ヒムス県では、シリア人権監視団によると、UNESCO世界文化遺産のパルミラ遺跡を擁するタドムル市に対して、ダーイシュ(イスラーム国)が19日深夜から攻勢を開始し、同市北部地区(同市の約3分の1)を占拠した。
ドゥラル・シャーミーヤ(5月20日付)によると、ダーイシュの攻撃を受け、シリア軍はタドムル市北部地区の主要拠点である総合情報部ビル、同地区管理局ビル、パン製造工場などを喪失、AFP(5月20日付)は、活動家の話として、総合情報部ビルを喪失したシリア軍は同地から撤退したと伝えた。
ドゥラル・シャーミーヤによると、ダーイシュはまた、市内中心部の広場に近い東部地区に侵攻すると、同地のハッターブ検問所に駐留するシリア軍部隊は逃走したという。
これに対して、シリア軍は北部地区一帯を空爆したという。
一方、『ハヤート』(5月21日付)によると、タドムル革命調整は、タドムル市住民に対して、「シリア軍の狙撃兵がタドムル市内の軍事情報局ビルやタドムル刑務所に向かう動く標的を狙撃している」として、市内の移動を控えるよう呼びかけた。
タドムル革命調整によると、ダーイシュはタドムル市庁舎、国立博物館方面に進軍を続けているという。
なお、クッルナー・シュラカー(5月20日付)は、タドムル調整のウサーマ・ハティーブを名乗る活動家が、「シリア軍がタドムル市東部一帯(タドムル航空基地、タドムル刑務所)と遺跡がある南西部から「突如」戦術的撤退をした」と主張していると伝えた。
これに対し、SANA(5月20日付)は、国防隊が、住民の大多数の避難経路を確保しつつタドムル市内の複数の地区から撤退する一方、ダーイシュが遺跡地区への侵入を試みるなか、同地を守備するために転戦したと伝えた。
SANAによると、シリア軍はまた、ジャズル・ガス採掘所地帯にある軍事拠点に対するダーイシュの攻撃を撃退したという。
エジプトのアズハル機構は声明を出し、ダーイシュ(イスラーム国)によるタドムル市侵攻に関して「深い懸念」を表明、UNESCO世界文化遺産のパルミラ遺跡の保護を「全人類の戦い」と位置づけた。
『ハヤート』(5月25日付)が伝えた。
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アレッポ県では、SANA(5月20日付)によると、アレッポ市東部のシャイフ・ナッジャール工業団地地区周辺、航空士官学校一帯で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
AFP, May 20, 2015、AP, May 20, 2015、ARA News, May 20, 2015、Champress, May 20, 2015、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2015、al-Hayat, May 21, 2015、May 25, 2015、Iraqi News, May 20, 2015、Kull-na Shuraka’, May 20, 2015、al-Mada Press, May 20, 2015、Naharnet, May 20, 2015、NNA, May 20, 2015、Reuters, May 20, 2015、SANA, May 20, 2015、UPI, May 20, 2015などをもとに作成。
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