2013年7月22日のシリア情勢

反体制勢力の動き

シャームの民のヌスラ戦線のアミールを名のるアブー・ムハンマド・ジャウラーニーはインターネット・サイトを通じて音声声明を出し「我々イスラーム教徒は、政治プロセス、政党、議会選挙を信じない。我々はシューラーが定着し、公正が広まるイスラーム的支配体制を信じる」と述べた。

また「シャリーアを確立するための我々の道とは、アッラーのためのジハードである。シャリーアは、人間が定めた束縛や法から地上のすべての人間を解放する」と強調、「イスラームにあるべき役割を回復させる」ため、「シャームの地で祝福されたジハード運動」を行うよう呼びかけた。

一方、西側諸国の姿勢に関して「敵は、イスラームの地からが再生することを察知し、アメリカや西側諸国やただちに、我々をテロ組織に認定した…。外国勢力は、現地でのパワー・バランスの維持をめざし、紛争当事者に政治プロセスを受け入れるよう強いるため、さまざまな方面から圧力をかけている」と非難した。

さらにヒズブッラーに関しては「この政党を運営する者たちの愚行に関して、アッラーに感謝する。この政党の支持者たちのスンナ派に対する隠された憎しみを暴露してくれた」と非難、「この党を支援し、シリアとレバノンでの犯罪に賛同するすべての勢力」に対して、ヒズブッラーへの支持をやめるよう呼びかけた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、アブドゥルアズィーズ・ハイイル死亡に関する報道に関して、身柄拘束中の他のメンバーとともに「その消息に大いなる懸念」を表明した。

シリア政府の動き

アサド大統領は2013年法令第267号を発し、アミーラ・アブドゥー・ガーニムを人民議会議員に任命した。

同議員の任命は、ムハンマド・フルウ・フルウ人民議会議員の離反とトルコへの逃亡(2012年11月)によるハサカ県選挙区B部門の欠員を補充するための措置。

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カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣がロシアを訪問し、セルゲイ・ラヴロフ外務大臣と会談、シリア情勢について協議した。

複数の外交筋によると、会談で、ラヴロフ外務大臣は「シリア国内のテロリストを放逐するため、シリアの政府と反体制勢力双方の努力を結集する」必要があり、「(ジュネーブ2)大会の主要議題の一つになるべきだ」との見解を示した。

一方、ジャミール副首相は、S300防空システムの供与に関して、「(供与にかかる)契約は継続されており有効だ」と述べた。

AFP(7月22日付)が報じた。

クルド民族主義勢力の動き

イラク・クルディスタン地域のマスウード・バールザーニー大統領は、イラク、イラン、シリア、トルコのクルド人の「統一民族戦略」を設定するための「クルド民族大会」の開催を呼びかけた。

これに関して、シリア・クルド・イェキーティー党のムスタファー・ウースーは『ハヤート』(7月23日付)に、ラマダーン月中に「クルド民族大会」が開催される見込みだと述べる一方、各国のクルド民族主義組織に代表者を比例配分するための準備委員会が設置され、民主連合党、シリア・クルド国民評議会に代表者のポストが割り当てられることを明らかにした。

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シリア・クルド・イェキーティー党のムスタファー・ウースーは『ハヤート』(7月23日付)に「西クルディスタン人民議会は、武力を通じて現地で覇権を押し付け、自分たち以外の組織を排除しようと、最近になって幾つかの措置を単独でとった」と述べ、民主連合党による自治政府樹立の試みを批判した。

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シリア・クルド左派党のシャラール・カッドゥーは『ハヤート』(7月23日付)に「シリアのクルド人勢力どうしの意見の相違は、我々が祖国、歴史、言語を有するクルド人民であると承認することを拒否する一部の者たちが言っているほどのレベルではない」と述べつつ、「客観的状況が満たされれば、クルド人は独自の政府を樹立するだろう。しかし現状はそれにふさわしくないと考える。なぜなら、シリア国民の運命がどうなるか分からないからだ」と述べ、自治政府樹立に消極的な姿勢を示した。

国内の暴力

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、イラク国境に近いスワイディーヤ村周辺で民主連合党人民防衛部隊がシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国と交戦し、サラフィー主義戦闘員5人を殺害した。

Kull-na Shuraka', July 22, 2013

Kull-na Shuraka’, July 22, 2013

シリア人権監視団はまた、民主連合党人民防衛部隊が制圧したラアス・アイン市で、サラフィー主義戦闘員が所持していたとされる外国のパスポートが発見・報酬されたと発表、その写真を公開した。

