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国内の暴力
ダマスカス県では、シリア人権監視団(駐英)が、バルザ区、ジャウバル区のアッバースィーイーン広場近く、ヤルムーク区で軍と反体制武装集団が交戦した。
一方、SANA(4月2日付)によると、ファイハー地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲3発が着弾し、4人が死亡、25人が負傷した。
また、ジャウバル区では、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザマルカー町、ドゥーマー市、ハジャル・アスワド市などで軍と反体制武装集団が交戦した。
ハジャル・アスワド市では3人が死亡、20人以上が負傷した。
一方、SANA(4月2日付)によると、ジャルマーナー市で反体制武装集団が撃った迫撃砲2発が着弾し、市民4人が死亡、11人が負傷した。
またムカイラビーヤ市でも、反体制武装集団が撃った迫撃砲が民家に着弾し、1家4人(うち子供1人)が死亡し、子供1人が大やけどを負った。
他方、アドラー市および同市郊外、アーリヤ市郊外、ハラスター市、タッル・クルディー町郊外、ナブク市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、『ハヤート』(4月3日付)によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺で軍と反体制武装集団が交戦した。
また反体制武装集団がハーン・シャイフーン市東部の武器弾薬貯蔵基地を襲撃する一方、軍はマアッラト・ヌウマーン市を空爆したという。
他方、SANA(4月2日付)によると、ナイラブ村のシャビーバ基地を襲撃しようとした反体制武装集団と軍が交戦し、複数の戦闘員が死亡した。
またカニーヤ村、バシーリーヤ村、サルマニーヤ村、シャイフ・スィンディヤーン村、イフスィム町、アイン・バーリダ村、マアッラト・ヌウマーン市、ビンニシュ市、ハーン・スブル村、アレッポ市ジュダイダ地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、反体制武装集団が拘留されている逮捕者を解放するための「捕虜解放の戦い」を開始したと発表、『ハヤート』(4月3日付)によると、逮捕者が収容されているとされるアレッポ市北部のハンダラート・キャンプ近郊のキンディー大学病院や中央刑務所への攻撃を開始した。
一方、SANA(4月2日付)によると、ムスリミーヤ村、ハンダラート・キャンプ、マッルアナーズ市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、カースティールー地区、ハイダリーヤ交差点、ジャンドゥール交差点などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、反体制勢力筋によると、アルマー町、ダーイル町、タスィール町、ヒルバト・ガザーラ町、ダルアー市ダム街道などに軍が砲撃を加えた。
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ヒムス県では、SANA(4月2日付)によると、カルヤ・ヒスン市、ラスタン市・ジュッブ・ジャンダリー分岐点、マッル・ヤミーン村・ハウラ地方分岐点、ヒムス市バーブ・スィバーア地区周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
また対レバノン国境のジュースィーヤ村郊外、タッルカラフ市郊外で、レバノンからの潜入を試みた反体制武装集団を軍が撃退した。
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ハマー県では、SANA(4月2日付)によると、カフルヌブーダ町、マダーヤー・サジュダ村、ハマー市タッル・ダッバーガ地区、ドゥワイル・アクラード村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(4月2日付)によると、ダイル・ザウル市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またムサッラブ村では、村を襲撃しようとした反体制武装集団と村人が交戦、イフラース旅団、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員が死亡した。
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ロイター通信(4月2日付)は、複数の軍消息筋の話として、軍と反体制武装集団の交戦中に発射された迫撃砲が、イスラエルが占領するゴラン高原の入植地近くに着弾したと報じた。
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ダマスカス県およびダマスカス郊外県では、軍が反体制武装集団の侵攻とテロ活動を阻止するための「大規模な戦い」の準備として、県内の厳戒態勢の強化、検問所、塹壕の強化などを進めている、と『AFP』(4月2日付)が政府に近い複数の消息筋の話として報じた。
