2013年3月20日のシリア情勢

シリア革命反体制勢力国民連立(通称、シリア国民連合)自壊

シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出(19日)を受け、スハイル・アタースィー副議長、ワリード・ブンニー報道官、ムハンマド・カマール・ルブワーニー、マルワーン・ハーッジ・リファーイー、ヤフヤー・クルディー、アフマド・アースィー・ジャルバーら12人の幹部がメンバーシップを凍結し、連立を事実上離反した。

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シリア革命反体制勢力国民連立のスハイル・アタースィー副議長は、フェイスブックを通じて声明を出し、「私たちは、連立メンバーが暫定政府におけるポストを引き受けることを禁じるよう主張してきた…。一部のメンバーが、私に連立を辞め、政府に参加するよう求めてきたが、私はこれを拒否した…。私はいかなる閣僚ポストにも就かないし、望まない辞職もしない…。しかし、制度を無視した発想に抗議して、メンバーシップを凍結する」と綴った。

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『ハヤート』(3月21日付)によると、ワリード・ブンニー報道官はメンバーシップ凍結に関して「根本的な問題は、暫定政府首班選出のタイミングと方法だ。連立は過半数を(承認を)得たことにするため、投票を行わなかった」と述べた。

また「メンバーシップを凍結した我々一人一人に異なった理由がある。近日中に皆の意見を代表する声明を発表する」と付言した。

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ヨルダンを拠点とする反体制活動家のムハンマド・カマール・ルブワーニーは声明を出し、暫定政府(首班)がシリア国内で国民によって選出されねばならないと述べ、発足当初から過ちを繰り返すシリア革命反体制勢力国民連立の枠内では活動を継続できないとしたうえで、「偽証者とならないために、首班選出の投票の場から退席し、連立のメンバーシップを凍結した」と発表した。

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アタースィー副議長の事実上の離反を受け、シリア革命反体制勢力国民連立は、暫定政府首班候補者の一人だったサーリム・アブドゥルアズィーズ・ムスラトを急遽副議長に任命した。

その他の反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ハーン・アサル村での化学兵器使用を軍によるものと断じ、国際調査委員会の受け入れを認め、また国内での調査活動の安全を確保すると発表した。

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クルディーヤ・ニューズ(3月20日付)は、ハサカ県ダイリーク市で、民主連合党人民防衛部隊とシリア・クルド進歩民主党の民兵が、街頭で「無許可」でナウルーズを祝っていた住民に発砲、殴打して、強制排除した、と報じた。

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パリで活動するシリア民主世俗主義諸勢力連立は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出への支持を表明した。

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イスラーム解放党(シリア州)は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出を、「アッラーへの裏切り…殉教者の死に対する裏切り」と厳しく非難し、「シャームの地における革命家たちを…代表していない」と断じた。

シリア政府の動き

アサド大統領は、アスマー・アフラス夫人とともに、ダマスカス県ティジャーラ地区にある美術教育センターを突如訪問し、反体制武装集団によるテロで犠牲となった生徒の遺族や教員と面談し、励ましの言葉を贈った。

SANA, March 20, 2013

SANA, March 20, 2013

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アサド大統領は遺族に対して「シリア全土が今日、傷ついている。兄弟、父母は失っていないとしても、親戚を一人も失っていない人などいない。こうした損失は子供を失うこととは同じではない。しかし、我々が被っていることで、我々が弱者になり得るはずもない。戦いは、意志と抵抗力の戦いであり、我々は強くなればなるほど、ほかの国民を護ることができる」と述べた。

SANA(3月20日付)が報じた。

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シリア外務在外居住者省は、シリア政府が国連事務総長に対して、ハーン・アサル村での反体制武装集団による化学兵器使用についての調査を行うための中立的な独立専門技術チームの設置を求めた。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、国連に対して書簡で「シャームの民のヌスラ戦線およびアル=カーイダと関係のある複数の集団がアレッポ市東部の民間化学物質工場を制圧し、トルコのガジアンテップ市でこれらの物質から化学兵器を製造した」としたうえで、EUおよびアラブ諸国が武装集団への武器供与を呼びかけたことが「化学兵器による攻撃を促した」と非難した。

ジャアファリー国連代表はまた、「穏健な集団への武器供与を支援するとしたジョン・ケリー米国務長官の発言は、米国がシリアの危機の平和的解決にどの程度真剣に関与しようとしているかを疑問視させる」と非難した。

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『ワタン』(3月20日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出を、「数ヶ月にわたって続いたポストをめぐる意見対立の末、オスマン人、アール・サーニー家に支えられたムスリム同胞団は、シリア生まれの米国人ガッサーン・ヒートゥーを暫定政府首班に任命することに成功した」と評した。

また「17歳の時に兵役を逃れて国を去り、シリアについて何も知らない人間がパラシュートで降りてきた」と批判した。

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『ティシュリーン』(3月20日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出が「カタールのヴィジョンに基づいた新たな役割分担」としたうえで、「連立が発足した政府は、シリア国内でのテロリストの行為を隠蔽しようとする…トルコ・カタールの策略のもとに生み出された」と非難した。

国内の暴力

ダマスカス県では、SANA(3月20日付)によると、アッバースィーイーン地区のサイイダ・ディマシュク教会裏に、反体制武装集団が撃った迫撃砲2発が着弾し、複数の市民が負傷した。