一方、SANA(7月22日付)によると、マギーラ村で、軍が熱誘導式ミサイルなどの武器弾薬を発見、押収した。

また、ハサカ市、アリーシャ村、アターラ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊・押収した。

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ラッカ県では、複数の活動家によると、タッル・アブヤド市で、民主連合党人民防衛部隊とクルド戦線旅団(自由シリア軍)が、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国と交戦した。

シリア人権監視団によると、対トルコ国境のタッル・アブヤド通行所およびラッカ市から、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国の増援部隊が派遣され、戦闘が激化しているという。

シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国はまた、タッル・アブヤド市郊外のヤービサ村、タッル・ファンダル村、タッル・アフダル村、スーサク村を砲撃した。

これに対し、クルド戦線旅団がタッル・スワイリフ村とタッル・アブヤド市間で、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国の戦車などを攻撃、破壊した。

なお、『ハヤート』(7月23日付)によると、クルド戦線旅団は、アレッポ市アシュラフィーヤ地区やシャイフ・マクスード地区での勢力争いでは民主連合党人民防衛部隊と衝突していたが、タッル・アブヤド市攻防をめぐっては協力し合っているという。

一方、SANA(7月22日付)によると、タッル・アブヤド市郊外のマクバラ村に軍が突入し、複数の反体制武装集団戦闘員を殺傷、熱誘導式ミサイルなどの武器弾薬を破壊・押収した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団がハーン・アサル村を制圧、軍の士官・兵士が多数籠城する南部に突入した。

また反体制武装集団は、アレッポ国際空港、ナイラブ航空基地に近いサフィール市郊外のウバイダ村、フジャイラ村を制圧した。

さらに同監視団によると、サフィーラ市で、イラクの覚醒評議会を模した自警団を結成しようとして、シャームの民のヌスラ戦線メンバーに逮捕されていたアブドゥッラ・ハマドゥーが釈放された。

複数の反体制消息筋によると、ハーン・アサル村攻略において、「自由シリア軍」はシリア軍のハリール・ラマダーン大佐、アニース・ガーニム准将を含む数十人の将兵を捕捉、また士官15人を含む200人の兵士を殺害したという。

一方、SANA(7月22日付)によると、トルコ領からダーラ・イッザ市方面に武器弾薬を運び込もうとしていた反体制武装集団の車列を軍が攻撃、戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

またハーン・アサル村および同市周辺では、軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、複数の戦闘員を殺傷した。

このほか、アズィーザ市、ワディーヒー村、ヒーラーン村、アレッポ中央刑務所周辺、マンナグ市周辺、マンスーラ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を押収した。

アレッポ市では、ラーシディーン地区、アーミリーヤ地区、サラーフッディーン地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ジスル・シュグール市郊外の軍の検問所複数カ所を反体制武装集団が制圧、またカルミード軍事基地(煉瓦工場に近い軍の拠点)周辺で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月22日付)によると、ビンニシュ市、サラーキブ市、マアッラトミスリーン市、バスマーン市で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャーム自由人大隊、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区など各所に対して軍が砲撃を続けた。

またシリア人権監視団によると、市内のハーリド・ブン・ワリード・モスク内のハーリド・ブン・ワリード廟が軍の砲撃によって損壊した。

一方、SANA(7月22日付)によると、ウンム・タバービール村、ヒムス市バーブ・フード地区、ジャウラト・シヤーフ地区、ハミーディーヤ地区、ワルシャ地区、クスール地区、カラービース地区、ザーラ村郊外、カフルラーハー市郊外、ガントゥー市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊・押収した。

また、ヒムス市グータ地区で、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民3人が死亡、複数が負傷した。

他方、クッルナー・シュラカー(7月22日付)によると、ヒムス市ザフラー地区でダマスカス破棄裁判所顧問のファーイズ・アフマド・アスカル判事が暗殺された。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区に軍が砲撃を続け、複数名が死傷した。

これに関して、PFLP-GCは「パレスチナ人民諸委員会は、(ヤルムーク)キャンプの複数地区でテロリストを浄化し、同キャンプを占拠するシャームの民のヌスラ戦線と自由シリア軍に対して、降伏・撤退するよう最後通告を行った」と述べた。

また『ハヤート』(7月23日付)は、パレスチナ人高官の話として、PFLP-GCの人民防衛部隊の戦闘員数百人が、ヤルムーク・パレスチナ難民キャンプに進軍したと報じた。

なお、PFLP-GCの人民諸委員会が出した声明によると、浄化作戦は21日早朝に開始された。

このほか、シリア人権監視団によると、カーブーン区、バルザ区に対する軍の砲撃が続いた。

一方、SANA(7月22日付)によると、ジャウバル区、カーブーン区、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊・押収した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(7月22日付)によると、アドラー市郊外、アルバイン市、ドゥーマー市郊外、ダイル・サルマーン市、ビビーラー市、ハルブーン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、アンサール・ハック大隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊・押収した。

