湾岸諸国がシリア革命反体制勢力国民連立内のシリア・ムスリム同胞団のプレゼンスを低下させることを画策していると報じられるなか、ヒムス県ではヒズブッラーの支援を受ける軍と反体制武装集団が交戦(2013年5月25日)

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反体制勢力の動き

AFP(5月25日付)は、イスタンブールでのシリア革命反体制勢力国民連立に参加している複数の匿名活動家の話として、複数の外国の要請のもと、連立拡大が審議されており、そのことがさらなる対立を招いている、と報じた。

これらの活動家によると、複数の湾岸諸国(サウジアラビアなど)が、連立におけるシリア・ムスリム同胞団の役割を低下させるため、活動家の新規参加を求めているという。

活動家の新規参加をめぐっては、約100人の候補者の名があがり、なかでもミシェル・キールーが主導するシリア民主主義者連合の25人の参加を、西側諸国や一部湾岸諸国(サウジアラビア)が支援しているという。

クッルナー・シュラカー(5月26日付)によると、新規参加を求めているシリア民主主義者連合の25人は以下の通り:

1. ミシェル・キールー
2. サミール・イータ
3. ファーイズ・サーラ
4. バッサーム・マリク
5. ジャミール・スライマーン
6. ヒンド・アッブード・カバワート
7. アイマン・アスワド
8. ムハンマド・ダンダル
9. マーリク・アスアド
10. ナブラース・ファーディル
11. マスアブ・ヌアイミー
12. ハーディー・バフラ
13. アンマール・カルビー
14. ザカリヤー・サッカール
15. アンワル・バドル
16. イヤード・クドスィー
17. ファールーク・ハビーブ
18. ハサン・カーミル
19. ハルフ・アリー・ハルフ
20. ムンズィル・アークビーク
21. マイス・クライディー
22. サミーラ・ムサーリマ
23. ファラフ・アタースィー
24. ウルヤー・マンスール
25. スアード・ハビーヤ

これに対して、カタールとトルコがシリア・ムスリム同胞団が主導権を握る現下の連立を維持しようとしているという。

一方、クッルナー・シュラカー(5月25日付)は、キールーら25人の新規参加に関して、ムスタファー・サッバーグ書記長が、自身の書記長職への残留、暫定政府におけるシリア・ムスリム同胞団の閣僚ポスト確保などを条件として提示し抵抗していると報じた。

だが、『ラアユ』(5月25日付)によると、この条件提示をキールーは拒否したという。

またクッルナー・シュラカーによると、カタールがガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班に5,000万ドルを支給することを約束し、現状維持を狙っているという。

他方、シリア革命反体制勢力国民連立のハイサム・マーリフ法務委員会委員長は、シリア革命反体制勢力国民連立への活動家の新規参加に関して、男性250人と女性50人が参加を申し出ていることを明らかにした。

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イスタンブールで総合委員会会合を続けるシリア革命反体制勢力国民連立のジョルジュ・サブラー暫定議長は、クサイル市での軍の攻勢に関して、「テロ」と非難、また軍を支援するヒズブッラーに撤退を求めた。

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『ワタン・アラビー』(5月25日付)によると、イスタンブールで総合委員会会合を続けるシリア革命反体制勢力国民連立は、23日に前議長のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が示した移行期に関する提案を却下した。

同提案は、アサド大統領およびその親族500人の追放、副大統領ないしは首相への権限移譲などを骨子としていた。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市および同市郊外で、ヒズブッラーの支援を受ける軍と反体制武装集団が交戦し、軍の砲撃により反体制武装勢力戦闘員18人を含む22人が死亡、数十人が負傷した。

軍の砲撃はクサイル市郊外のダブア市、ハミーディーヤ市、アルジューン市に対しても行われた。また軍は、ダブア航空基地に突入したという。

ヒズブッラーの戦闘員はロイター通信(5月25日付)に対して、「我々は(クサイル市)攻撃計画の第2段階にあるが、進軍は非常に遅く厳しい。破壊分子はすべての通りと家に地雷を敷設している。冷蔵庫にも爆弾が仕掛けられている」と述べた。

自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐は、外国の支援を受けた「穏健な」自身の評議会と、タウヒード大隊がクサイル市方面に援軍を派遣したと述べた。

またヒムス市のワーディー・サーイフ地区で、軍と反体制武装集団が交戦し、ラスタン市、ハーリディーヤ村が軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(5月25日付)によると、タッル・サフィーナ市からハミーディーヤ市にいたるクサイル市郊外の北部、西部一帯を軍が完全制圧した。

またクサイル市内のヒムス・バアルベック街道など、市郊外のハワーディード村などで、軍が反体制武装集団の拠点・アジトを攻撃し、複数の戦闘員を殲滅した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍の戦車がアレッポ市郊外のダフラ・アブドゥラッフフ村に突入し、同地区の大部分を制圧した。

