Contents
国内の動き(シリア政府の動き)
アサド大統領は、9日に新たに任命した閣僚の任命式を行ったのち、ワーイル・ハルキー改造内閣の閣議を召集した。
閣議において、アサド大統領は、シリアが直面する現状のなかで国民の内閣への希望がこれまで以上に高まっていると指摘、各省庁に対して自らの責任感を国民の希望を実現するための原動力とするよう指示した。
また「シリアを標的とする勢力は国のインフラを破壊するため、体系的な活動を行っている」と反体制武装活動を非難した。
SANA(2月12日付)が報じた。
**
アリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣は『ガーディアン』(2月11日付)のインタビューに応え、そのなかで、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長と「訪問できる外国の都市で会談する用意がある」と述べた。
ハイダル国務大臣はまた、国民対話に関して「国会と大統領を選ぶ自由選挙を行う仕組みを拡充する手段」と位置づけたうえで、同問題が対話における主要な議題になるとの認識を示した。
そのうえで「実質的な国民対話はシリア国内で行われねばならない。なぜならそれはシリアの尊厳に関わる問題だからだ」と述べた。
**
アリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣は、赤十字国際委員会の使節団(マリアン・ガセル団長ら)とダマスカスで会談し、シリア国内での人道支援活動の状況について協議した。
会談後、ハイダル国務大臣は、記者団に対し、「(危機解決政治プログラム)閣僚委員会が検討を行うような公式文書によるいかなるイニシアチブもまだ受け取っていない」と述べ、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長による条件付き対話プログラムを牽制し、アサド政権の危機解決政治プログラムに沿った対話を暗に呼びかけた。
またハイダル国務大臣は「国民対話は、シリア人のみの運営、参加のもと、シリア国内で行われるだろう」としつつ、「対話に前提条件はなく、誰も前提条件やいわゆる譲歩を求められることはない」と強調した。
**
ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は『ワタン』(2月12日付)に対して、ジョン・ケリー国務長官就任に関して、「米国の新政権は自らの中東地域における国益、そしてシリア国民の国益に合致しない政策を転換することを希望する」と述べた。
**
イマード・ハミース電力大臣は、シリア国内での破壊行為による停電で2180億シリア・ポンドの経済的損失が生じている、と述べた。
SANA(2月12日付)が報じた。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、SANA(2月12日付)によると、ザマルカー町、アルバイン市、ドゥーマー郊外、ハラスター市、アドラー市などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
アレッポ県では、イスラーム主義者の武装集団がアレッポ・ラッカ街道沿いに位置するジャッラーフ航空基地(クシャイシュ航空基地)を戦闘の末に制圧したとシリア人権監視団が発表した。
同監視団によると、反体制武装勢力による飛行場制圧はこれが初めてだが、飛行場には若干の装備が残されていただけだった、という。
この戦闘で軍の兵士40人以上が死傷、捕捉され、反体制武装勢力の戦闘員も5人が死亡、2人が負傷した。
イスラーム主義者の武装集団は「アレッポ広報局」の名で声明を出し、ナイラブ航空基地、アレッポ国際空港、そして両空港を防衛する第80旅団、マナーラ検問所に対する「大規模な攻撃を早朝」開始したと発表した。
シリア人権監視団によると、この攻撃で、反体制武装勢力はマナーら検問所を制圧、一方、軍は第80旅団の基地周辺に対して空爆を行った。
アブー・ヒシャームを名乗る活動家はAFP(2月12日付)に対して、「これらの軍事拠点は、装備の入手源であるため重要だ」と述べ、攻撃の目的が制圧ではなく、武器・弾薬の略奪であることを示唆した。
しかしシリア人権監視団は、これらの空港の警備が堅固で、反体制武装勢力が戦果を得ることは困難との見方を示した。
一方、SANA(2月12日付)によると、サフィーラ市、アナダーン市、マンスーラ村、ナッカーリーン村などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、シャッアール地区、マサーキン・ハナーヌー地区、サーフール地区、フルワーニーヤ地区、ハーン・バカル地区、ジスル・ナイラブ地区などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
イドリブ県では、SANA(2月12日付)によると、アブー・ズフール市郊外などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またSANA(2月12日付)は、マアッラト・ヌウマーン市にあるアブー・アアラー・マアリー(アッバース朝時代の詩人・哲学者)の銅像の首がはねられた写真を公開し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーの犯行だと報じた。
**
ヒムス県では、SANA(2月12日付)によると、反体制武装勢力がヒムス市郊外の石油精製所の北側のゲートを砲撃し、職員1人が死亡、複数が負傷した
反体制勢力の動き
AFP(2月13日付)は、イドリブ県アティマ市で武装闘争を続けるアブー・マフムードを名乗る司令官の証言を掲載した。
アブー・マフムードはそのなかで「我々の美しい革命を盗人と腐敗した者どもが盗んだ…。自由シリア軍の司令官たちは私服を肥やす一方、真の革命家たちは現地で死んで行っている」と在外の活動家を痛烈に批判した。
アブー・マフムードはまた「彼らは前線に着ても、盗みや略奪しかしない。戦闘には参加しない…。彼らはトルコで密売するために持って行けるあらゆるものを盗む…ためにしか来ない」と付言した。
一方、サラフィー主義者については、「イスラーム主義者?こいつらが持ち込んだイスラームは私が知っているイスラームじゃない」と批判した。
**
自由シリア軍合同司令部中央広報局を名乗る組織が声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長による条件付きの政権との対話イニシアチブに関して、「死産だったが…拒否はしていない」「殺戮を止めるあらゆるイニシアチブを支持する」としつつ、武装勢力の統合、市民の自由シリア軍への参加などを呼びかけた。
諸外国の動き
国連のナバネセム・ピレイ人権高等弁務官は、シリアでのこれまでの死者数が70,000人近くに達していると述べた。
**
国連の潘基文事務総長は、安保理に対して、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長による条件付きでの対話イニシアチブを支援するよう呼びかけた。
**
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、11日のイドリブ県バーブ・ハワー検問所でのバス爆破事件に関して、「躊躇せず必要な措置を講じる」と述べた。
AFP, February 12, 2013、Akhbar al-Sharq, February 12, 2013、The Guardian, February 11, 2013、al-Hayat, February 13, 2013、Kull-na Shuraka’, February 12, 2013、al-Kurdiya News, February 12, 2013、Naharnet, February 12, 2013、Reuters, February 12, 2013、SANA, February 12, 2013、UPI, February 12, 2013、al-Watan, February 12, 2013などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.