Contents
反体制勢力の動き
シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、AFP(7月23日付)に対して、ハサカ県、ラッカ県、アレッポ県での民主統一党によるシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国への攻勢に関して「これら地域におけるクルド人住民とアラブ人住民の亀裂を拡げ…、戦いは民主統一党とジハード主義者の戦闘からクルド人とアラブ人の紛争に変わる」との見方を示した。
**
シリア・クルド国民評議会事務局メンバーでシリア・クルド民主統一党(イェキーティー)のムスタファー・マシャーイフ副書記長は、イラク・クルディスタン地域のマスウード・バールザーニー大統領が呼びかけている「クルド民族大会」に関して、歓迎の意を示す一方、評議会が依然として正式な招待状を受け取っていないと述べた。
クッルナー・シュラカー(7月23日付)が報じた。
**
シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、EU外相理事会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織認定に歓迎の意を示した。
声明において、連立は「EUの決定を正しい方向へのステップとみなす。シリアでのヒズブッラー民兵の介入を停止させるのに資する措置をEUが講じる必要があると強調する」と述べるとともに、シリア領内でのヒズブッラーが行ったテロ行為に関して、その幹部の裁判」を求めた。
**
シリア国民評議会のムアイイド・ギズラーンなる活動家はCNN(7月23日付)に、シリアでの戦闘で死亡したヒズブッラーの戦闘員数百人が埋葬されている集団墓地を発見したと主張した。
**
ハヴィダールを名のるクルド人活動家はAFP(7月23日付)に「そもそも、革命当初から政治的レベルで両当事者(クルド人と反体制勢力)には信頼などなかった…。我々は革命を支持したが、シリアの反体制勢力は、クルド人と駆け引きすることを残念ながら止めようとせず、クルド人を周辺に追いやろうとした。その結果、今日分裂は明白なのである」と述べた。
シリア政府の動き
アサド大統領は2013年政令第51号を発し、宗教関係省にザカート・サダカ基金を設置することを決定した。
**
シリアの外務在外居住者省は声明を出し、EU外相委員会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織指定に関して「レバノン、そしてアラブ世界のレジスタンスを標的としたアメリカとイスラエルの命令…、こうした措置は占領と侵略を助長する」と非難した。
国内の暴力
ラッカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・アブヤド市一帯で、民主統一党、クルド戦線旅団(自由シリア軍)が、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国と交戦、クール・ハッスー村、アトワーン村、サーリジュ村、ヒルバト・アッルー村を制圧した。
またクルド戦線大隊が、ジャルバ村でアブー・ラアドを名のるヌスラ戦線のアミールを含む戦闘員多数を捕捉、さらにシリア人権監視団によると、民主統一党人民防衛隊がカンダール村、スーサク村、タッル・アフダル村、タッル・ファンダル村、カルハサート村を制圧した。
**
ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ジュワーディーヤ(ジル・アーガー)村周辺、民主統一党人民防衛隊とイラク・シャーム・イスラーム国が交戦を続け、人民防衛隊がシャイフ・ガソリン・スタンド、カラミー農場を制圧した。
**
ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、カーブーン区を軍が砲撃、ジャウバル区で反体制武装集団と交戦した。
またPFLP-GCの人民諸委員会がヤルムーク区で反体制武装集団と交戦を続ける一方、軍が同地区に砲撃を加えた。
一方、SANA(7月23日付)によると、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イエメン人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ヤブルード市、ハジャル・アスワド市を軍が空爆・砲撃、またヤルダー市で軍と反体制武装集団が交戦し、子供2人を含む6人が死亡した。
一方、SANA(7月23日付)によると、フジャイラ村、バービッラー市、ズィヤービーヤ町、ドゥーマー市郊外、アドラー市郊外、ヤブルード市郊外、ハジャル・アスワド市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、パレスチナ人戦闘員、シャームの民のヌスラ戦線メンバーらを殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市アルバイーン地区、ラジャート高原一帯、ハーッラ市を軍が砲撃し、反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(7月23日付)によると、タッル・タラーウブ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、タドムル市郊外、スフナ市、カルアト・ヒスン市、ヒムス市ハーリディーヤ地区、旧市街などを軍が砲撃し、反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(7月23日付)によると、タドムル市郊外のスフナ市で、軍が反体制武装集団の掃討を完了、同市の治安を回復した。
