2013年2月27日のシリア情勢

反体制勢力の動き

『ハヤート』(2月28日付)は、ヒムス県の反体制武装集団司令官を名のる人物の話として、トルコ経由で「複数の支援国」が1月に反体制武装勢力に武器弾薬の供与した、と報じた。

この人物は「我々は、バーブ・ハワー国境検問所を経て、これらの武器を合法的、公的、通常通り受け取った…、密輸経路を通じて入手したのではない」と述べたという。

また「しかし、これらの武器は我々が勝利するには不充分だ。トルコには別の武器補給も届いているが、まだ受け取っていない」と付言した。

一方、ダマスカス郊外で活動するという反体制武装集団の司令官は、「これらの武器を入手した者は、真の戦闘員ではない。彼ら(支援国)は、戦闘を行っていない軍事評議会に武器を提供している。前線で戦闘しているのは我々だ」と述べた。

また「彼らは、ロケット弾20発、対戦車砲などを我々に与える見返りに、我々の大隊に(軍事評議会への)参加を求めてきた。彼らはすべてを自分たちの監督下に置こうとしている。だが我々は断った」と付言した。

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自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長は、ムスタクバル・テレビ(2月28日付)のインタビューに応じ、そのなかで「我々の拠点へのヒズブッラーの砲撃を阻止するために介入するよう、ミシェル・スライマーン大統領に個人的に求めてきた」と述べた。

イドリース参謀長はまた「我々は、イランとロシアが支援する犯罪者体制との戦争状態にあるだけで、ヒズブッラーとは戦いたくない…。我々はクサイル近郊の戦闘員にヒズブッラーとの戦闘を行わないよう促してきた」と強調した。

しかし「ヒズブッラーがレバノンから自由シリア軍の拠点を標的にしているという証拠を示されることになろう」と断じた。

クルド民族主義勢力の動き

民主連合党のサーリフ・ムスリム共同党首はパリで記者会見を開き、「トルコは(シリアの)革命を逸脱させ、その軍事化に荷担した。ジハード主義者を支援してきた」と非難した。

また「トルコは自国の国益に沿って影響力を行使しようとしている。シリアの反体制勢力を支援することで、この運動からクルド人を排除しようとしてきた」と述べた。

さらに「(シャームの民の)ヌスラ戦線はトルコに訓練基地を持っている」と指弾した。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立に参加する「在外の反体制勢力は…、トルコ政府と密接な関係を持っており、民主連合党が支配するクルド人地区で自治組織を設置しようとするクルド最高会議に対処する意思はない」と非難した。

ムスリム共同党首は、民主連合党が自由シリア軍の活動と調整を行うとしつつ、「紛争の軍事化」を改めて拒否し、「我々が行っていることは(自由シリア軍とは)異なっている。それは自衛だ」と強調した。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、SANA(2月27日付)によると、ドゥーマー市、ダイル・アサーフィル市、シャブアー町、アーリヤ市郊外、ザマルカー町、ダーライヤー市、ナバク市、ザバダーニー市、ハジャル・アスワド市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、ハールーン・ラシード大隊メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またオートストラード・ハラスターの燃料配給所に、反体制武装勢力が爆弾を仕掛け、爆破・破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(2月27日付)によると、ダマスカス大学文学部、アサド大学病院近くに迫撃砲が着弾した。

これに関して、シリア人権監視団は、マッザ区ダマスカス大学文学部近くの軍事裁判所裏に迫撃砲が着弾したと発表した。

またシリア人権監視団によると、ジャウバル区で、軍が砲撃を続け、反体制武装勢力と交戦した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(2月27日付)によると、ダイル・ザウル市内各所で、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(2月27日付)によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺、タッル・サラムー村、ナフラ市、カフルジャーリス市、マアッル・ダブスィー市、バザーブール村、マアッラトミスリーン市、ナイラブ村、サラーキブ市郊外、ラーミー村、ダルサ市、ダルクーシュ町、バクサルヤー市、ダリーヤ村などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、シリア人権監視団によると、サラーキブ市、サルミーン市が軍の砲撃・空爆を受けた。

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ハマー県では、SANA(2月27日付)によると、ザフラ・マダーイン市で、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、マジド旅団メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(2月27日付)によると、イドリーン地方で、レバノンから潜入しようとした反体制武装勢力を国境警備隊が撃退した。

