トルコ外相が人民防衛隊によるラアス・アイン市制圧を「きわめて深刻な事態」として警戒するなか、ハサカ県では人民防衛隊がさらにタッル・アッルー村、スワイディーヤ村を制圧(2013年7月19日)

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シリア政府の動き

NNA(7月19日付)は、シリアの治安当局が、ラマダーン月に合わせてレバノン人女性服役者複数名を釈放したと報じた。

同通信社などによると、アレッポ県アアザーズ市で反体制武装集団に拉致(2012年5月)されているレバノン人9人の釈放に向けた措置だという。

シリア人権監視団によると、釈放された女性は23人に達し、彼女らは18日に釈放された。

これに対して、クッルナー・シュラカー(7月20日付)は、女性23人の釈放が、拉致されているレバノン人の釈放のため「人質交換」ではなく、女性の拘束をめぐって「アサド政権が圧力に曝されていた結果」だと報じた

反体制勢力の動き

シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線は、アレッポ県サフィーラ市でアブドゥッラー・ハマドゥーを逮捕した。

ハマドゥーは、イラクの覚醒評議会を模した自警団を戦闘員数十人とともに結成し、サラフィー主義者に対抗しようとしていたという。

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DPI(7月19日付)は、民主的変革諸勢力国民調整委員会幹部の一人のアブドゥルアズィーズ・ハイイルが拷問で死亡した(未確認情報)と報じた。

ハイイルは2012年9月、中国からの帰国直後に当局に逮捕されていた。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区で軍、国防隊、人民諸委員会と反体制武装集団が交戦し、人民諸委員会のメンバー12人が殺害された。

またヒムス市各所に軍が砲撃・爆撃を加え、子供2人を含む複数名が死亡した。

一方、SANA(7月19日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、トゥルウマーン地区、カルアト・ヒスン市で、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またマズラア町、ラッカ村では、反体制武装集団が撃った迫撃砲が着弾し、市民5人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山に軍が砲撃を加えた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ラーシディーン地区で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月19日付)によると、タッル・リフアト市、クワイリス市南部などで、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市シャイフ・サイード地区、ラーシディーン地区、アシュラフィーヤ地区、シャイフ・マクスード地区、ハーリディーヤ地区、旧市街で、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団などによると、サイイダ・ザイナブ町にあるザイナブ廟近くに迫撃砲が着弾し、ザイナブ廟事務局のアナス・ルマーニー局長が死亡した。

また軍はフジャイラ村、ハラスター市などで軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月19日付)によると、アルバイン市、ハラスター市、バールーキーヤ市、フジャイラ村、ヤブルード市で、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、カーブーン区で、軍と反体制武装集団が交戦した。

またクッルナー・シュラカー(7月19日付)によると、カーブーン区で反体制武装集団が軍兵士16人を要撃・殺害した。

一方、SANA(7月19日付)によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の拠点を攻撃、破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャイフ・マスキーン市で、軍と反体制武装集団が交戦し、子供を含む市民5人と反体制武装集団の戦闘員3人が死亡した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、民主統一党人民防衛隊が、ジュワーディーヤ地方のタッル・アッルー村、スワイディーヤ村を制圧した。

これに対して、ジュワーディーヤ(ジル・アーガー)地方にある民主統一党人民防衛隊の拠点で、自爆テロが発生した。

なお、18日以降の戦闘で、民主統一党、サラフィー主義者双方の戦闘員29人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(7月19日付)によると、ダイル・ザウル市のシャイフ・ヤースィーン地区、工業地区、アルディー地区、ハウィーカ地区、マリーイーヤ村で、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・アブヤド市で、シャームの民のヌスラ戦線がクルド人5人を逮捕した。

レバノンの動き

NNA(7月19日付)によると、シリア領内から発射された迫撃砲弾2発が北部県アッカール郡カワーシラ村に着弾し、妊娠中の女性が負傷した。

諸外国の動き

フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、シリアへの反体制勢力への武器供与に関して「フランスは現在もまだ姿勢を修正してない。我々は殺傷兵器を供与しない。これが我々の姿勢だ」と述べた。

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『ザマン』(7月19日付)によると、トルコ軍参謀長が声明を出し、ハサカ県ラアス・アイン市からの流れ弾でトルコ軍兵士1人が軽傷を負ったと発表した。

同声明によると、これを受け、トルコ軍は、シリア領内タッル・ハルフ村近くの発射地点に対して応戦した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、民主統一党人民防衛隊によるラアス・アイン市制圧に関して「きわめて深刻な事態をもたし得る危険がある」と述べ、「引き続き国境防衛のために必要な措置をとる」との意思を示した。

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エジプトのバドル・アブドゥルアーリー外務省報道官は、シリア情勢に関して『ハヤート』(7月20日付)に、シリア人の入国ビザ取得義務化が「国内治安に関わる一時的」措置だと述べ、民主制建設をめざすシリア国民を引き続き支持すると述べた。

AFP, July 19, 2013、DPI, July 19, 2013、al-Hayat, July 20, 2013, July 21, 2013、Kull-na Shuraka’, July 19, 2013, July 20,
2013、Kurdonline, July 19, 2013、Naharnet, July 19, 2013、NNA, July 19, 2013、Reuters,
July 19, 2013、SANA, July 19, 2013、UPI, July 19, 2013、Zaman, July 19, 2012などをもとに作成。

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