一方、SANA(7月22日付)によると、ハジャル・アスワド市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊・押収した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(7月22日付)によると、ダイル・ザウル市のジュバイラ地区、ハウィーカ地区、工業地区、ラシュディーヤ地区、シャイフ・ヤースィーン地区、ハミーディーヤ地区、ジャフラ村、ムーハサン市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またジュダイド・アカイダート村では、反体制武装集団がガス・パイプラインに仕掛けようといてた爆弾が誤爆し、戦闘員8人が死亡した。

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ダルアー県では、SANA(7月22日付)によると、タファス市、ムザイリーブ町、東ムライハ町、西ムライハ村、スーラ町、シャイフ・マスキーン市、ダルアー市ハマーディーン地区、ナワー市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊・押収した。

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タルトゥース県では、SANA(7月22日付)によると、バーニヤース市郊外のクライル村モスクのシャイフ、ウサーマ・タウフィーク・アアサル師が反体制武装集団によって暗殺された。

その他の国内の動き

シリアのNGOサダー研究世論調査機構は、「シリア革命反体制勢力国民連立の現実と成果に関する世論調査」を実施、その結果を発表した(http://www.sadasy.org/sy/?p=65)。

同機構の世論調査は、18歳から70歳のシリア在住のシリア人1,500人を対象とし、うち40歳以下の回答者を全体の65%、女性を40%とするかたちで回答者の選択が行われた。

世論調査結果は以下の通り:

1. シリア革命反体制勢力国民連立の拡大によってより革命が代表されるようになったと思いますか?はい27%、いいえ70%、わからない3%
2. シリア革命反体制勢力国民連立の新指導部が国民の支持を受けていると思いますか?はい15%、いいえ84%、わからない1%。
3. シリア革命反体制勢力国民連立がサウジアラビアとカタールの影響下にあると思いますか?はい78%、いいえ21%、わからない1%。
4. シリア革命反体制勢力国民連立が自由シリア軍を制御していると思いますか?はい10%、いいえ88%、わからない2%。
5. シリア革命反体制勢力国民連立は、アサド政権との交渉拒否といった原則を譲歩すべきだと思いますか?はい57%、いいえ38%、わからない5%。
6. シリア革命反体制勢力国民連立は存続すべきだと思いますか、あるいは別の政治組織にとって代わられるべきだと思いますか?存続すべき20%、存続すべきでない77%、分からない3%。

レバノンをめぐる動き

AFP(7月22日付)は、オランダのハーグ検察局報道官の話として、EU各国のイスラーム教徒の若者を戦闘員としてシリアに派遣しようとした19歳のオランダ人女性が逮捕され、取り調べを受けていると報じた。

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欧州連合(EU)は外相理事会で、ヒズブッラーの軍事部門をテロ組織と認定することで合意した。

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EU外相理事会の決定に関して、ヒズブッラーは声明を出し、「EUの決定を断固拒否する…。敵対的で不公正な決定であり、何の正当性もなく、いかなる根拠にも基づいていない…。この決定は米国の手によって、シオニストのインクを用いて書かれたものだ」と非難した。

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レバノンの複数のメディアによると、7月16日にベカーア県ザフラ郡マスナア市で発生したヒズブッラーの車列を狙った爆弾テロの容疑者のシリア人がレバノンの警察当局によって逮捕された。

諸外国の動き

イラクのシーア派のアーヤトゥッラー・ウズマー、アリー・スィースターニー師は「シリアに戦いに行った者たちは、マルジャイーヤの命に反している」との見解を示した。

ロイター(7月22日付)が報じた。

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マーティン・デンプシー米統合参謀本部議長は、議会に提出した書簡のなかで、シリアの紛争をめぐって米国が実施し得る5つの選択肢について説明した。

5つの選択肢とは、①飛行禁止空域の設定、②反体制勢力への訓練・助言、③シリア空軍基地への限定爆撃、④緩衝地帯の設置、⑤アサド政権が保有する化学兵器の破壊。

このうち、飛行禁止空域の設定や化学兵器の破壊作戦には月10億ドル以上、訓練・助言には年間5億ドルが必要との試算も示した。

そのうえでデンプシー議長は「米国は過去10年間の経験から、深い考えもなく軍事バランスを変えるだけでは不十分だということを学んだはずだ」と警鐘を鳴らした。

AFP, July 22, 2013、CNN, July 24, 2013、al-Hayat, July 23, 2013, July 25, 2013、Kull-na Shuraka’, July 22, 2013、Kurdonline,
July 22, 2013、Naharnet, July 22, 2013, July 25, 2013、Reuters, July 22,
2013、SANA, July 22, 2013、UPI, July 22, 2013などをもとに作成。

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