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国内の動き
クッルナー・シュラカー(2月26日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市での民主統一党と自由シリア軍(ハサカ革命軍事評議会)の停戦合意を受け、トルコ赤新月社、シリア赤新月社、ヒヴィ協会(クルド人NGO)などの人道支援物資が同市に到着、配給されたと報じた。
また停戦合意に基づき、20人の民間人からなる自治評議会が発足した。
同評議会は、民主統一党、シリア・クルド進歩民主党、シリア・クルド左派党、自由シリア軍を支持する元バアス党員、シリア・ムスリム同胞団員などからなり、反体制デモを主導してきた若者、シリア・クルド国民評議会は排除された、という。
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SANA(2月26日付)は、ダマスカス郊外県のフサン・マフルーフ知事のイニシアチブのもと、バービッラー市とダッフ・シューフ地区の住民が、両市からの武装集団退去を求める運動を開始したと報じた。
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『ワタン』(2月26日付)は、シリアの工業省の試算として、2011年3月以降の紛争による工業施設の損害額が405億シリア・ポンド(4億2000万米ドル)相当に達している、と報じた。
反体制勢力の動き
民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はダマスカスで記者会見を開き、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣がモスクワ訪問時(25日)に行った対話呼びかけを断固拒否すると発表した。
アブドゥルアズィーム代表は「我々は、政府、反体制勢力のいずれが呼びかけたとしても、政府監督下での会合や対話を支持しない」と述べた。
また「こうした呼びかけは、現政権のイメージを改善することが目的」と断じた。
そのうえで「我々は、民主的・多元的・代議制民主主義体制への転換という国際的・地域的なコンセンサスのもと、移行期、移行期政府に関する交渉を支持する」と付言した。
また記者会見では、サフワーン・アッカーシャが委員会の声明を出し、政府による対話イニシアチブを断固として拒否すると発表した。
反体制勢力の動き
ヨルダンの匿名サラフィー主義活動家は、UPI(2月26日付)に対して、シリア国内で破壊活動を行うサラフィー主義者が劣勢に立たされていることを初めて認めた。
この活動家は「シャームの民のヌスラ戦線、タウヒード旅団などのムジャーヒドゥーン組織は、シリア各県、とりわけダマスカス、アレッポ、ダルアー、イドリブで政府軍の激しい治安対策に曝され、住民のなかに姿を隠さざるを得なくなっている」と証言した。
しかし、ダイル・ザウル県のメンバーの戦況は「非常に良好だ」と述べた。
この活動家によると、ヨルダンからシリアへと不法に潜入するサラフィー主義者戦闘員の数は、95%も減少した、という。
なおこの発言に先立って、ヨルダンのサラフィー主義潮流は、ダルアー県で、シャームの民のヌスラ戦線が軍の「非常に激しい」攻勢にさらされていると発表していた。
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ハサカ県で反体制活動を行っているスライマーン・ユースフ(アッシリア教徒)はAKI(2月26日付)に対して、アサド政権から危機解決政治プログラム実施のための国民対話への参加を求める招待状を受け取ったが、参加を拒否すると述べ、アサド政権の退陣を要求した。
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AFP(2月26日付)は、2月22日のトルコでのシリア革命反体制勢力国民連立の総合委員会会合で選出予定の移行期政府首班に関して、5人の候補者の名前が反体制勢力のなかであがっていると報じた。
シリア国民評議会のサミール・ナッシャールによると、評議会は、ブルハーン・ガルユーン、サーリム・ムスラト、ウサーマ・カーディーの3人を擁立することを決定したとしたうえで、この3人を国民連立に提示し、コンセンサスが得られるかを見極めるという。
またこの3人のほかに、リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相、ハーリド・ムスタファーが首班候補として名前が挙がっている。
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クッルナー・シュラカー(2月26日付)などは、シリア・クルド民主党アブドゥルハキーム・バッシャール派の党員が、イラク・クルディスタン地域政府のマスウード・バールザーニー大統領宛てに公開書簡を発表、そのなかで、党幹部のムハンマド・イスマーイール、スウード・ムッラー、アブドゥルハキーム・バッシャール書記長が、イラク・クルディスタン地域のもとで党員の指導に非党員を当たらせているとの苦情を申し立て、その中止を求めた。
国内の暴力
アレッポ県では、反体制武装勢力がアレッポ市のウマイヤ・モスクの南側の壁に爆弾を仕掛けて爆破し、モスクと隣接する建物などに甚大な被害を受けたとSANA(2月26日付)が報じた。
またAFP(2月26日付)は、軍消息筋の話として、この爆破は「反体制勢力がモスクの中庭に潜入するため」だと報じた。
これに対して、シリア人権監視団は、反体制武装勢力がウマイヤ・モスクの中庭に突入し、軍と激しく交戦したと発表した。
またシリア人権監視団によると、ハーン・アサル村の警察学校周辺でも、軍と反体制武装勢力の戦闘が続いた。
一方、SANA(2月26日付)によると、ハーン・アサル村で、軍が警察学校の制圧を試みる反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
またカフルナーハー村、アウラム・クブラー町、ハイヤーン町、マンスーラ村、マンナグ村、クシャイシュ市、アイン・ダクナ村などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
