闘について言及し、そのなかで同県住民との連帯を表明、アフマド・シャルア移行期政権に対してスワイダー県、ダルアー県、ダマスカス県、そして北・東シリア地域を含むすべての地域・社会成員と対話の扉を開くよう求めた。

また、ANHAによると、シリア民主軍に所属する女性防衛部隊(YPJ)は声明を出し、アフマド・シャルア移行期政権による攻撃を強く非難するとともに、衝突のきっかけとなった強盗事件の被害者のファドルッラー・ダウワーラ氏の母親ファウズィーヤ・ファフルッディーン・シャッラーニー氏の抵抗を称賛した。
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