バーニヤース市近郊のバイダー町で軍・親政権武装組織が反体制武装集団と激しい戦闘を繰り広げるなか、米国による第1回目の支援物資供与800万ドル相当が自由シリア軍参謀委員会に引き渡されたことが明らかに(2013年5月2日)

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国内の暴力

タルトゥース県では、シリア人権監視団によると、バーニヤース市近郊のバイダー町で軍と親政権の武装組織が反体制武装集団と激しく交戦した。

SANA, May 2, 2013

SANA, May 2, 2013

親政権の複数の消息筋によると、軍・治安機関・人民諸委員会のパトロール隊がバイダー町で要撃を受け、治安要員1人、兵士1人、人民諸委員会メンバー1人が殺害され、パトロール隊隊員20人が負傷したのを受け、軍、国防隊が応援に駆けつけ、数十人の武装集団戦闘員と交戦したという。

この戦闘では、マルカブ城に展開する軍の大隊がバイダー町に砲撃を加え、軍、国防隊は、数時間にわたる戦闘の末、武装集団を殲滅したという。戦闘では、軍、国防隊側には負傷者が出た。

シリア人権監視団によると、軍と反体制武装集団の交戦後、バイダー町で軍が「戦場処刑」が行われた模様で、複数の活動家によると、少なくとも51人が殺害されたという。

これに関して、SANA(5月2日付)は、バイダー町の反体制武装集団のアジトに対して軍が作戦を遂行し、武器弾薬を押収したと報じた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍が、ヒムス市ワーディー・サーイフ地区で反体制武装集団を掃討し、同地区の大部分を約1年ぶりに奪還した。

同監視団によると、軍は、国防隊、イラン当局、ヒズブッラーの支援を受けていたという。

一方、SANA(5月2日付)によると、軍がジュースィーヤ村、ウブーディーヤ市で反体制武装集団の掃討を完了し、両市の治安を回復した。

またダブア市、マスウーディーヤ村、シューマリーヤ市、サッルーミーヤ市、アッシュ・ウルード市、ラスタン市、ヒムス市バーブ・フード地区、ジャウラ・シヤーフ地区、ワーディー・サーイフ地区、ハーリディーヤ地区などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、複数の活動家によると、ダイル・ザウル市内のユーフラテス川に架けられていた架け橋が崩壊した。

反体制活動家らは、軍が爆弾で破壊したと主張する一方、政権支持者は「テロリスト」が橋を爆破したと主張している。

一方、SANA(5月2日付)によると、ダイル・ザウル市ウルフィー地区、工業地区、マリーイーヤ村などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、アブー・ザッル・ギファーリー団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、ティシュリーン地区、ヤルムーク区、ジャウバル区で軍と反体制武装集団が交戦、軍が砲撃を受けた。

複数の活動家によると、軍と反体制武装集団の戦闘は、カラジャート・アッバースィーイーンにもおよび、軍はザブラターニー地区方面からジャウバル区の入口に展開し、アッバースィーイーン地区に至る街道を封鎖したという。

一方、SANA(5月2日付)によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またルクンッディーン区で反体制武装集団が仕掛けた車爆弾が爆発し、運転手1人が負傷した。

他方、クッルナー・シュラカー(5月2日付)は、バルザ区で活動する自由シリア軍が早朝、ダマスカス県およびダマスカス郊外県に対する砲撃の拠点となっているカシオン山の砲台を迫撃、軍の迫撃砲2門を破壊したと報じた(未確認情報)。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダーイル町、スィヒム・ジャウラーン市などが軍の砲撃を受け、ヒルバト・ガザーラ町などで軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(5月2日付)によると、ヒルバト・ガザーラ町、カニーヤ村、ジャースィム市、ダーイル町、タファス市、ジャムラ村、シャジャラ町、スィヒム・ジャウラーン市などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、シャームの民のヌスラ戦線、タウヒード大隊旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(5月2日付)によると、軍がカイサー市の反体制武装集団の掃討を完了し、同市の治安を回復した。

イバーダ市、ザバダーニー市、ダーライヤー市などで、軍が反体制武装集団の拠点を攻撃・破壊し、複数の戦闘員を殺傷した。

またハラスター市、ドゥーマー市などでも、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、反体制消息筋によると、ナバク地方で、反体制武装集団の戦闘員90人と軍・親政権支持者11人の「捕虜交換」が行われた。

