2013年3月27日のシリア情勢

アラブ連盟首脳会議

ドーハのアラブ連盟外相会議が議事を終了し、ドーハ宣言(閉幕声明)を採択した。

ドーハ宣言は「シリア危機の最優先課題として政治的解決にいたることが重要」だとする一方、「各国には、その意思に沿って、シリア国民と自由シリア軍を支援するため、軍事支援を含む自衛手段の提供を行う権利がある」と明記し、カタールなどによる反体制武装集団への武器供与、テロ支援を是認した。

またシリア革命反体制勢力国民連立が連盟におけるシリア代表の地位を得たことに歓迎の意を示し、また同地位は、移行期政府が選出されるまでとした。

一方、国連に対しては、シリア復興会議の開催を呼びかけた。

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ドーハでのアラブ連盟首脳会議の審議を終え、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、記者会見で、「国連憲章などすべての国際的な文書に自衛権はある。シリア危機において法に違反しているのは、国民を殺し、国を破壊するシリア大統領だ」と批判した。

また「シリア国民の犠牲と比べると、アラブの指導者が行ったことは、より多くを受け取るに値するシリア国民にとってみれば、あまりに少ない」と述べた。

そのうえで、シリア政府が「力によって事態を解決しようとしているなか…、今重要なのはバランスだ。平和的、ないしは政治的対話にはバランスが作り出されることが不可欠だ…。解決策は現地で戦う者の手のなかにある」と強調した。

さらに「我々は、シリア政府による体系的な時間の浪費…、またアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表による時間の浪費があり、力で事態を制圧できるとの念があることを見出した」と批判した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、首脳会議後の記者会見で、「アラブ諸国が軍事支援を含むあらゆる支援をシリアの反体制勢力に行う権利を得たことが、政治的解決の終わりだと解説する者がいるが、それは正しくない」と述べた。

「ジュネーブ合意が規定する…移行期開始と(移行)政府の樹立には、当時者どうしがある種のバランスが必要だ。武器補充を通じて反体制勢力を支援するという要求は、必要なバランスを実現するだろう」と強調した。

そのうえで首脳会談での「ドーハ宣言が、シリア危機の最優先事項として政治的解決を進めるための努力を何よりもまず確認しており、そのうえで各国がその意思に沿って、シリア国民と自由シリア軍を支援するため、軍事支援を含む自衛手段の提供を行う権利を確認した」と述べた。

シリア政府の動き

SANA, March 27, 2013

SANA, March 27, 2013

アサド大統領は、ワーイル・ハルキー内閣の危機解決政治プログラム実施閣僚委員会と会談し、委員会の活動の進捗状況の報告を受けた。

SANA(3月27日付)が報じた。

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アサド大統領は南アフリカで開催されているBRICs首脳会議に書簡を送り、そのなかで「シリアは2年にわたって、一部のアラブ諸国、地域諸国、西欧諸国によって支援されたテロに苦しんでいる」としたうえで、「シリアでの暴力即時停止のためにともに行動する」よう呼びかけた。

SANA(3月27日付)が報じた。

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シリア政府はSANA(3月27日付)を通じて声明を出し、アラブ連盟首脳会議のドーハ宣言に関して、「アラブ連盟憲章、内規、アラブ諸国の共同行動の原則にあからさまに反した、連盟史上前例のない決定…、連盟にとって危険かつ破壊的な先例…、暴力とテロ」を助長すると厳しく非難した。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、カーブーン区、アサーリー地区、タダームン区、カダム区で軍が反体制武装集団と交戦し、砲撃を加えた。

一方、SANA(3月27日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市などで軍が反体制武装集団と交戦し、砲撃を加えた。