またラスタン市、タルビーサ市、ヒムス市バーブ・フード地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルミーン市、ビンニシュ市、ハナリヤー市を軍が砲撃・空爆、また反体制武装集団と交戦し、女性2人と子供3人が死亡した。
**
アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ハーン・アサル村を軍が空爆する一方、反体制武装集団はサフィーラ市郊外で軍の車列を襲撃し、車輌2台を破壊、兵士4人を殺害した。
アレッポ市のアシュラフィーヤ地区で軍と反体制武装集団が交戦した。
またシャームの民のヌスラ戦線は、アレッポ市とサラミーヤ市(ハマー県)を結ぶ街道が「軍事地区で、地雷や爆発物が敷設されている」と述べ、市民に使用しないよう呼びかけた。
一方、SANA(7月23日付)によると、ハーン・アサル村および同市郊外、マンスーラ村、マンナグ村、アレッポ中央刑務所周辺で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、ラーシディーン地区、ブスターン・カスル地区、シャイフ・ヒドル地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
このほか、ハナースィル市・アレッポ市間の街道で軍が反体制武装集団の掃討を完了、同街道の治安と安全を回復した。
**
ラタキア県では、SANA(7月23日付)によると、カサーティル村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
レバノンの動き
ナジーブ・ミーカーティー暫定首相は、EU外相委員会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織指定に関して「レバノン政府はこの決定を拒否し、その撤回をめざす」と述べた。
**
ナジーブ・ミーカーティー暫定内閣は、シリア人避難民の流入に関する閣議を開き、「シリアでの紛争を逃れてレバノンに入国するシリア人避難民を歓迎する」ことを確認する一方、シリア人による違法な経済活動を規制するための一連の措置を講じることを決定した。
**
組閣要請を受けているタマーム・サラーム首相は、EU外相委員会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織指定に関して「レバノン国内の複雑な状況を克服することに資したいと繰り返し述べてきたEU諸国の主張に反している」と非難した。
**
ナビーフ・ビッリー国民議会議長は、EU外相委員会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織指定に関して「レバノンの情勢にさらなる緊張と不安定をもたらす」と非難、「撤回すべき」と主張した。
**
自由国民潮流代表で国民議会議員のミシェル・アウン元国軍司令官は、EU外相委員会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織指定に関して「領土解放の権利を謳う国連憲章に反している」と非難した。
**
ムスタクバル潮流は、EU外相委員会によるヒズブッラーの軍事部門のテロ組織指定に関して「至上の国益につながる目標を維持し、レバノン統合に熱心であり続けていれば、ヒズブッラーはこうした決定を回避できたはずだ…。彼らはレバノン国内、さらにはシリアの反体制勢力に対して武器を向け…、レジスタンス組織から、レバノンの法律、憲法に反する民兵へと変容した」と批判した。
諸外国の動き
国連のロバート・セリー中東和平プロセス特別調整官は、シリア国内での化学兵器使用に関して安保理で「国連はこれまでにこの問題に関して13件の報告を受けている」と述べた。
**
サウジアラビアのアブドゥルムフスィン・ビン・ファールーク・イリヤース国連常駐代表は安保理で、シリア政府の国民に対する虐殺を停止させるよう呼びかけた。
**
フランスの治安当局は、シリアで戦闘を行うジハード主義者の戦列に加わろうとしていた47歳の男性1人をフランス東部で逮捕したと発表した。
AFP(7月24日付)が報じた。
**
ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、シリアの反体制勢力に軽火器、弾薬、対戦車兵器を供与する見通しだとしたうえで、ヒズブッラーやイランの支援を受けるアサド政権に対して、反体制勢力が最終的に勝利する支援することが目的だと述べた。
しかしカーニー報道官は、軍事的手段だけで政権転覆を行うことは想定していないと強調した。
AFP, July 23, 2013, July 24, 2013、CNN, July 23, 2013, July 24, 2013、al-Hayat, July 24, 2013, July 25, 2013、Kull-na Shuraka’, July 23, 2013、Kurdonline,
July 23, 2013、Naharnet, July 23, 2013、Reuters, July 23, 2013、SANA, July
23, 2013、UPI, July 23, 2013などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.