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イドリブ県では、SANA(5月2日付)によると、アブー・ズフール軍事基地周辺、ジャーヌーディーヤ町、ミシュミシャーン市、アイン・アサーフィール市、ナイラブ村、マアッラトミスリーン市、フマイシュー市、カフルルーヒーン村、バラーギースィー市、フシャイル市、アリーハー市、ガッサーニーヤ村などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(5月2日付)によると、ムスリミーヤ村、アイン・ダクナ村、ズィラーア市、ヒーラーン村、ジュバイラ市などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、スライマーニーヤ地区、ハイダリーヤ地区、サラーフッディーン地区などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(5月2日付)によると、ダルバースィーヤ市で、軍がシャームの民のヌスラ戦線、使徒末裔大隊と交戦し、複数の戦闘員を殺傷した。

反体制勢力の動き

ダマスカス郊外県では、クッルナー・シュラカー(5月2日付)が、自由シリア軍使徒末裔大隊が、サイイダ・ザイナブ廟から約100メートルの地点に集結、同廟に籠城する軍やシャッビーハに対峙していると報じた。

同報道によると、自由シリア軍は、ヒズブッラーやシリア軍とは異なり、サイイダ・ザイナブ廟をはじめとするイスラーム教、キリスト教の聖地に被害が及ぶことを避けて活動しているという。

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自由シリア軍参謀委員会政治広報調整官のルワイユ・ミクダードは、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長の演説に関して「イランとともにシリアの体制を擁護するために干渉するとの脅迫は、(アサド)体制が崩壊しつつあることを直接白状したようなものだ」と批判した。

またヒムス県クサイル市郊外のレバノン人が居住する村を自由シリア軍が攻撃しているとのナスルッラー書記長の発言を「根拠がなく事実でない」と否定した。

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シリア国民評議会は声明を出し、ダイル・ザウル市の架け橋破壊をアサド政権の犯行と断じ、非難した。

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カイロなどで活動する反体制活動家約20人が共同声明を出し、「民主主義(市民権国家)のためのシリア人」がアサド政権に対する運動の統合に失敗したとして、同組織からの脱会を発表した。

シリア国内の動き

クッルナー・シュラカー(5月2日付)は、ラーミー・マフルーフ氏が4月29日付でシリアテル社の取締役会に辞表を出したと報じた。

マフルーフ氏はこれを受けてダマスポスト(5月3日付)に声明を出し、自身が個人名義で保有していたシリアテル社の株を3月にラーマーク社に譲渡したことを改めて明らかにし、シリアテル社の株の42%を保有するに至ったラーマーク社がシリアテル社の運営を担うのが当然との見解を示した。

レバノンの動き

MTV(5月2日付)やムスタクバル・チャンネル(5月2日付)は、シリア軍兵士約70人がベカーア県バアルベック郡カーア地方に侵入し、住民に退去を求めたと報じた。

しかしNNA(5月2日付)はこれを否定した。

諸外国の動き

チャック・ヘーゲル米国防長官は、フィリップ・ハモンド英国防大臣との会談後の記者会見で、シリアの反体制武装集団への武器供与の可否に関して「武器を与えることも選択肢としてある」と述べた。

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『ウォールストリート・ジャーナル』(5月2日付)は、複数の米高官の話として、米国による第1回目の支援物資供与が4月30日にトルコの自由シリア軍参謀委員会に対して行われたと報じた。

供与された支援物資は、食糧品、衣料品などで、総額が800万ドル相当だという。

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イラクのフダイル・フザーイー副大統領は「シリアのテロリストたちは、サハーバであるフジュル・ブン・アディー廟を襲撃することで、アッラーの使徒の教友への憎しみの牙を向いた」と非難した。

フジュル・ブン・アディー・キンディーは第4代カリフ・アリーの冒涜を拒んだことで知られる。

イラーキーヤ・チャンネル(5月2日付)などによると、シリアの反体制武装集団はダマスカス郊外県アドラー市にあるフジュル・ブン・アディー廟から遺体を掘り起こし、どこかに持ち去ったという。

AFP, May 2, 2013、Damaspost, May 2, 2013、al-Hayat, May 3, 2013, May 4, 2013、Kull-na Shuraka’, May 2, 2013, May 3, 2013、Kurdonline,
May 2, 2013、Naharnet, May 2, 2013。NNA, May 2, 2013、Reuters, May 2, 2013、SANA,
May 2, 2013、UPI, May 2, 2013、The Wall Street Journal, May 2, 2013などをもとに作成。

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