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国内の暴力
ヒムス県では、SANA(5月19日付)によると、軍がクサイル市内に突入し、主に外国人戦闘員からなる武装集団を殲滅、市内のほぼすべての街区を制圧、治安を回復した。
軍が殺害した戦闘員のなかには、シャームの民のヌスラ戦線の指導者の一人、ナウワーフ・アッルーニー、「コマンドー」と呼ばれていたアラー・ウマルなどが含まれており、市内では数十人の戦闘員が降伏、軍に投降したという。
またシリア・アラブ・テレビ(5月20日付)によると、軍がクサイル市中心に位置する広場を制圧し、市庁舎にシリア国旗を掲げた。
これに対して、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、クサイル市内で軍と反体制武装集団が激しく戦闘を行う一方、軍の空爆で、反体制武装集団の戦闘員16人を含む52人が死亡したと発表し、「軍がクサイル市を制圧すれば、ヒムス県全土が陥落する」と危機感を募らせた。
一方、ヨルダンの首都アンマンの活動家によると、クサイル市での戦闘により、軍、人民諸委員会、ヒズブッラーの側も、少なくとも32人が死亡したという。
また、クッルナー・シュラカー(5月19日付)によると、軍の攻撃により、1,300発もの迫撃砲、爆弾がクサイル市内各所に着弾する一方、反体制武装集団の応戦によってヒズブッラーの戦闘員10人が死亡したという。
他方、AFP(5月19日付)は、ヒズブッラーに近い消息筋の話として、クサイル市の戦闘で、ヒズブッラーの戦闘員4人が死亡した、と報じた。
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同じくヒムス県では、SANA(5月19日付)によると、ヒムス市・マシュラファ街道で爆弾が仕掛けられた車が爆発し、市民4人が死亡、13人が負傷した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハルファーヤー市で、軍が逮捕摘発活動を行った。
ウワイナ村、フワイタート村、ジャルマ村などが軍の砲撃を受けた。
一方、SANA(5月19日付)によると、軍が反体制武装集団との戦闘の末、ハルファーヤー市を完全制圧した。
この戦闘で、軍はシャームの民のヌスラ戦線、ハマーの盾旅団、アラマイン大隊、タウヒード旅団を殲滅したという。
またムハルダ市では、シャームの民のヌスラ戦線が発電所に対して迫撃砲で攻撃を加えた。
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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、サルマー町およびその周辺などを軍がヘリコプターで「樽爆弾」を投下した。
一方、SANA(5月19日付)によると、カタフ・ラマーン村、シャムスィーヤ村、ラビーア町、スーダー村などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、SANA(5月19日付)によると、フジャイラ村、カースィミーヤ市、タッル・クルディー町、アドラー市、ダーライヤー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、首都の楯師団メンバー、シャームの暁大隊など複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス県では、SANA(5月19日付)によると、バルザ区およびその周辺で、軍が反体制武装集団の浄化を完了し、治安を回復した。
またジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、SANA(5月19日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、マンナグ航空基地周辺、ハーン・アサル村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、SANA(5月19日付)によると、ミシュミシャーン村、バシュラームーン村、アイン・バーリダ村、アイン・カサブ町、タフタナーズ市、マアッラトミスリーン市、ハバート市、バフーリー市、カフルタハーリーム町、アルバイーン山、バルーマー市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの鷹旅団、シャーム自由人旅団のメンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
シリア政府の動き
SANA(5月19日付)は、元経済担当副首相で、現在、ESCWA(国連西アジア経済社会委員会)のEDGE(Economic Development and Globalization Division)代表(2011年9月~)を務めるアブドゥッラー・ダルダリーが、ワーイル・ハルキー首相、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣らと会談を重ね、シリアの復興プロジェクトについての協議を進めている、と報じた。
ダルダリー氏はESCWAの代表として協議を進めているという。
反体制勢力の動き
シリア革命反体制勢力国民連立は、クサイル市での戦闘激化を受けて声明を出し、国連安保理に対して、「ヒズブッラーによる攻撃」を非難するよう求める一方、アラブ連盟に対して、緊急外相会議を開催し、クサイル市を保護するために必要な措置を講じるよう呼びかけた。
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シリア国民評議会は、クサイル市での戦闘激化を受けて声明を出し、「ヒズブッラーとイランの部隊…虐殺、戦争犯罪を行っている」と非難、アラブ連盟および国連安保理に対して同市での「虐殺を停止するための道義的、政治的、法的責任」を果たすよう呼びかけた。
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シリア革命反体制勢力国民連立のジョルジュ・サブラー暫定議長は、「ジュネーブ2」大会に関して、民主的変革諸勢力国民調整委員会の使節団とともに反体制勢力側の統一代表として出席することを拒否するとしたうえで、引き続きアラブ諸国、西側諸国と協議して、使節団の選定を進めるとの意思を示した。
『ナハール』(5月19日付)が報じた。
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『ハヤート』(5月20日付)は、複数の消息筋の話として、ロバート・フォード米大使が、リヤード・トゥルクと連絡をとり、「ジュネーブ2」大会への参加を求めていると報じた。
同報道によると、英仏は、トゥルクを「ジュネーブ2」大会における反体制勢力の団長にしようとしており、シリア・ムスリム同胞団、シリア革命反体制勢力国民連立のリヤード・サイフ副議長、ムスタファー・サッバーグ事務局長、シリア民主主義者連合のミシェル・キールー代表は、トゥルクを受け入れている、という。
トゥルクは、シリア共産党政治局派(現シリア人民民主党)の元書記長。ダマスカス民主変革宣言の指導者の一人。「生きる殉教者」として知られ、1980年代から反体制勢力の統合を訴えてきたが、反体制運動の主導権をめぐって民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表と反目している。
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反体制活動家のアンワル・ブンニーがフェイスブック(5月19日付)で「暫定憲法宣言」案を発表、軍・治安機関の移行期政府への従属、シリア・ムスリム同胞団員への極刑を定めた1980年第49法の廃止などを訴えた。
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『サンデー・テレグラフ』(5月19日付)は、シャームの民のヌスラ戦線が、シリア東部の油田で得た原油を、地元の業者に転売し、活動資金に充てていると報じた。
レバノンの動き
ベカーア県ヘルメル郡の対シリア国境地域に、シリア領内から反体制武装集団が撃ったと思われる迫撃砲複数発が着弾した。死傷者は出なかった。
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NNA(5月19日付)によると、北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で住民どうしが衝突、1人が死亡、22人が負傷した。
諸外国の動き
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は定例閣議で、シリア紛争への対応として「あらゆるシナリオを用意している」と述べ、ヒズブッラーやテロ分子に先進兵器流入阻止を口実に、再び軍事行動に訴える可能性があることを暗示した。
AFP, May 19, 2013、al-Hayat, May 20, 2013、Kull-na Shuraka’, May 19, 2013、Kurdonline, May 19, 2013、al-Nahar, May 19, 2013、Naharnet, May 19, 2013、NNA, May 19, 2013、Reuters, May 19,
2013、SANA, May 19, 2013、The Sunday Telegraph, May 19, 2013、UPI, May 19, 2013などをもとに作成。
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