またジャウバル区では、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市、バイト・ジン市などに軍が砲撃を行った。

またハジャル・アスワド市(とりわけヤルムーク区、カダム区に近い街区)で反体制武装集団と軍が交戦し、軍が空爆を行った。

一方、SANA(3月20日付)によると、ウタイバ村および同市郊外、ドゥーマー市、フジャイラ村、ダーライヤー市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、グータ殉教者大隊を名乗る武装集団が、ハラスター市の空軍情報部施設を砲撃し、施設で大規模な火災が発生したと発表した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市に対して軍が空爆を行った。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルナーズ市に対して軍が空爆を行った。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ワアル地区、バーバー・アムル地区、などで軍が反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(3月20日付)によると、ヒムス市バーブ・トゥルクマーン地区、ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・フード地区、バーバー・アムル地区、ラスタン市、東ブワイダ市、アーバル市、ダブア市、ウユーン・フサイン市、ジュースィーヤ市郊外などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(3月20日付)によると、カフルダーイル村、ナイラブ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、ブスターン・バーシャー地区、アーミリーヤ地区、カラム・マイサル地区、カースティールー地区、シャイフ・サイード地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(3月20日付)によると、ブザーブール村近郊、ビンニシュ市、サラーキブ市、マアッラトミスリーン市、ワーディ・ダイフ軍事基地周辺、ハーミディーヤ軍事基地周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、革命総合委員会なる組織が、ハーン・アルナバ市(ゴラン高原)の空軍情報部施設と警察署を占拠したと発表した(未確認情報)。

レバノンの動き

NNA(3月20日付)によると、ベカーア県ヘルメル郡カスル村郊外に、シリア領内から発射された迫撃砲5発が着弾した。

しかし、地元治安当局高官は、AFP(3月20日付)に対して、着弾した迫撃砲は2発だと証言した。

諸外国の動き

イラン外務省は声明を出し、ハーン・アサル村での化学兵器使用に関して、「人類に対する敵対的行為」と厳しく非難した。

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イスラエルのユワリ・シュタイニッツ諜報戦略問題担当大臣は、ハーン・アサル村での化学兵器使用に関して「破壊分子の手によってであれ、政府の手によってであれ、民間人に対してこの兵器が使用されたことは明白だろう」と述べた。

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しかし『イディオト・アハロノト』(3月20日付)は、複数の諜報機関高官の話として、反体制武装集団が化学物質を保有している、ないしは化学兵器を装填できるミサイルや迫撃砲を獲得しておらず、ハーン・アサル村への化学兵器による攻撃は、シリア軍がサリン・ガスを使用したことによるものだと考えられると報じた。

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ロバート・フォード在シリア米大使は議会の公聴会で、「シリアで化学兵器が使用された証拠はない」と証言し、ハーン・アサル村での反体制武装集団による化学兵器使用を否定しつつ、「軍事バランスは体制にとって不利なかたちに展示始めた」と述べ、その軍事力が増大していることを示唆した。

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ロシア外務省のゲンナージー・ガティロフ外務次官はツイッター(3月20日付)で、ハーン・アサル村での反体制武装集団による化学兵器使用に関して、「正確な調査をしなければならない。現時点で、(使用を確認できる)明白な証拠はない」とつぶやいた。

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イスラエル軍は、ゴラン高原の停戦ライン近くで、シリア国内の戦闘を逃れてきたシリア人4人(うち2人は負傷者)を保護し、イスラエル国内の病院に搬送したと発表した。

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ヨルダンのサミーフ・マアーイタ内閣報道官(情報通信大臣)は、シリア情勢に関して「ヨルダンはシリアの体制存続、転換のいずれにも関与しないが…、シリアにおける政治解決の地平が見えないなか、国民、政府の双方に、シリア分裂が生じた場合、ヨルダンが多大な代価を支払わされるとの懸念がある」と述べた。

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トルコ政府は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー胃行為政府首班選出を「シリア国民の唯一の正統な代表として国民を保護しようとする決意と意思」を示すものだと高く評価した。

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国連の潘基文事務総長は安保理に報告書を提出し、そのなかでシリア国内での武装集団による攻撃でUNDOFの今後の活動が脅かされているとの懸念を表明した。

またゴラン高原の不安定化を受けて、イスラエルが数度にわたり兵力引き離し地域への領空を侵犯していると指摘した。

UNDOFの安全に関して、潘事務総長は「シリア政府が…基本的な責任を負う」としながらも、「反体制武装集団や紛争当時者に影響力を持つ国々」に、UNDOFの活動の自由と隊員の安全を保障することの重要性を改めて確認するよう求めた。

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ドイツのピーター・フリードリヒ内務大臣は、2013年中にシリア人避難民5,000人を受け入れると発表、現在シリアの周辺諸国で受け入れ候補者の選定を行っている、と発表した。

AFP, March 20, 2013、Akhbār al-Sharq, March 20, 2013、al-Ḥayāt, March 21, 2013、Kull-nā Shurakā’, March 20, 2013, March 21, 2013, March
23, 2013、al-Kurdīya News, March 20, 2013、Naharnet, March 20, 2013、NNA,
March 20, 2013、Reuters, March 20, 2013、SANA, March 20, 2013、Tishrīn, March 20, 2013、UPI, March 20, 2013、Yedioth Ahronoth, March 20, 2013、al-Waṭan, March 20, 2013などをもとに作成。

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