イスラエル軍がスワイダー市に進攻したシャルア移行期政権の国防省・内務省部隊を狙って爆撃を実施:ネタニヤフ首相とカッツ国防大臣はイスラエルへの脅威となる兵力および武器の進入の阻止、ドゥルーズ派の保護を主張(2025年7月15日)

シリア人権監視団によると、イスラエル空軍は、スワイダー市内に展開していたアフマド・シャルア移行期政権の国防省部隊(シリア軍)所属の戦車1両を狙って爆撃を実施、これを完全に破壊した。

爆撃は、国防省部隊の大規模な軍用車列が市内に進入し、各地区で広範に展開を始めたことを受けた者。

シリア人権監視団によると、イスラエル空軍はまた、スワイダー市西部の入り口付近でシリア軍の車列を標的とした2度目の爆撃を実施、これにより兵士1人が死亡した。

シリア人権監視団によると、イスラエル空軍はさらに、スワイダー市中心部にある警察本部付近の内務省総合治安局部隊の集結地点を狙って爆撃を実施した。

スワイダー24も16時5分、イスラエル軍が、スワイダー市中心部の警察本部付近に集結していた治安部隊を標的として爆撃を実施した。また、この約2時間前には、刑事治安局近に集結していた別の部隊に対しても爆撃が行われたと報じた。

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シリア人権監視団によると、イスラエル空軍は、ダルアー県イズラア市のシリア軍第12旅団基地一帯の拠点を狙って2回にわたっての爆撃を実施した。

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イスラエル首相府は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とイスラエル・カッツ国防大臣による共同声明し、スワイダー県を爆撃したと発表した。

声明の内容は以下の通り。

ネタニヤフ首相およびカッツ国防大臣は、シリアのドゥルーズ地域に対するシリア(移行期)政権による攻撃を受け、直ちにイスラエル軍に対し、スワイダー県のドゥルーズ山地域に進入した政権軍および同地域に持ち込まれた兵器に対して攻撃を行うよう指示した。これらは、イスラエルが決定した非武装化政策に反しており、シリア南部におけるイスラエルへの脅威となる兵力および武器の進入を防止する方針に反するものであった。
イスラエルは、イスラエル国内のドゥルーズ派市民との「血の契約」および、シリアのドゥルーズ派との歴史的・血縁的なつながりに基づき、シリアのドゥルーズ派への危害を阻止することを約束する。我々はシリア(暫定)政権がドゥルーズ派に危害を加えることを阻止し、我が国との国境に隣接する地域の非武装化を確保するために行動している。

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サウジアラビア外務省カタール外務省イラク外務省ヨルダン外務省は、イスラエル軍によるスワイダー県への爆撃など度重なる攻撃を非難した。

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シリア人権監視団によると、2025年初め以降、イスラエルはシリア国内に対して67回の攻撃を行っている。

うち57回が爆撃、10回が地上攻撃で、これらの攻撃による被害は以下の通り。
●破壊された標的:約99ヵ所(武器・弾薬庫、軍事施設、司令部、車両など)
●死者:37人
o 軍関係者:10人(負傷者21人)
o 身元不明:3人(うち2人はレバノン国籍)
o 民間人:15人(負傷者3人)
o 武器を携帯していた民間人:9人

爆撃の県別内訳は以下の通り。
●アレッポ県:1件(7発)
●ダマスカス県とダマスカス郊外県県:17件
●スワイダー県:8件(うち1件では4発)
●ヒムス県:8件(うち2件はレバノンとの非合法国境地帯)
●クナイトラ県:6件
●ダルアー県:9件
●タルトゥース県:2件
●ラタキア県:4件
●ハマー県:2件

地上攻撃の県別内訳は以下の通り。
●ダルアー県:5件(死者16人)
●ダマスカス郊外県:1件
●クナイトラ県:4件

なお、イスラエル軍は2024年12月8日にアサド政権が崩壊して以降、同年末までに は、約500回の爆撃を実施し、シリア軍の武器庫を事実上壊滅させている。

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