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アレッポ県では、SANA(2月27日付)によると、アレッポ市ブスターン・カスル地区、ブスターン・バーシャー地区、カラム・マイサル地区、カラム・トゥラーブ地区、カッラーサ地区、マサーキン・ハナーヌー地区などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、外国人を含む複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市アタバ地区では、軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバー12人を殺害した。

ハーン・アサル村の警察学校周辺では、軍が反体制武装勢力と戦闘を続け、アブドゥッラフマーン・ブン・アウフ大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷した。

またザハビーヤ村、アッサーン村、アズィーザ市、タームーラ村、アルバイド市、タッル・シュガイブ市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、シリア人権監視団によると、アレッポ市旧市街のウマイヤ・モスク周辺で、軍と反体制武装勢力が交戦した。同監視団によると、モスクの一部は反体制武装勢力が占拠している、という。

またマスカナ市、タッル・アーブール市、ハーン・アサル村などが軍の空爆を受けた。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(2月27日付)によると、タッル・タムル町で、自由シリア軍が「シャッビーハ」と国防隊(武装した民間人)を襲撃したが、戦闘で自由シリア軍兵士2人が死亡した。

このうち1人はトルコ領内に搬送され死亡した。

しかし同報道によると、自由シリア軍が県北部、北東部に向けて進軍を続け、対イラク国境に位置するヤアルビーヤ市の国際幹線道路およびタッル・アルウ市を制圧した。

また自由シリア軍はカフターニーヤ市に迫っており、住民の恐怖が高まっているという。なおカフターニーヤ市は民主連合党人民防衛隊が周囲に検問所5カ所を設置し警護を行っている。

一方、DPA(2月28日付)は、自由シリア軍消息筋の話として、ラアス・アイン市での戦闘で、自由シリア軍が、PKKのシリア人メンバーでない外国のクルド人戦闘員とイラン人戦闘員多数を殺害したと主張している、と報じた。

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AFPは26日午後、シリア・インターネット軍を名のる集団が同通信社のツイッターのアカウントをハッキングし、同通信社とは無関係の文書、情報を発信した、と発表した。

シリア・インターネット軍(ウマル・イスマーイール司令官)は2012年7月18日に犠牲者に哀悼の意を示すため、活動停止を発表している。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長がテレビ演説を行い、そのなかでシリアの紛争へのヒズブッラーの関与を疑う一連の報道が「嘘で根拠のない非難」だと一蹴した。

ナスルッラー書記長は、シリアの反体制勢力がシリア国内の農村で暮らすレバノン人を根絶しようと「軍事行動」を行い、一部の住民がスンナ派の住む農村地帯から追放されたと指摘、残った住民が自衛のために武器をとることは正当な権利だと述べた。

また「シリア国外からきた狙撃手たちがあらゆる和解を妨害した」と非難したうえで、「地域を維持し、不和を回避するために流血は止められねばならない」と強調した。

ナスルッラー書記長は、シリア領内の国境地帯に位置する23の村、12の農園に様々な宗派のレバノン人約30,000人が居住しているとしたうえで、「(レバノン)国家はこれら30,000人のレバノン市民のために何をしてきたのか?我々は軍の介入を求めているわけではないが、何らの政治的努力もなされていない。カタール、サウジアラビア、トルコ、米国は武装集団を通じて影響力を行使しているのにだ。国境地域で起きている宗教的・宗派的浄化を止めるためにどのような努力がなされたのか」と警鐘を鳴らした。

諸外国の動き

ジョン・ケリー米国務長官はパリで、フランスのフランソワ・オランド大統領と会談、シリア情勢などを協議した。

会談後、ケリー国務長官は、米国とフランスがシリアにおける政治的移行プロセスを加速させるための手段を検討していると述べるとともに、シリアの反体制勢力が「さらなる支援を必要としている」と強調した。

またケリー国務長官は、アサド大統領が退陣すべきだと改めて述べた。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立については、「現地の一部の集団が支持していない」ことを認めつつ、「シリア国民のニーズに応えるため…(連立を)さらに支援する…。重要なのは解放区にさらなる支援を行うこと」と述べた。

これに関して、ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、バラク・オバマ政権が「非戦闘面での支援というかたちで、シリア国民とシリアの反体制勢力への支援を増大させるだろう」と述べた。

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『ワシントン・ポスト』(2月27日付)は、複数の米国高官の話として、米国が対シリア政策の方針転換を行い、反体制勢力への装備品、軍事教練、人道支援強化などを検討している、と報じた。