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ダマス・ポスト(4月2日付)は、信頼できる複数の消息筋の話として、ダルアー県における軍司令部の抜本改編が行われ、上級士官1人が解任、県内での武装集団の進軍を阻止し、制圧された地域の奪還を断行するための決定がなされたと報じた。
国内の動き(シリア政府の動き)
アサド大統領は政令第20号を発し、政治的理由、身代金・財産目当て、復讐を目的とした誘拐犯に対して無期懲役刑を科すことを定めた。
自由シリア軍を名乗る武装犯罪集団による誘拐・拉致事件が多発したことを受けての措置。
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『ワタン』(4月2日付)は、ウマル・イブラーヒーム・ガラーワンジー福祉問題担当副首相兼地方自治大臣が地方自治省関係部局に対して、アレッポ県、ハサカ県、ヒムス県をそれぞれ2県に分割・改編を検討している人民議会内の審議をフォローアップするよう指示したと報じた。
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地方自治省国際協力局は、危機解決政治プログラムに基づく復興(文科)委員会が、ダマスカス郊外県アドラー市、ハスヤー町の工業団地に避難民のための一時避難住宅を設置することを決定したと発表した。
アドラー市の施設は60,000人、ハスヤー町は40,000人が収容可能だという。
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SANA(4月2日付)は、シリア政府がイランからの石油関連産品に対する関税を6月30日まで撤廃することを決定したと報じた。
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『ガーディアン』(4月2日付)は、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員の話として、自由シリア軍と政府軍の双方がダイル・ザウル県で産出された原油をトルコに密売していると報じた。
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クッルナー・シュラカー(4月2日付)は、体制内で活動する複数の反体制消息筋の話として、アサド大統領が最近の会合で、「ダーライヤー市が制圧できないのは軍が弱く、武装集団と戦えないからではなく…、市内に外国の三つの大隊が駐留しているからだ」と述べ、ドイツ、イスラエル、そして米国の特殊部隊が展開していると断じた、と報じた(未確認情報)。
反体制勢力の動き
クッルナー・シュラカー(4月2日付)は、ダマスカス県、ダマスカス郊外県で活動する複数のサラフィー主義武装集団がシャーム特殊部隊の主導のもと、大隊連合軍事組織「預言者のシャーム旅団」を結成したと報じた。
預言者のシャーム旅団に参加した武装集団は、2012年9月28日に以下の通りだという:
1. ナースィル・サラーフッディーン大隊
2. イスラームの旗大隊
3. シャイフ・イスラーム・イブン・タイミーヤ大隊
4. ハサン・フサイン連隊
5. ダマスカス大隊
6. フカハー・ワ・サーリヒーン大隊
7. イマーム・シャーティビー大隊
8. スルターン・ムハンマド・ファーティフ砲兵大隊
9. アンサール・クルアーン大隊
10. イスラームの獅子大隊
11. シャーム特殊部隊大隊
なおシャーム特殊部隊大隊は、2012年9月28日に結成され、自由シリア軍に参加、司令官はアンマール・ダマード大尉が務めるという。
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自由シリア軍国内合同司令部中央広報担当官のファフド・ミスリーは声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立のガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出をめぐる対立が、シリア革命評議会発足以来の反体制勢力の代表性をめぐる問題だと指摘し、シリア・ムスリム同胞団の独断主義を批判、反体制勢力を包摂していない連立にシリアの国家と社会を委ねれば、シリア史上最大の過ちを犯すことになるだろうと主張した。
そのうえで、暫定政府を発足する前に、連立の組織拡大を行うべきだと主張した。
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シリア革命反体制勢力国民連立GCC代表を務めるアディーブ・シーシャクリーは、『ハヤート』(4月3日付)に対して、連立がイスラーム諸国会議機構(OIC)におけるシリアの代表権を与えられるとの「確約」を得たと述べた。
