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シリア政府の動き
ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官は訪問先のインド(ニューデリー)でサルマーン・クルシード外務大臣と会談し、シリア・インド二国間関係、シリア情勢などについて協議した。
シャアバーン補佐官は、「西側諸国のシリアへの軍事介入を回避」しようとするBRICs諸国の姿勢に謝意を示した。
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バッシャール・ジャアファリー国連代表大使は、ヤルムーク殉教者大隊によるUNDOF要員の拉致に関して、「UNDOF要員を拘束したテロ集団は、イスラエルと協力している…。イスラエルが国境地帯に民兵が支配する(緩衝)地帯を設置したら、南レバノンと同じ失敗を繰り返すことになろう」と警告した。
国内の動き
『ハヤート』(3月8日付)によると、反体制勢力は「シリア女性の金曜日」と銘打って反体制デモを呼びかけ、複数の地区で金曜礼拝後にデモが行われた。
アレッポ県アレッポ市ブスターン・カスル地区では、自由シリア軍アレッポ軍事評議会議長のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐ら武装集団がデモに参加した。
またダマスカス県アサーリー地区、ヒムス県ヒムス市ワアル地区でも反体制デモが発生した。
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SANA(3月8日付)は、アレッポ県アレッポ市アシュラフィーヤ地区で、住民がデモを行い、軍支持、テロ集団排除を訴えたと報じた。
国内の暴力
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス県ハーリディーヤ地区、旧市街などが軍の砲撃を受け、軍と反体制武装集団が交戦した。
またヒムス市郊外のダール・カビーラ村が軍の空爆を受けたという。
一方、SANA(3月8日付)によると、クサイル市、ガントゥー市、タルビーサ市、アーミリーヤ市、マクラミーヤ市、アシュラフィーヤ市、ラスタン市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またレバノン領内からクサイル市郊外への潜入を試みた反体制武装集団を、軍が撃退した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市、バーブ市、アナダーン市などが、軍の砲撃を受けた。
またアレッポ市旧市街のウマイヤ・モスク周辺、ブスターン・カスル地区、マルジャ地区、ブアイディーン地区などで、軍と反体制武装集団が交戦し、反体制武装集団は旧市街のハーン・シャイフ地区を占拠したという。
一方、SANA(3月8日付)によると、ハーン・アサル村、アンジャーラ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、マサーキン・ハナーヌー地区、シャイフ・サイード地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア・アラブ・テレビ(3月7日付)などによると、マシュルーウ・ドゥンマル地区で、アスアド・マフナー・ダマスカス県知事事務局長が乗った車が、反体制武装集団の仕掛けた爆弾の爆発に巻き込まれ、同局長が死亡した。
一方、SANA(3月8日付)によると、アーブ市郊外、フジャイラ村、ザバダーニー市、ハジャル・アスワド市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サイフッラー大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス県では、SANA(3月8日付)によると、ジャウバル区、ドゥンマル区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またバーブ・サギール近くの墓地に、反体制武装集団が発射した迫撃砲が着弾し、市民2人が負傷した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、UNDOF要員が誘拐された現場に近いアービディーン村で、軍と反体制武装集団が激しく交戦、軍はヘリコプターを投入し、空爆を行った。
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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市が軍の空爆を受けた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アリーハー市、カフルナブル市、ハーッス村、フバイト村、ヒーシュ村などが、軍の砲撃を受けた。
一方、SANA(3月8日付)によると、ビンニシュ市、ハーン・シャイフーン市、ハミーディーヤ市、ヒーシュ村、ナージヤ村、アブー・ズフール市、タッル・サラムー市、ウンム・ジャリーン村、ブワイティー市、ハミーディーヤ市、トゥウーム村、タルヒーヤ市、サルジャ村、マガーラ村、ナイラブ村、マジュダリヤー村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またシャビーバ軍事基地、カルミード軍事基地を襲撃しようとした反体制武装集団を軍が撃退し、複数の戦闘員を殺傷した。
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ラタキア県では、SANA(3月8日付)によると、グナイミーヤ村で、略奪を行っていたシャームの民のヌスラ戦線を軍が殲滅した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(3月8日付)によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、タウヒード旅団、正統カリフ大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
反体制勢力の動き
リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相が率いるシリア公務員国民自由連合はカタールの首都ドーハで第1回拡大大会を開いた。
大会で、ヒジャーブ前首相は、ロシア、イラン、ヒズブッラー、そしてイラクのヌーリー・マーリキー内閣によるアサド政権支持を厳しく非難する一方、「姉妹国(アラブ諸国)、友好国」に対して、「シリア革命」支持を訴えた。
またアスアド・ムスタファー副代表は、体制打倒、自由シリア軍への武器供与、シリアの友連絡グループとの連絡強化などを骨子とする基本方針を示し、国連決議に基づく体制転換を前提とした政治解決を訴え、国際社会に「責任を果たす」よう求める一方、「多元的民主制」の樹立を主唱した。
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シリア国民民主同盟はカイロで第2回定例大会を開き、シリア国内で活動するすべての武装集団に自由シリア軍の傘下に入るよう呼びかける一方、国内外の反体制組織に対して、2012年7月にカイロで採択された「国民誓約文書」、「移行期間概要に関する共同政治ビジョン」に基づく統合と多元的市民国家建設に向けた対話を行うよう主唱した。
諸外国の動き
『ガーディアン』(3月8日付)は、ヨルダンの治安消息筋の話として、米国、英国、フランスが、シリアの世俗的な反体制武装集団に教練を行い、サラフィー主義武装集団に代わる反体制武装闘争と政権打倒後の治安維持の担い手を作り出そうとしていると報じた。
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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は訪問先の英国で記者団に対して、英独両外相とシリアへの武器禁輸措置をめぐって協議し、「一方の当事者だけが武器を持っていなかったら、最終的にこの当事者は相手を殺害するすべての機会を有することになろう」と述べ、反体制武装集団への武器供与と紛争のさらなる軍事化の必要を訴えた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はBBC(3月7日付)に対して、「我々の原則は、いかなる体制の転換にも介入しないというものだ。我々は国内紛争への介入に反対している…。我々は、暴力停止と対話開始に前提条件を設けることに反対している。なぜなら、最優先事項は生命を守ることだからだ」と述べた。
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ヤルムーク殉教者大隊によるUNDOF要員の拉致に関して、各紙は、国連外交筋の話として、国連が人質引き渡しのため、ゴラン高原付近での攻撃を数時間停止するよう求めたが、最終的な結論には至っていないと報じた。
またヤルムーク殉教者旅団の報道官は、国連との間でUNDOF要員の引き渡しの合意が成立したが、ジャムラ村に近いナーフィア村が軍の攻撃にさらされており、国連の車輌が入ってこられない、と述べた。
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ヨルダン北部のザアタリー避難民キャンプでは、AFP(3月7日付)によると、火災が発生し、テント35張が焼失した。死傷者はなかった。
AFP, March 8, 2013、Akhbar al-Sharq, March 8, 2013、The Guardian, March 8, 2013、al-Hayat, March 9, 2013、Kull-na Shuraka’, March 8, 2013、al-Kurdiya News, March 8, 2013、Naharnet, March 8, 2013、Reuters, March 8, 2013、SANA, March 8, 2013などをもとに作成。
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