他方、DP-News(2月27日付)は、アレッポ市での戦闘激化を受け、ロシア領事館職員の家族25人が25、26日にシリア軍のヘリコプターでラタキア市に退避した、と報じた。
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ダマスカス郊外県では、SANA(2月26日付)によると、ダーライヤー市、ナブク市、ドゥーマー市郊外、ハラスター市、アルバイン市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、イスラーム旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
また反体制武装勢力はジャルマーナー市で爆破テロを行い、複数の市民が負傷した。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、軍がジャウバル区に対して砲撃を行い、反体制武装勢力の戦闘員6人が死亡した。
一方、SANA(2月26日付)によると、バルザ区にある衛生教育チャンネルの施設が反体制武装勢力の砲撃を受け、一部損壊した。死傷者は出なかった。
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イドリブ県では、SANA(2月26日付)によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺、ハーミディーヤ航空基地周辺、ラーミー村、バシーリーヤ市、ダルクーシュ町、ナイラブ村、アブー・ズフール市郊外、サルミーン市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、SANA(2月26日付)によると、ダーイル町の軍の検問所を襲撃しようとした反体制武装勢力に軍が応戦し、複数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、SANA(2月26日付)によると、東ブワイダ市、アクラブ町、タッルドゥー市、サアン村、タルビーサ市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
また反体制武装勢力は、ダマスカス県・ヒムス市間の国際幹線道路で、ガス輸送トラックを襲撃した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(2月26日付)によると、ダイル・ザウル市各所で、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
また反体制武装勢力がキバル地方の住宅地区に仕掛けようとしていた爆弾が誤って爆発し、複数の戦闘員が死亡した。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はドイツを訪問し、ジョン・ケリー米国務長官と会談した。
ヴィクトリア・ヌーランド米国務省報道官によると、会談は約45分にわたって行われ、シリア情勢などが「真剣かつ深く」協議された。
同報道官によると、会談では、移行期政府樹立を実現するためにジュネーブ合意をどのように実施するかに焦点が当てられ、ラブロフ外務大臣は、反体制勢力に対してシリア政府との対話を行う代表を指名するよう求めたという。
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ラブロフ外務大臣は、ドイツ訪問に先立って、モスクワで記者会見を開き、「シリアの問題を軍事的に解決しようとする過激派が対話開始のイニシアチブを妨害している…。彼らはシリア革命反体制勢力国民連立を含むシリアの反体制勢力を今や牛耳っている」と述べた。
また「ワシントンは、対話開始前にアサドを退陣させる必要があるとの要求をとりさげるよう反体制勢力を説得しなければならない」と述べた。
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『シャルク・アウサト』(2月26日付)は、トルコの複数の消息筋の話として、PKKのアブドゥッラ・オジャランが、シリア北部のクルド人に圧力をかけ、アサド政権から距離を置くよう説得、これを受け彼らが柔軟な姿勢を示すようになったと報じた。
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『ニューヨーク・タイムズ』(2月26日付)は、湾岸諸国がクロアチアで購入した武器をシリアの反体制武装勢力に提供したと報じた。
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ファルハーン・ハック国連報道官はUNDOF職員1人が行方不明となり、現在国連が行方を調査している、と発表した。
行方不明となっている職員は、オーストリア生まれでカナダ国籍の法律顧問カール・カンポ氏。
AFP, February 26, 2013、Akhbar al-Sharq, February 26, 2013、AKI, February 26, 2013、DP-News, February 27, 2013、al-Hayat, February 27, 2013、Kull-na Shuraka’, February 26, 2013、al-Kurdiya News,
February 26, 2013、Naharnet, February 26, 2013、Reuters, February 26, 2013、SANA,
February 26, 2013、al-Sharq al-Awsat, February 26, 2013、Syria News, February 26, 2013、UPI, February 26, 2013、The New York Times, February 26, 2013、al-Watan, February 26, 2013などをもとに作成。
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