同紙は、この方針案は、ジョン・ケリー米国務長官が今週の欧州・中東諸国訪問で同盟国に対して提示されるという。

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イラクのヌーリー・マーリキー首相はAP(2月27日付)のインタビューに応じ、そのなかでシリアの反体制勢力が勝利すれば、レバノンとイラクの宗派対立が激化し、地域全体を不安定化させるアル=カーイダの新たな拠点が作り出されるだろうと警鐘を鳴らした。

マーリキー首相は「世界が対話を通じた平和的解決を支持しなければ…、トンネルの先にいかなる明かりも見ることはないだろう」と懸念を表明した。

またシリアの「反体制勢力も政府も互いを抹殺などできない…。もし反体制勢力が勝利すれば、レバノンで内戦が生じ、ヨルダンは分裂し、イラクで宗派戦争が起きるだろう」と述べた。

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 イラクのハーディー・アーミリー運輸大臣は、トルコとカタールによるシリアの反体制武装勢力支援がイラクへの宣戦布告の域に達しているとの見方を示し、イラクがその隣国(シリア)で宗派主義的な色合いを強めている紛争の影響に苦しんでいると述べた。

バドル機構の代表でもあるアーミリー運輸大臣は、トルコとカタールが、シリアの紛争の平和的解決をめざすすべての努力を妨害していると述べた。

また、シリア政府に対する武装闘争を行う勢力を支援するアンカラとドーハが、イラクのアル=カーイダと関係のある「シャームの民のヌスラ戦線」などのジハード主義集団への武器供与を行っていると非難した。

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ヨルダンのサミーフ・マアーイタ内閣報道官は、ヨルダンがシリア危機の当事者ではなく、「犠牲者」であると述べ、諸外国を含むすべての紛争当事者に介入を拒否し、政治的解決を受け入れるよう呼びかけた。

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シリア国内のテロ活動を支援するカタールのハマド・ブン・ハリーファ首長は、国連「文明の同盟」第5回フォーラム(オーストリア)で演説し、「シリアとパレスチナで起きている暴力行為と人権侵害」に関して、国際社会が責任をもって対処すべきだと述べた。

またハリーファ首長は、「正統性を失ったシリアの体制による国民への殺戮を支援する国の姿勢」を非難する一方、「それ以外の国は言葉で非難するだけである」と指弾した。

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AFP(2月27日付)は、イスラエル軍報道官の話として、イスラエル占領下のゴラン高原にシリア側から発射された迫撃砲が着弾したと報じた。

同報道官によると、迫撃砲は、シリア軍と反体制武装勢力の交戦で「誤射」されたものだという。

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イスラエル軍は声明を出し、ゴラン高原での軍と反体制武装勢力の戦闘(17日)で負傷し、イスラエル国内の病院に搬送、治療を受けていたシリア人7人のうち6人が退院した、と発表した。

『ハヤート』(2月27日付)は、6人はシリアに送還されたと報じた。

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ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣は、ロシア国内でシリア人避難民の問題を協議するための国際会議を開催する用意があると述べた。

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国連安保理でシリア情勢に関する非公開会合が行われ、バレリー・アモス人道問題担当事務次長がシリアへの人道支援の進捗状況などを報告した。

アモス事務次長は会合後、国連による人道支援のペースがシリアでの危機の悪化のペースに追いつかない現状を吐露する一方、「費用の上昇への深刻な懸念にも襲われている」と述べた。

これに対して、シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、シリア政府が最大限の努力を行っていることを強調した。

ジャアファリー代表は「我々は人道的危機に曝されており、国連の支援を必要としている。我々は国連人道調整事務所との合意に署名した。我々は同事務所が成功することを望んでいる。しかし、我々、そしてあなた方国連は、シリアの主権を尊重するという国連総会決議46/186の諸条項を遵守しなければならない」と述べた。

AFP, February 27, 2013、Akhbār al-Sharq, February 27, 2013、AP, February 27, 2013、DPA, February 28, 2013、al-Ḥayāt, February 27, 2013, February 28, 2013, March 1, 2013、Kull-nā Shurakā’,
February 27, 2013、al-Kurdīya News, February 27, 2013、al-Mustaqbal TV, February
28, 2013、Naharnet, February 27, 2013、Reuters, February 27, 2013、SANA, February
27, 2013、UPI, February 27, 2013などをもとに作成。

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