同地区では数日前から軍と反体制武装集団が交戦していた。

またアレッポ中央刑務所周辺、バーブ市、ハッダーディーン山などでも軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(5月25日付)によると、アレッポ市近郊のダフラト・アブドゥラッブフ地区で、軍が反体制武装集団の掃討を完了し、治安を回復した。

またマンナグ村、アレッポ中央刑務所周辺、クワイリス市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダーイル町への軍の空爆で子供1人が死亡した。

またダルアー市サビール地区、クスール地区、ダーラ地区などで軍が逮捕摘発活動を行った。

一方、SANA(5月25日付)によると、フラーク市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、自由殉教者旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方SANA(5月25日付)によると、ジャウバル区、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またドゥワイラア地区では、反体制武装集団が撃った迫撃砲によって、複数の市民が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ムウダミーヤ・シャーム市で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(5月25日付)によると、ハラスター市、アドラー市、ザマルカー町、アルバイン市、ズィヤービーヤ町、カースィミーヤ農場、ザマーニーヤ農場、ダイル・アティーヤ市、ザバダーニー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム征服旅団、グータ外国人旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またハラスター市では、反体制武装集団が撃った迫撃砲で女性1人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アブディーター村、アブー・ズフール航空基地周辺で軍が反体制武装集団と交戦、またフーア市などに対して反体制武装集団が砲撃を加えた。

一方、SANA(5月25日付)によると、アブー・ズフール航空基地に近いシャマーティーヤ村、ハミーディーヤ村で軍が反体制武装集団の掃討を完了し、治安を回復した。

またカニーヤ村、ビダーマー町、ハーッジ・ハンムード農場、サラーキブ市、ビンニシュ市、サルミーン市、カフルルーマー村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

さらに、アレッポ・サラーキブ街道で、軍はシャームの民のヌスラ戦線の司令部を攻撃・破壊、ヨルダン人、サウジ人司令官らを殺害した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ダルバースィーヤ市で、キリスト教徒住民1人が武装集団によって殺害された。

一方、クッルナー・シュラカー(5月25日付)によると、ラアス・アイン市内のシャームの民のヌスラ戦線制圧地区内をパトロールしていた民主統一党人民防衛隊隊員3人が数時間にわたってヌスラ戦線に身柄拘束された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、第66旅団基地周辺に位置するトゥライスィーヤ村、シャイフ・アリー・カースーン村、シャイフ・ヒラール村などに対する軍の砲撃で、チェチェン人戦闘員12人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(5月25日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、ハウィーカ地区、ジュバイラ地区、ムーハサン市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は解放記念日に合わせてテレビ演説を行った。

演説のなかで、ナスルッラー書記長は、「タクフィール主義集団が対レバノン国境地域を制圧できてしまったら、すべてのレバノン人、とりわけスンナ派にとって脅威となるだろう」と述べた。

また「シリアはレジスタンスの背骨であり、レジスタンスが、手をこまねき、その背骨を折られるなどといったことはあり得ない」とシリアの重要性を強調した。

そのうえで「私は誰にも支援を求めていない。この戦闘は我々の戦闘であり、我々はこの戦闘の勝利を作り出す者だ」と主張した。

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サアド・ハリーリー元首相は、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長の演説に関して、「解放記念日にレジスタンスの終わりを自ら宣言した…。クサイルでのレジスタンスの政治的・軍事的自殺を宣言した」と批判した。

諸外国の動き

サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、インド外相との会談後の記者会見で、シリア情勢について触れ、アサド大統領および政権幹部が「シリアの将来においていかなる役割をもはたしてはならない」と主張、移行期統治機関に全権を委任するよう主唱した。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、ジュネーブ2会議へのイランの参加の是非に関して、「政治的解決を望んでおらず、逆に紛争に関与している」と批判し、参加に消極的な姿勢を示した。

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イランのアフマド・ワヒーディー国防大臣は、声明を出し、シリアの紛争に軍を派遣しているとの一部報道・批判に関して、「イラン・イスラーム共和国はシリアに軍を派遣したことはないし、そうしたことは行わないだろう」と否定した。

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UPI(5月25日付)によると、エジプトのムスリム同胞団は、声明を出し、エジプト領内にシリア人避難民キャンプを設営することを拒否すると発表した。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、シリア情勢に関して「同胞(シリア人避難民)よ、終わりは近い。反体制勢力は独裁者を倒すだろう」と常軌を逸した発言を行った。

AFP, May 25, 2013、al-Hayat, May 26, 2013、Kull-na Shuraka’, May 25, 2013, May 26, 2013、Kurdonline,
May 25, 2013、Naharnet, May 25, 2013、al-Ra’y, May 25, 2013、Reuters, May 25, 2013、SANA, May 25, 2013、UPI, May 25, 2013、al-Watan al-ʻArabi, May 25, 2013などをもとに作成。

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