一方、SANA(3月27日付)によると、アドラー市、ウタイバ村、フジャイラ村、ダーライヤー市、カーラ市、ハジャル・アスワド市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、ビイル・アジャム市近くの軍の連隊拠点3カ所を反体制武装集団が制圧し、これに対して軍は県内の道路を封鎖し、同市やラスム・ハラビー市を砲撃した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ヒルバト・ガザーラ町、ウンム・マヤーズィン市で軍が反体制武装集団が交戦し、砲撃を加えた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・フード地区が軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(3月27日付)によると、ラスタン市、タッルドゥー市、ヒムス市バーバー・アムル地区周辺などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(3月27日付)によると、ズィルバ村、マンスーラ村、ハーン・アサル市、クワイリス市、ハーン・トゥーマーン村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、ブスターン・バーシャー地区、ハイダリーヤ地区、サラーフッディーン地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(3月27日付)によると、リーハーニーヤ村、ダイル・ハンナー村で軍がシャームの民のヌスラ戦線の拠点を攻撃し、戦闘員を殲滅した。

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イドリブ県では、SANA(3月27日付)によると、ナイラブ村、サルミーン市、マアッラトミスリーン市、カフルルーマー村、マジュダリヤー市、ジスル・シュグール市、シャイフ・スィンディヤーン市、フルーズ市、シュグル市、ヒルバト・ジューズ市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(3月27日付)によると、ハルブナフサ村村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(3月27日付)によると、ダイル・ザウル市各所で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線、ハドラー大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

反体制勢力の動き

国内で反体制活動を続ける民主的変革諸勢力国民調整委員会は、声明を出し、ドーハでのアラブ連盟首脳会議にシリア革命反体制勢力国民連立がシリア代表としての参加を認められたことに関して、「代表ポストはシリア国家のものであり、公正な民主的選挙を通じてシリア国民から信頼されなければ、いかなる集団もそのポストを務める権利はない」と批判した。

また連盟の決定を「期待されている政治的解決に資さず、事態を複雑にするだけ」と非難した。

そのうえで連盟におけるシリア代表のポストは、2012年6月のジュネーブ合意に基づき、反体制勢力と現政権の代表からなる移行期政府が発足するまで空席だと主張した。

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シリア国内で活動するシリア国家建設潮流のルイワユ・フサイン代表は、『サフィール』(3月27日付)で、シリア革命反体制勢力国民連立がシリア代表としての参加を認められたことに関して、「カタールを筆頭とする地域諸国、諸外国の間で与えられたに過ぎず…、シリア政府に対するハマド・ブン・ハリーファ首長の個人的勝利のようなものだが、その結果は国内での国際紛争の代価を払わされているシリア国民にとって否定的に作用するだろう」と批判した。

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カタールの首都ドーハでシリア革命反体制勢力国民連立の「大使館」が開設され、祝典にはカタールのアブドゥッラー・アティーヤ外務担当大臣、アフマド・マアーッズ・ハティーブ連立議長、ガッサーン・ヒートゥー連立暫定政府首班、ジョルジュ・サブラー・シリア国民評議会議長、スハイル・アタ-スィー連立副議長、アラブ・外国大使らが参列した。

米国がシリア北部領空でのNATOのパトリオット・ミサイルの使用を拒否したことに関して、ハティーブ議長は祝典で、「革命が勝利しないことを望む意思があるかのようだ…。しかしシリア国民は自らの方法を貫く」と述べた。

また「善意の殉教者数万人」に哀悼の意を示すとともに、「カタールの主張、政府、国民」の支援に謝意を示した。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長はロイター(3月27日付)に対して、米国がシリア北部領空でのNATOのパトリオット・ミサイルの使用を拒否したことに関して、「シリア政府にやりたいことをやっていいというメッセージを与えることを恐れている」と批判した。

また「私は辞表を提出した。撤回はいしない。しかし(連立の)総合委員会の会合が行われるまで、任務は続ける」と述べた。

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『ハヤート』(3月28日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立の在米英仏代表らが、アラブ連盟に続いて国連におけるシリアの代表権を獲得するための活動を開始した、と報じた。

