国連安保理は、ダーイシュ(イスラーム国)とアル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線が占拠するヤルムーク・パレスチナ難民キャンプ(ダマスカス県)の状況に対応するための緊急会合を開催した。
会合では、米国がキャンプ内のダーイシュ、ヌスラ戦線に対するシリア軍の空爆を非難し、人道支援物資搬入のために同地からのシリア軍の撤退と包囲解除を求める安保理決議案の採択を求めた。
しかし、テロ支援につながり兼ねない決議案は、ロシアなどの反対によって廃案となった。
会合では、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表、UNRWAのマイケル・キングズリー・駐シリア事務局代表がジュネーブから証言し、キャンプの人道状況などについて報告した。
西側外交筋によると、サマンサ・パワー米国連大使は会合で、キャンプ包囲の継続、「樽爆弾」による空爆の責任はシリア政府にあると主張した。
これに対して、デミストゥラ代表は、シリア政府は、ダーイシュ、ヌスラ戦線がキャンプを占拠しているとして、キャンプへの空爆・砲撃を正当化していると述べた。
米国が提出した決議案は「キャンプのテロ活動はダーイシュ、ヌスラ戦線によるものだ」と非難、「これらの組織が即時にキャンプから撤退する必要がある」と主唱する一方、キャンプ内に依然として数千人の住民がいると指摘、「キャンプに対する無差別空爆をシリア政府が再開することに懸念」を表明していた。
そのうえで、シリア政府に対して攻撃を停止し、民間人の保護とUNRWAによる人道支援物資搬入を認めるよう呼びかけていた。
『ハヤート』(5月6日付)が伝えた。
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『ハヤート』(5月6日付)によると、PLO使節団が、シリア政府などとヤルムーク・パレスチナ難民キャンプの「中立化」に向けた協議を行うため、ダマスカス入りした。
AFP, May 5, 2015、AP, May 5, 2015、ARA News, May 5, 2015、Champress, May 5, 2015、al-Hayat, May 6, 2015、Iraqi News, May 5, 2015、Kull-na Shuraka’, May 5, 2015、al-Mada Press, May 5, 2015、Naharnet, May 5, 2015、NNA, May 5, 2015、Reuters, May 5, 2015、SANA, May 5, 2015、UPI, May 5, 2015などをもとに作成。
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