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クッルナー・シュラカー(4月2日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立のガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班が、現地で活動する武装集団に対して、暫定政府の国防省の傘下に入るよう呼びかけた、と報じた。
クルド民族主義勢力の動き
民主統一党人民防衛隊のスィーバーン・ハンムー総司令官は、ハワール・ニュース(4月2日付)に対して、クルド人が多く住むアレッポ市シャイフ・マクスード地区への反体制武装集団およびクルド人民兵の侵攻に関して、「クルド人民を犠牲にしてきたいかなる勢力とも取り引きはしない」と述べ、徹底抗戦する意思を示した。
ハンムー司令官は「シャイフ・マクスード地区での最近の事件は、無の状態から発生したわけではない。政府が主張するように武装集団が地区内のシャッビーハと戦うことが目的ではない…。それはあらかじめ準備された計画で…、我々人民(クルド人)と人民防衛隊と戦うことが目的だ」との見方を示した。
諸外国の動き
タニトプレス(4月2日付)は、シリアで活動するチュニジア人サラフィー主義戦闘員の姉妹の情報として、トルコ当局がチュニジア人戦闘員のシリアからの出国を阻止していると報じた。
この姉妹によると、戦闘員は3日前からシリアを出国し、チュニジアに戻ろうとしているが、トルコの治安当局がトルコ経由での出国を阻止している、のだという。
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エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣はフランスを訪問し、ローラン・ファビウス外務大臣と会談、シリア危機などについて協議した。
会談後、ファビウス外務大臣は、政治的解決をめざす点でアムル外務大臣と意見が一致したと述べたうえで、「軍事力を通じた解決の可能性」をアサド大統領に断念させる必要があると強調、ロシアやイランのシリア政府への武器供与に対抗するため、反体制勢力に「自衛のための武器」を供与する必要があると主張した。
これに対して、アムル外務大臣は、「解決策は何よりもまず政治的でなければならない」と述べ、ファビウス外務大臣を暗に牽制した。
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トルコの非常事態局はトルコ国内のシリア人避難民の数が191,993人に達していると発表した。
避難民はハタイ県のキャンプ4カ所(14,808人)、シャンウルファ県のキャンプ3カ所(90,532人)、ガジアンテップ県のキャンプ4カ所(30,649人)、そのほかの県のキャンプ6カ所で避難生活を送っている。
シリアからの避難民の総数は285,984人だが、うち93,991人がシリアに帰国したという。
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イスラエルのモシェ・ヤアロン国防大臣は、「シリアでの戦争が我々の国益に害をもたらすような場合、我々は報復するだろう」と述べ、ヒズブッラーへの武器流出に対して断固たる対応で臨む意思を示した。
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国連総会で通常兵器の国際取引を規制するための武器貿易条約(ATT)が154カ国の賛成で承認された。
シリアはイラン、北朝鮮とともに反対票を投じ、またロシア、中国など23カ国は棄権した。
条約採決に先立って、バッシャール・ジャアファリー国連代表大使は、同条約が武装テロ集団への武器禁輸に言及していないとして、シリア国内の反体制武装集団に武器・兵站支援を行うカタール、トルコ、米国、英国、フランスなどを暗に批判した。
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国連世界食糧計画(WFP)のシリア問題担当のムハンマド・ハーディー調整官は、紛争当時者に対して、係争地域(反体制武装集団の支配地域)への人道支援物資の通行の安全を確保するよう呼びかけた。
AFP, April 2, 2013、Akhbar al-Sharq, April 2, 2013、Damas Post, April 2, 2013、The Guardian, April 4, 2013、al-Hayat, April 3, 2013、Kull-na Shuraka’, April 2, 2013、Kurdonline, April 2, 2013、Naharnet,
April 2, 2013、Reuters, April 2, 2013、SANA, April 2, 2013、Tanit Press, April
2, 2013、UPI, April 2, 2013、al-Watan, April 2, 2013などをもとに作成。
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