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反体制勢力の動き
クッルナー・シュラカー(8月25日付)によると、ラタキア県で活動するファトフ・ムビーン旅団のマーズィン・クナイフィダ司令官が、自由シリア軍合同司令部軍事評議会を辞任した。
「ラタキア県郊外での最近の戦闘で、旅団に何らの軍事支援も行われなかった」ことが辞任の理由だという。
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クッルナー・シュラカー(8月24日付)によると、反体制活動家のタウフィーク・ドゥンヤー氏とバッサーム・ユースフ氏がシリア革命反体制勢力国民連立から脱会した。
ドゥンヤー氏とユースフ氏はいずれもアラウィー派で、ドゥンヤー氏は「シリアキリスト教徒平和機構」諮問評議会メンバー。
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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長はイスタンブールでトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣と会談した。
会談後、ジャルバー議長は「国連調査団は今、シリアに、そしてダマスカスにいる。我々は同調査団にダマスカスから2キロしか離れていない現場に向かって欲しい」としたうえで、「シリア国民を保護するため飛行禁止空域と安全地帯を設置」するようトルコ側に求めたことを明らかにした。
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クッルナー・シュラカー(8月24日付)は、自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース議長が、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長とイスタンブールで記者会見を開き、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、8月8日のダマスカス県での反体制武装集団によるアサド大統領の車列への攻撃への報復だと断じた。
イドリース参謀長はまた、車列の攻撃で空軍情報部長のジャミール・ハサン少将が負傷したと主張した。
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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、レバノン北部県トリポリ市のモスクでの同時爆弾テロ(23日)、ベイルート郊外ダーヒヤでの自爆テロ(15日)に関して、「犯罪者体制が炎上をもくろむ内乱計画の様相」を帯びていると断じ、アサド政権が事件の背後にいると主張した。
シリア政府の動き
ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、マヤーディーン・チャンネル(8月24日付)に「化学兵器使用はタクフィール主義者による犯罪であり、ダマスカスは国連と協力している…。ダマスカスが化学兵器を使用したという主張は、シリア国民と政府に対する新たなごまかしだ」と述べた。
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シリアのウムラーン・ズウビー情報大臣は、シリア・アラブ・テレビ(8月24日付)のインタビューで「我々はグータ地方であれ、シリア国内のそれ以外の地域であれ、いかなる化学兵器も決して使用していない」と述べた。
国内の暴力
ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区を軍が空爆し、反体制武装集団と交戦したほか、ヤルムーク区を砲撃した。
一方、SANA(8月24日付)は、高官筋の話として、ジャウバル区で軍が反体制武装集団との交戦中に、軍兵士多数が窒息などの中毒症状を訴えたと報じた。
同高官によると、「武装テロ集団が化学兵器を使用した」ことによる症状だという。
その後、軍はジャウバル区内の反体制武装集団の武器庫を制圧し、「サウジアラビア製」、カタール・ドイツ製薬会社」と書かれた缶のなかに保管されていた有毒ガスを押収したという。
これを受け、軍武装部隊総司令部は声明を出し、ジャウバル区での戦闘で、軍が化学物質製造に用いられる原材料、ガス・マスク、解毒に使われる薬品を押収したと発表、「武装テロ集団が国民と軍に対して化学兵器を使用し、外国の関与のもと化学兵器使用に必要なすべてが供与されることを示す」との見解を示した。
このほか、SANA(8月24日付)によると、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アイン・タルマー市、スバイナ町を軍が空爆し、反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(8月24日付)によると、ドゥーマー市、ランクース市郊外、ヤブルード市、アドラー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、シャーム自由人大隊とシャームの鷹旅団は声明を出し、アリーハー市南部入り口のトンネル、丘陵地と、同市南西部入り口の公園施設、同市北部のカフルナジュド橋検問所を制圧したと発表した。
これに関して、シリア人権監視団は、反体制武装集団がイドリブ市に1週間におよぶ攻撃で、同市およびその周辺地域をほぼ完全に制圧したと発表した。
これに対して、軍は、アリーハー市および周辺地域を空爆し、3人が死亡したほか、カフルラーター市、ラーミー村に対しても砲撃を行った。
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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、山間部での軍が反体制武装集団と交戦し、戦闘員3人を殺害した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ワーディー・サーイフ地区、グータ地区に対して、軍が砲撃を加えた。
一方、SANA(8月24日付)によると、ヒムス市クスール地区、ワーディー・サーイフ地区、ワルシャ地区、ハミーディーヤ地区、バーブ・フード地区、カラービース地区、サアン村、ガントゥー市、ダール・カビーラ村、バイト・ハッジュー市、アーミリーヤ市、キースィーン市、ブルジュ・カーイー村、タルビーサ市、ガジャル・ラスタン街道、タドムル市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ジュッブ・ラムラ村、タッル・アトマーン村検問所で、軍と反体制武装集団が交戦し、またアシャーリナ村では、子供1人が死亡、複数の兵士と国防隊戦闘員が負傷した。
またカフルズィーター市が砲撃を受け、複数人が負傷する一方、反体制武装集団はサルハブ市の軍検問所を襲撃した。
一方、SANA(8月24日付)によると、サルハブ市に反体制武装集団が撃った迫撃砲が着弾し、4人が負傷した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市各所、ナワー市、タッル・シハーブ町、タスィール町、ウンム・マヤーズィン町、ナスィーブ村を軍が空爆し、反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(8月24日付)によると、ブスラー・シャーム市、ダルアー市、ムザイリーブ町、タッル・シハーブ町、バサーラ市、タファス市、ダーイル・タファス農道、ナワー市、フラーク市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハサカ県では、SANA(8月24日付)によると、ウンム・トゥワイナ村、ハサカ市北部入り口で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