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AFP(3月27日付)は、イスラエルの複数の医療筋の話として、ゴラン高原での軍との戦闘中に負傷し、イスラエルの病院へ搬送されていた反体制武装集団の戦闘員1人が死亡した、と報じた。

同報道によると、この戦闘員は、27日早朝にイスラエル領内に搬送されたという。

クルド民族主義勢力の動き

ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(3月27日付)によると、アームーダー市で、民主連合党の実効支配に抗議するデモが発生し、数十人の市民が参加した。

諸外国の動き

ヨルダン国会で、シリア問題、とりわけ避難民問題に関する審議が行われた。

審議では、アサド政権を支持する多くの議員が、シリア・ヨルダン国境の封鎖、女性と子供以外の避難民受け入れ停止、さらにはシリアの混乱を助長する湾岸諸国への避難民の追放を主唱し、アラブ連盟首脳会議、シリアの反体制勢力、そして湾岸諸国の姿勢を非難した。

一方、ナスール首相を支持する議員は、避難民受け入れ継続を主唱、審議は混乱した。

ムスタファー・ヤーギー議員は、「カタールがシリア北部での戦争において役割を果たしている」と批判、ヨルダンのシリア人避難民をカタールに追放すべきだと主張した。

アブドゥルカリーム・ダグミー議員は、「違法な国境通行所の閉鎖を求める」としたうえで、「シリアをもてあそぶ国々が避難民に対して責任を負うべきだ」と主張した。

タラール・シャリーフ議員は、「対シリア国境の完全封鎖と、アラブの血をもてあそぶ国の一つに避難民を送ることを求める」と訴えた。

ジャミール・ニムリー議員は、シリア領内の対シリア国境地帯に緩衝地帯を設けて、国連に警備を行わせるべきだと主張した。

イスラーム中心ブロック(15議員)のムハンマド・ハーッジ代表は、「政府は国境管理を行い、違法な移民の流入を止め、避難民を「密輸」する勢力を監視しなければならない」と主張した。

『ハヤート』(3月28日付)が報じた。

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ロシア外務省は声明を出し、ドーハでのアラブ連盟首脳会議にシリア革命反体制勢力国民連立がシリア代表としての参加を認められたことに関して、「国際法に従うと、シリアに関するアラブ連盟の決定は違法で不当である。なぜならシリア・アラブ共和国政府は依然として国連における合法的な代表だからだ」と非難した。

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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、ドーハでのアラブ連盟首脳会議にシリア革命反体制勢力国民連立がシリア代表としての参加を認められたことに関して、「アラブ連盟にとって危険な先例だ…。こうした過ちは、問題をさらに複雑にするだけだ」と非難した。

またホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣は、「アラブ連盟の措置は地域における連盟の役割の実質的な終わりを意味する」と述べた。

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ロイター(3月27日付)は、トルコのアクチャカレ市に設置されたスレイマン・シャー避難民キャンプで、シリア人避難民が暴徒化し、トルコ軍警察に投石、これに対して当局が催涙弾や放水で強制排除したと報じた。

キャンプ住民は、電気配線の工事で発生した火災が暴動の原因で若者が抗議を行ったと証言したが、トルコ高官によると、シリアからの避難民200人の入国を当局が阻止したことへのキャンプ居住者の怒りが原因だという。

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クッルナー・シュラカー(3月27日付)は、イラクの携帯電話会社Korekが、シリア北東部(西クルディスタン)地域への受信エリアの拡大を検討していると報じた。

AFP, March 27, 2013、Akhbār al-Sharq, March 27, 2013、al-Ḥayāt, March 28, 2013、Kull-nā Shurakā’, March 27, 2013、al-Kurdīya News, March
27, 2013、Naharnet, March 27, 2013、Reuters, March 27, 2013、al-Safīr, March 27, 2013、SANA, March 27, 2013などをもとに作成。

 

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