クルド・オンライン(8月26日付)によると、ハサカ市で何者かがクルド人活動家3人を襲撃、負傷させた。
諸外国の動き
チャック・ヘーゲル米国務長官は、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、記者団に対し「国防総省は大統領がいかなる選択肢を選んでも対応できるよう、部隊や軍備を配置する責任がある」と述べ、オバマ大統領から軍事的な選択肢を示しよう指示されたことを明らかにした。
またロイター通信(8月24日付)によると、米軍は地中海から帰還予定だった巡航ミサイル(トマホーク)搭載の駆逐艦1隻の帰任を延期し、シリア西方の海域に追加配備すると報じた。
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イスラエル国営ラジオ(8月24日付)は、複数の消息筋の話として「シリアでの米軍の作戦は、アサド政権の崩壊をめざすものではなく、空と海からのミサイル攻撃に限定されることになろう」と報じた。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、ヨルダン川西岸ラーマッラー市でのパレスチナ自治政府のラーミー・ハムドリッラー首相と会談した。
会談後、ファビウス外務大臣は、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して「我々が持っているすべての情報は、ダマスカス郊外で化学兵器による虐殺が行われたことを確証させ、アサド政権がその背後にいることを示している」と断じた。
そのうえで「(化学兵器使用に関する)国際調査団が至急、現場に向かうことができるよう求める…。アサド政権に隠すものがなければ、調査を直ちに行わせよう」と述べた。
『ハヤート』(8月25日付)が報じた。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は支持者を前に演説し、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、「殺人独裁者のアサドがそれ以外の虐殺と同様、それ(化学兵器使用)を犯した張本人だ」と述べた。
『ハヤート』(8月25日付)が報じた。
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イラン外務省のアッバース・アラークジー報道官は、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、「シリアでの化学兵器使用に関する情報を非常に懸念している。我々は、こうした兵器の使用を厳しく非難する…。テロ集団がこうした行為を行った複数の証拠がある」と述べた。
またアラークジー報道官は「シリアへの軍事介入は国際社会において承認されていない。我々は地域におけるさらなる緊張以外の何ものをも後押ししないあらゆる行動、発表に警鐘を鳴らす」としたうえで、「米国首脳の挑発的発言や戦艦の(シリア沖への)派遣は、事態正常化にまったく資さず、地域情勢をさらなる危険に陥れるだけだ…。イランはこれまでに何度も、軍事的解決は不可能だと発表してきた」と強調した。
『ハヤート』(8月25日付)が報じた。
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イラクのヌーリー・マーリキー首相は声明を出し、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して懸念を表明、国連調査団による調査を求めた。
『ハヤート』(8月25日付)が報じた。
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国境なき医師団は声明を出し、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、現地で活動する医療スタッフからの情報として、神経ガスを受けた際の症状を抱える約3,600人の患者を同県の医療施設3カ所が受け入れ、うち355人が死亡したと発表した。
声明によると、患者が収容されたのは21日朝。
国境なき医師団はシリア北部においてスタッフを派遣し、医療活動を行う一方、治安上の理由からスタッフを派遣できない地域については、現地の医療ネットワークに医薬品、技術サポートなどを提供している、という。
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レバノン訪問中のオーストラリアのボブ・カー外務大臣は、23日のレバノン北部県トリポリ市のモスクでの同時爆弾テロに関して、「ヒズブッラーや、アル=カーイダ、ヌスラ戦線といった過激集団がシリアの紛争に参加したことで、レバノンの安定に影響が及ぶ」と述べた。
NNA(8月24日付)が報じた。
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イスラーム・マグリブ諸国のアル=カーイダ機構は声明を出し、23日のレバノン北部県トリポリ市のモスクでの同時爆弾テロに関して、ヒズブッラーの犯行だと断じた。
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バラク・オバマ米大統領は、国家安全保障会議を開き、ジョー・バイデン副大統領、チャック・ヘーゲル国防長官らとシリア情勢への対応を協議した。
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バラク・オバマ米大統領は英国のデヴィッド・キャメロン首相と電話で会談し、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張について協議した。
英国首相府によると、会談において両首脳は「深刻な懸念」を示し、化学兵器使用が事実であれば「国際社会による重大な対応」とることを確認した。
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イスラエルのテレビ・チャンネル2(8月24日付)は、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に関して、ダマスカス県郊外県西部の山岳部にあるシリア軍第4機甲師団所属の第155旅団の基地から、化学兵器が発射されたとのレポートを報じた。
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アゼルバイジャンのニュース・サイト「トレンド」(8月24日付)によると、8月24日から25日にかけて、トルコ人のハッカーがSANAのサイトにサイバー攻撃を行い、同サイトは一時視聴できなくなった。
同報道によると、このサイバー攻撃は、ダマスカス郊外県東グータ地方などで軍が化学兵器を使用したとの反体制勢力の主張に呼応した抗議行動だという。
AFP, August 24, 2013、Champress, August 24, 2013、al-Hayat, August 25, 2013, August 26, 2013、Kull-na Shuraka’, August 24, 2013, August
26, 2013、Kurdonline, August 24, 2013, August 26, 2013、al-Mayadeen, August
24, 2013、Naharnet, August 24, 2013、NNA, August 24, 2013、Reuters, August
24, 2013、SANA, August 24, 2013、Trend.az, August 24, 2013、UPI, August 24,
2013などをもとに作成。
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